結論から書きます。「売れっ子ホストの特徴とは」を人柄や才能の一覧にしても、売上が積み上がる理由は説明できません。説明できるのは行動のほうです。もう一度来店してもらえること、担当が続くこと、来店日が特定の日に集まること——この三つが重なったときだけ、売上は積み上がります。
そしてもう一つ、2026年のいま書くなら外せない事実があります。2025年に施行された改正風営法と、それに伴う警察庁の通達によって、「売れっ子であること」を店の外に掲げること自体が規制の対象になりました。 「指名数No.1」「年間売上〇億円突破」「総支配人」——これらは、警察庁の通達が違反類型の例として名指しした文言です。売れっ子の分かりやすい目印だったものが、そのまま「掲げてはいけないもの」の例示になった、ということです。
この記事は、金額の話をしません。売れっ子の月収や手取りの計算は売れっ子ホストの月収の記事と売上100万円のホストの給料の記事にまとめてあります。ここで扱うのは、行動と仕事の進め方です。
この記事で分かること
- 「売れっ子」という言葉が、2025年から広告に出しにくくなった経緯と、警察庁の通達が挙げた4類型
- 規制の対象になる広告物と、ならない表示の切り分け(解釈運用基準が書いていること)
- 売上が積み上がる仕組みを「再来店」「本指名の継続」「イベント」の三つに分けて読む方法
- 業界メディアが共通して挙げている、行動レベルの記述(記録・連絡・次回の理由・卓の組み立て・営業時間外)
- 「特徴」として並べてはいけない行為——法第18条の3、第22条の2、第22条第1項第1号の条文と、解釈運用基準の説明
- 解釈運用基準が書いた「推認」のルールが、複数の客を持つ立場に何を意味するか
- 「売れっ子の特徴」を語る文章を読むときの注意点(公的統計が存在しないこと)
- 働く側・客側それぞれが確認できる事実と、相談先
法令に関する記述は条文と警察庁・消費者庁の公表資料で確認しています。ただし一般的な情報であり、個別の事案の結論は事情によって変わります。仕事の進め方についての記述は業界向けメディアを複数読み比べた整理で、店舗・地域・個人によって大きく異なります。
前提:ホストクラブは「1号営業」で、全国におおむね1,000店
警察庁の悪質ホストクラブ対策検討会が令和6年12月にまとめた報告書は、ホストクラブについて「明確な定義があるわけではないが、ホストが『接待』をして客に遊興又は飲食をさせる営業形態」であり、風営法第2条第1項第1号の営業(いわゆる1号営業)に該当すると整理しています。1号営業には、ホストクラブのほかキャバクラやスナックも含まれます。
同じ報告書に、規模の数字があります。警察庁の調査では、令和6年4月時点でホストクラブに当たるとみられる1号営業の営業所は全国でおおむね1,000店舗、そのうち約30%が東京、約20%が大阪に所在し、大都市に集中しています。
つまり、この記事が扱う「売れっ子」は、全国千店規模の中の話です。店の規模も客層も価格帯も違うので、ある店で通用する進め方が別の店でそのまま通用するとは限りません。 この前提を最初に置いておきます。
「売れっ子」という言葉は、2025年から店の外に出しにくくなった
警察庁の通達が挙げた4つの類型
まず、いちばん新しい変化から書きます。
令和7年6月4日付けで、警察庁生活安全局保安課長から各都道府県警察に「接待飲食営業における広告及び宣伝の取扱いについて(通達)」(警察庁丁保発第104号)が発出されました。この通達は、接待飲食営業における広告物のうち、次の(1)から(4)までのいずれかの表示に該当するものは、風営法第16条(広告及び宣伝の規制)の違反に該当すると解される、としています。挙げられている例をそのまま引きます。
(1) 接客従業者の営業成績を直接的に示す文言の表示 例:「年間売上〇億円突破」、「○億円プレイヤー」、「指名数No.1」、「億超え」、「億男」
(2) 営業成績に応じた役職の名称等の営業成績が上位であることを推認させる文言の表示 例:「総支配人」、「幹部補佐」、「頂点」、「winner」、「覇者」、「神」、「レジェンド」、「新人王」
(3) (1)及び(2)以外の「ランキング制」自体の存在、接客従業者間での優位性を裏付ける事実等の接客従業者間の競争を強調する文言の表示 例:「売上バトル」、「カネ」、「SNS総フォロワー数○万人」
(4) 客に対して自身が好意の感情を抱く接客従業者を応援すること等を過度にあおる文言の表示 例:「○○を推せ」、「○○に溺れろ」
「売れっ子ホストの特徴とは」を検索したときに出てくる目印——ナンバー、売上額、役職、ランキング——が、ほぼそのまま並んでいます。 これは偶然ではありません。通達は、そうした表示が何を引き起こすかを明記しているからです。
通達が書いている「なぜ」
通達は、規制の理由をこう説明しています。接待飲食営業では「『ランキング制』等と称して接客従業者間で指名数、売上額等の営業成績を競わせ、営業成績上位者に表彰を行ったり、営業所内の役職を与えたりするなどして称揚する実態が見受けられる」。そのうえで、広告物に接客従業者の容姿とともに営業成績を直接的に示し、若しくは推認させ、又は競争を強調する文言を表示すると、次の二つが同時に起きる、としています。
- 客には、自身が好意の感情を抱く接客従業者の営業成績を向上させるために高額の遊興又は飲食をする意欲をそそらせる
- 接客従業者には、自身の営業成績を向上させるためには違法行為をもいとわない意識を醸成させる
注目したいのは、規制の理屈が「見た目が派手だから」ではないという点です。 通達が問題にしているのは、順位を可視化すると「順位を上げるための支払い」と「順位を上げるための違法行為」が同時に呼び込まれる、という因果です。売上の積み上げ方そのものに向けられた規制だ、と読むのが正確です。
対象になる広告物と、ならない表示
線引きも通達に書かれています。通達がいう「広告物」とは、常時又は一定の期間継続して公衆に表示されるものであって、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものです。
一方、令和7年5月30日付けの解釈運用基準(警察庁丙保発第7号ほか)は、第16条について次のようにも書いています。
なお、単に店名及び料金のみを表示する広告・宣伝、単に色彩が派手である広告・宣伝等は、清浄な風俗環境を害するおそれがあると認められる場合を除き、規制の対象とならない。また、建物の外観は、それが広告又は宣伝に当たるものと解されない限り、本条による規制の対象となるものではない。
つまり「派手だから駄目」ではありません。 同じ解釈運用基準は、憲法上の表現の自由・営業の自由に鑑み、視覚に訴える広告の規制は「公衆の目に触れやすいもの」に限る、という前提も置いています。禁じられたのは、営業成績や役職を殊更に強調することのほうです。
なお、実務上どこまでが対象になるかについては、専門家の解説の間でも整理が分かれています。通達が定義しているのは上記の「広告物」であり、それに当たらない媒体の扱いは通達本文からは直接読み取れません。この記事では、通達が明文で書いていることだけを書きます。
屋内の掲示にも別の条文がかかる
通達はもう一段、内側にも触れています。風営法施行規則第7条は、法第4条第2項第1号の技術上の基準として「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと」を定めており、営業所の内部に設置された広告物であっても、これに該当するものは設置できません。 さらに法第12条が構造・設備の維持義務を定めているため、営業開始後に店内へそうした掲示物を設置した場合は、維持義務違反に該当することになる、と通達は書いています。
対応の順序も明記されています。違反を認めた場合はまず行政指導を行い、従わない場合に法第25条に基づく指示処分等を検討する。そして「各都道府県警察の対応に斉一性を確保する観点から、当分の間」、行政処分を行おうとする場合はあらかじめ警察庁保安課と調整すること、とされています。
売上が積み上がる仕組みを、三つに分ける
ここからが本題です。売上は「人気があるから」増えるのではなく、次の三つが順番に積み上がったときに増えます。
積み上げ①:もう一度来る(再来店)
最初の段差は、初回から2回目です。ホストクラブの初回については初回の記事にまとめていますが、初回は料金体系も接客の形も通常営業と別物であり、そこから通常料金での2回目につながるかどうかが最初の関門になります。
この段差の重さは、公的資料の側からも見えます。検討会の報告書は、悪質ホストクラブについて「初回に安い料金を謳って女性客を来店させ、女性客の社会経験の乏しさや担当ホストに対する恋愛感情等に付け込んで高額な注文をさせるなどして、多額の借金を負わせる営業手法が確立している」と書いています。裏返せば、「初回から次につなげる」という設計そのものは業界に共通して存在し、その先の作り方が分かれるということです。
積み上げ②:担当が続く(本指名の継続)
二つ目は、担当関係が継続することです。本指名の仕組みは本指名の記事で扱っているのでここでは繰り返しませんが、売上を「誰の数字か」で一意に紐づける仕組みがある以上、継続する担当関係の本数が、そのまま積み上がりの土台になります。
この「継続性」に、検討会は明確に注目していました。報告書の議論のなかに、委員のこういう発言が記録されています。
悪質ホストクラブ等では、継続的に担当者がついてマインドコントロールしている事例が見受けられるので、関係性や継続性というのが一つのポイントになると思う。
単発の高額会計ではなく、継続する担当関係のほうに焦点が当たっている。 これは規制側の見方であると同時に、売上構造の見方としても正確です。一晩の数字は継続の結果として出てくるもので、逆ではありません。
積み上げ③:来店日が一点に集まる(イベント)
三つ目が、イベントです。ホスト求人サイトの解説によれば、バースデーイベント(通称バーイベ)は本人の誕生日を祝う特別営業日で、通常営業とは異なり主役ホストの売上を最大化することを目的とした営業になります。同じ解説は、単独開催・新人による合同開催・周年との合同開催といったパターンがあること、準備は2〜3か月前から始まり、来店予定のヒアリングと目標設定、オリジナルシャンパンの発注などが行われること、当日の後にお礼と次回来店の約束というアフターフォローが置かれることを挙げています。
ここで起きているのは「売上が増える」ことではなく、「来店日が一点に集まる」ことです。 分散していた来店が特定の日に寄せられ、そこに演出と限定商品が重なるため、一日の数字が跳ね上がる。年間の順位づけと結びつくのもこのためです。
なお、シャンパンタワーの費用構造はシャンパンタワーの記事にまとめてあります。そして後述するとおり、シャンパンタワーとシャンパンコールは、改正風営法の解釈運用基準のなかで名指しされています。 イベントの話は、そのまま法律の話につながります。
三つは足し算ではなく、順番
この三つは並列ではありません。再来店がなければ担当は続かず、担当が続いていなければイベントに人は集まりません。 イベント当日の数字だけを見て「売れっ子の特徴」を語ると、その手前の二つが見えなくなります。前掲の求人サイトの解説も、「バースデー直前だけ連絡するのはNG」で、日常的なやり取りが基盤になると書いています。
太客・細客といった客の呼び分けは太客・細客の記事で扱っていますが、呼び分けは結果の分類であって、積み上げの手順ではありません。
行動として観察できること
では、その積み上げは具体的にどんな行動として現れるのか。ここは公的な調査が存在しない領域なので、業界向けメディア(求人サイト・業界メディア)が共通して書いていることの整理として読んでください。個人差・店差が大きく、「これをやれば売れる」という保証ではありません。
覚えるのではなく、記録する
複数の解説が共通して挙げるのが、前回の会話内容や注文したドリンクといった細部を次回に持ち越すことです。ある業界メディアは、記憶に頼らずメモやアプリで顧客情報を管理し、継続性を保つことを勧めています。
「気が利く」と表現されがちなものの実体は、記録と参照の作業です。 才能ではなく手順として書かれている点が重要で、だからこそ人数が増えたときに崩れるかどうかが分かれます。
連絡が「イベント直前だけ」にならない
ホスト求人サイトが挙げる「売れるホストの特徴」の一つに、短い一言でもいいので継続的に連絡を取り続けることがあります。別の求人メディアも、失敗のパターンとして「連絡不足での関係断絶」を挙げています。前述のバースデーイベントの解説も、直前だけの連絡を明確に否定しています。
つまり、業界の側の説明でも、連絡は量ではなく継続の問題として扱われています。
次の来店の理由を、帰る前に作る
もう一つ共通するのが、接客のなかで次回来店の理由を用意しておくという記述です。求人メディアは「来店日程の事前確保」「次回来店への布石」を挙げています。
これは「押す」ことではなく「予定を置く」ことです。 ここは線が近い部分でもあるので、後述する法第18条の3第2号との関係を必ず確認してください。「次に来ないと関係が終わる」という趣旨を告げれば、そこは条文の側の話になります。
卓を一人で持たない
ヘルプの役割についてはヘルプの記事に詳しくまとめていますが、業界の解説は、担当が会話に集中できるようヘルプが卓の雑務を引き受ける体制を前提に書かれています。ホストクラブを運営する会社の求人向け解説も、ヘルプ業務を通じて信頼関係を作ることが将来の売上につながる、という書き方をしています。
指名本数が増えるほど、一人で卓を持ち続けることは物理的に不可能になります。 売上の積み上げが「個人技」で説明しきれないのはこのためで、店の側の人の配置と切り離せません。
営業時間の外に仕事がある
ホストの1日の組み立てはホストの1日の記事に譲りますが、業界の解説が挙げる営業時間外の作業には、出勤前の身支度と店内清掃・ミーティング、同伴の待ち合わせ、閉店後の片付けと当日来店客への連絡、SNSの発信などがあります。
法律の側から見ると、ここには営業時間の制限という枠がかかります。風営法第13条により、風俗営業者は深夜(午前0時から午前6時まで。条例で定める地域は午前1時まで延長される場合があります)に営業できません。稼働できる時間の総量が法律で決まっている以上、積み上げは「時間を延ばす」方向には伸びません。 記録・連絡・準備といった営業時間外の作業に比重が移るのは、この構造から説明できます。
「特徴」として並べてはいけないもの——2025年に引かれた線
ここが、この記事でいちばん慎重に書きたい部分です。売れっ子の特徴として語られてきた行動のうち、いくつかは2025年6月28日以降、法律上はっきり禁止されています。 特徴の一覧に混ぜてはいけません。
改正法(令和7年法律第45号)は令和7年5月28日に公布され、風俗営業の許可に係る不許可事由の追加に係る規定を除いて令和7年6月28日から施行されました。施行通達(令和7年6月6日付け警察庁丙保発第9号)は、今回施行された内容を「接待飲食営業に係る遵守事項等の追加、いわゆるスカウトバックに係る禁止規定の整備及び無許可営業等に対する罰則の強化」と説明しています。
法第18条の3——三つの遵守事項
新設された第18条の3(客の正常な判断を著しく阻害する行為の規制)は、1号営業を営む風俗営業者がしてはならない行為を三つ定めています。
第1号:料金に関する虚偽説明——第17条に規定する料金について、事実に相違する説明をし、又は客を誤認させるような説明をすること。
解釈運用基準は「客を誤認させるような説明」の例として、一定の額しか持ち合わせの現金がないなどと支払限度額を申告した客に対し「それでも大丈夫」等と申し向け、その額の範囲内でのみ飲食等を提供すると誤った認識を与える説明を挙げています。金額をはっきり偽らなくても該当しうる、ということです。
第2号:恋愛感情等につけ込んだ要求——客が接客従業者に恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ接客従業者も同様の感情を抱いていると誤信していることを知りながら、これに乗じ、イまたはロの行為で客を困惑させ、それによって遊興又は飲食をさせること。イは「遊興又は飲食をしなければ関係が破綻することになる旨を告げること」、ロは「接客従業者がその意に反して受ける降格、配置転換その他の業務上の不利益を回避するためには、客が遊興又は飲食をすることが必要不可欠である旨を告げること」です。
第3号:注文前の提供——客が注文等の意思表示をする前に遊興又は飲食の全部又は一部を提供することにより、客を困惑させ、それによって遊興をさせ、若しくはしたものとさせ、又は飲食をさせること。
解釈運用基準が書いた「推認」のルール
第2号については、解釈運用基準が踏み込んだ説明をしています。複数の客を持つ立場にとって、ここは最も重要な一節です。
まず、「同様の感情」は客の感情と同一である必要はなく、客の感情に相応する程度の感情を抱いていると客が誤信していれば該当します。そのうえで、認定の考え方が書かれています。
これに対し、接客従業者が客に対して真実の好意の感情を有しており、当該客は誤信していないと主張したとしても、当該接客従業者が当該客以外にも好意の感情を抱いていると思わせるような言動をしながら営業を行っていたこと等が認定された場合には、当該接客従業者は当該客に対して真実の好意の感情を有しておらず、客に誤信があり、それを知っていたと推認することができる。
「本当に好きだった」という主張は、他の客にも同じ言動をしていた事実が認定されれば通らない、と書かれているわけです。 指名客が増えるほど、この推認は成立しやすくなります。「売れっ子だから複数の客に同じ営業をしている」という状態は、条文の側から見ると認識要件を推認させる事情になり得る。規模が大きいことがリスクを下げるのではなく、むしろ上げる方向に働く構造です。
ロの「降格、配置転換その他の業務上の不利益」については、解釈運用基準は営業所内における序列の降格や遠隔地への左遷のほか、減給や報酬の減額等がこれに該当するとしています。さらに「必要不可欠である旨を告げること」は、必ずしも「必要不可欠」という言葉をそのまま告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同等程度の必要性及び切迫性が示されている場合も含まれる、とされています。
ここで、前半に見た広告規制と線がつながります。順位や役職を掲げる仕組みがあり、その順位が下がることを持ち出して注文を求めれば、ロの類型に近づく。 広告の通達が「過度な競争意識」を問題にしたのは、この経路を断つためだと読めます。
「推し活」も条文の射程に入る
解釈運用基準には、こういう一項もあります。
いわゆる「推し活」の一環として接客従業者に対し「好意の感情」を抱く客に対する接客従業者の行為についても、法第18条の3第2号の要件を満たせば同号の規定に違反することとなる。
恋愛の形をとっていなくても、応援や憧れの感情であれば射程に入る、ということです。「好意の感情」は好きな気持ち・親愛感を指し、憧れの感情等も含まれると明記されています。営業スタイルの名前(友営・色恋・本営)で線が引かれているわけではない、という点はここでもはっきりします。
シャンパンタワーとシャンパンコールは名指しされている
第3号については、解釈運用基準が具体例を挙げています。「提供すること」に当たるものとして、いわゆる「シャンパンコール」を行うこと、いわゆる「シャンパンタワー」を組み上げること、接客従業者が自ら飲酒するためにシャンパンを開栓することなどが挙げられ、飲食の提供としては客に飲酒させるためにシャンパンボトルを開栓すること、料理を提供することが挙げられています。
さらに、該当例として次の二つが示されています。
- 客が注文等をする前にシャンパンタワーを組み上げることにより、客にシャンパンタワーの実施に渋々応じさせ、それにより醸し出される歓楽的雰囲気を享受させること
- 客が注文等をする前にシャンパンコールを実施し終えることにより、客にシャンパンコールにより醸し出された歓楽的雰囲気を享受したものとさせること
イベント営業の代表的な演出が、そのまま条文の解釈例として書かれています。 ここで効くのは順序です。注文等の意思表示が先か、演出が先か。 「積み上げ③」で見たイベントの設計は、この順序を守れているかどうかで法的な評価が変わります。
罰則がつくのは法第22条の2
第18条の3は遵守事項で、直接の罰則はありません。罰則があるのは、同じく新設された第22条の2です。
第1号は、客に注文等をさせ、又は料金の支払等をさせる目的で、客を威迫して困惑させること。第2号は、客に対し威迫し、又は誘惑して、料金の支払等のために売春防止法その他の法令に違反する行為等により金銭その他の財産を得ることを要求することです。第53条第2号により、6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科とされています。
解釈運用基準は「威迫」を「人を畏怖させるまでには至らないが、言語・動作・態度をもって気勢を示し、相手に不安・困惑の念を生じさせる行為」と定義し、例として客に料金を支払わせるために声を荒げることを挙げています。「誘惑」については「甘言を弄することによって相手方を動かし、その判断の適正を誤らせること」と定義したうえで、将来の関係を持ち出しながら支払いのための稼働を求める言い方を例示しています。
警察庁が公表している検挙事例にも、SNSで「がんばって今日3万いこう」「応援してるだいすき」といったメッセージを送って誘惑したとして逮捕された例、「お前舐めすぎやろ」等のメッセージを送って威迫し困惑させたとして逮捕された例が挙げられています。前者は、応援の言葉と支払いの要求が同じメッセージに同居している例です。言葉づかいが柔らかいことは、判断とは無関係だと分かります。
客引きは以前から禁止されている
集客の話をするなら、もう一つ古い条文があります。法第22条第1項第1号は「当該営業に関し客引きをすること」を、第2号は客引きのため道路その他公共の場所で人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうことを禁じています。 こちらも第53条第1号により6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金です。
新規客の集め方は売上の起点ですが、街頭での客引きは選択肢に入りません。 これは改正前からの規定です。
効くのは、店への行政処分
第18条の3に違反した場合の効果は、行政処分です。法第25条により公安委員会は必要な指示をすることができ、法第26条により許可の取消し、または6月を超えない範囲での営業の全部・一部の停止を命ずることができます。
検討会の報告書は、この設計をこう書いています。「風営適正化法では、従業員等が遵守事項や禁止行為に該当する行為を行った場合には、営業者に対して指示処分や営業停止命令等の行政処分を行うことができることを念頭に置き、悪質な行為に関する規制の在り方を検討する必要がある」。
個人の判断で始めたやり方でも、結果は店に返る。 売上の積み上げ方を「個人の特徴」として語りきれない理由が、ここにもあります。
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「売れっ子の特徴」を語る文章の読み方
公的な統計は存在しない
念のため書いておくと、ホストという職業について「売れている人の行動特性」を調べた公的な統計は見当たりません。 業種としての集計も限られています(この点は売れっ子ホストの月収の記事で扱いました)。
したがって、「売れっ子ホストの特徴とは」という問いへの答えは、業界メディアの整理か、本人・関係者の語りのどちらかです。どちらも価値はありますが、統計的な裏づけとは種類が違います。
一人の成功例は、再現の手順ではない
もう一つ。目立つ数字を出した人の進め方が広く語られやすい一方で、同じ進め方で続かなかった人の記録は残りません。残った例だけを見て共通点を抜き出すと、実際には効いていない要素まで「特徴」に混ざります。
前掲の求人サイト自身も、「全てを完璧に一度に」ではなく自分に足りないものを一つずつ取り入れて継続することを勧めており、単一の必勝法としては書いていません。
逆から見た事実が、公的資料に残っている
そして、続かなかった側の記録は公的資料にあります。検討会の報告書は、自主的に売掛金の禁止を宣言した店についても「実際には呼称を『売掛金』から『立替金』等に変更したにすぎず、悪質ホストクラブの上記営業スキームに実質的な改善は見られていないとの指摘もある」と記録しています。
回収できていない売上は、積み上げではありません。 名目が変わっても同じです。売掛・立替が歩合の計算にどう効くかはホストの歩合の記事にまとめてあります。
働く側から見た「続けられる進め方」の条件
線は、働く側を守る向きにも引かれている
法第18条の2(接客従業者に対する拘束的行為の規制)は、接待飲食等営業を営む風俗営業者に対し、接客従業者に辞めた場合には直ちに残存する債務を完済することを条件として、その支払能力に照らし不相当に高額の債務を負担させること、そしてそうした従業者の旅券等を保管し、又は第三者に保管させることを禁じています。
売上を作る側にも、条文は向いています。 成績を上げるための負担が、こうした形で個人に付け替えられていないかは確認できる事実です。
客の情報の扱い
検討会の報告書には、個人情報に関する指摘も記録されています。ホストクラブがプライバシーポリシーを掲げていないとすれば、ホストが他のホストに女性客の稼働先を相談することは個人情報の目的外利用に当たり得ること、女性客の個人情報を店の外(スカウト等)に出すことは、データベース化されている場合には個人データの第三者提供に当たり得ることが挙げられています。
顧客の記録を残すことは仕事の基礎ですが、残した情報をどこまで共有するかは別の問題です。
契約の形
報告書には、ホストがホストクラブに雇用されているのではなく業務委託契約を締結している場合が多いという指摘、個人事業主として働くホストにも遵法意識向上のための講習を受講させられないかという意見、そして雇用関係やフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)との関係の整理が望ましいという意見が記録されています。
契約の形は、税と社会保険の扱いを変えます。 その計算は売上100万円のホストの給料の記事にまとめてあるので、ここでは触れません。
客側から見た「売れっ子だから安心」は成り立つか
最後に、通う側の視点です。順位や肩書きは、会計の内容を保証しません。 確認できるのは次のような事実のほうです。
- 料金表が営業所内で客に見やすいように表示されているか(法第17条は所定の料金の表示を義務づけています。料金システムの記事も参照)
- 会計の内訳が示され、口頭の説明と一致しているか(第18条の3第1号)
- 自分が注文の意思表示をする前に、開栓・タワー・コールが始まっていないか(第18条の3第3号)
- 「今日入れてくれないと関係が終わる」「入れてくれないと自分の順位が下がる・降格する」という趣旨の話が出ていないか(同第2号のイ・ロ)
- 支払を先送りする話が出たとき、名目が売掛でも立替でも、誰の誰に対する債務なのかが説明されているか
消費者庁は令和5年11月30日付けの周知文で、ホストクラブなどにおける飲食などの契約も消費者契約法上の消費者契約に当たり得るとし、いわゆるデート商法の規定(第4条第3項第6号)の要件に該当する不当な勧誘によって締結した契約は取り消すことができる可能性があると説明しています。仮にホストが恋人間の個人的なやり取り(売掛金の立替えなど)だと主張している場合でも、事業者に該当し要件に当たる不当な勧誘をしていれば、その契約は取り消すことができるとも明記されています。ただし民事ルールであり、当事者が取消しを主張したうえで解決する必要があり、最終的には司法の場で判断されます。
相談先は次のとおりです(いずれも一般的な案内で、適切な窓口は事情によって変わります)。
- 消費生活センター/消費者ホットライン 188——契約の取消しが可能かどうかなど消費者トラブルの相談
- 日本司法支援センター(法テラス)0570-078374——売掛金に係る契約等の取消しの手続など法的トラブルの相談
- 都道府県警察/警察相談専用電話 #9110——売春等を強要されている、追われているなどの犯罪被害の相談
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター #8891
よくある質問
Q1. 結局、売れっ子ホストの特徴とは何ですか。 公的な調査が存在しないため、「これが特徴だ」と断定できる根拠はありません。業界向けメディアが共通して挙げているのは、相手に合わせた接し方、聞き役に回ること、記録に基づいて前回の話を持ち越すこと、短くても連絡を継続すること、次の来店の理由を用意しておくこと、といった行動レベルの項目です。人柄や才能ではなく、再来店・担当の継続・イベントという三つの積み上げを支える手順として読むと筋が通ります。
Q2. 「指名数No.1」と看板に書けなくなったというのは本当ですか。 令和7年6月4日付けの警察庁通達は、「指名数No.1」「年間売上〇億円突破」「億男」などを、接客従業者の営業成績を直接的に示す文言の例として挙げ、こうした表示に該当する広告又は宣伝は風営法第16条の規制違反に該当すると解される、としています。対象は通達が定義する「広告物」で、常時又は一定の期間継続して公衆に表示されるものを指します。違反を認めた場合はまず行政指導が行われ、従わない場合に法第25条の指示処分等が検討されます。
Q3. 「総支配人」のような役職名も駄目なのですか。 通達は「総支配人」「幹部補佐」を、営業成績が上位であることを推認させる文言の例として挙げています。ここで規制されているのは店内の役職制度そのものではなく、それを広告物に表示することです。解釈運用基準も、営業成績や役職を殊更に強調する表示を対象としつつ、単に店名及び料金のみを表示する広告や、単に色彩が派手であるだけの広告は(清浄な風俗環境を害するおそれが認められる場合を除き)対象にならないとしています。
Q4. バースデーイベントは違法になったのですか。 イベントそのものを禁じる規定はありません。ただし解釈運用基準は、シャンパンコールを行うことやシャンパンタワーを組み上げることを、法第18条の3第3号でいう「遊興の提供」に当たるものとして挙げ、客が注文等の意思表示をする前にこれらを行って渋々応じさせた場合を該当例として示しています。順序が問題になる、と理解するのが正確です。
Q5. 「複数の客に同じ営業をしている」ことは、法律上不利になりますか。 解釈運用基準は、接客従業者が「真実の好意の感情を有していて客は誤信していない」と主張しても、当該客以外にも好意の感情を抱いていると思わせるような言動をしながら営業していたことが認定された場合には、客に誤信があり、それを知っていたと推認することができる、と書いています。第18条の3第2号はこのほかにイまたはロの告知と困惑・飲食等まで必要なので、これだけで違反が成立するわけではありませんが、認識要件の認定においては不利に働く方向の記述です。
Q6. 恋愛感情を使わない営業なら問題ないのですか。 第18条の3第2号でいう「恋愛感情その他の好意の感情」は、解釈運用基準によれば好きな気持ち・親愛感を指し、憧れの感情等も含まれます。さらに、いわゆる「推し活」の一環として好意の感情を抱く客に対する行為も、要件を満たせば同号違反になると明記されています。営業スタイルの呼び名で線が引かれているわけではありません。
Q7. 順位を上げるために客に協力を頼むのは、どこから駄目になりますか。 条文の言葉で言うと、客が「相手も自分と同じ気持ちだ」と誤信していることを知りながら、それに乗じて「注文しなければ関係が破綻する」または「注文がなければ自分が降格・配置転換その他の業務上の不利益を受ける」と告げ、客を困惑させて注文させた場合が第18条の3第2号に当たります。解釈運用基準は「必要不可欠である旨を告げること」について、その言葉をそのまま使う必要はなく、勧誘行為全体として同等程度の必要性・切迫性が示されていれば含まれるとしています。また「降格」には営業所内の序列の降格や減給・報酬の減額も含まれるとされています。
Q8. 客引きで新規客を集めるのは認められていますか。 認められていません。法第22条第1項第1号は当該営業に関し客引きをすることを、第2号は客引きのため道路その他公共の場所で人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうことを禁じており、第53条第1号により6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金(併科あり)が定められています。これは今回の改正以前からの規定です。
Q9. 売上が大きい人は、そのぶん手取りも大きいのですか。 売上と手取りは別の数字です。歩合率の前に「何が売上として立つか」の定義があり、回収できていない売掛・立替の扱い、差し引かれるもの、給与か報酬かによる税・社会保険の違いが順番に効きます。詳しくはホストの歩合の記事と売上100万円のホストの給料の記事にまとめてあります。
まとめ
- 「売れっ子ホストの特徴とは」を人柄や才能で説明しても売上の説明にはならない。説明できるのは再来店・本指名の継続・イベントという三つの積み上げで、この順序は入れ替えられない
- 警察庁の検討会報告書によれば、ホストクラブに当たるとみられる1号営業の営業所は令和6年4月時点で全国おおむね1,000店舗、東京約30%・大阪約20%。店差・地域差が大きい
- 業界メディアが共通して挙げる行動は、記録に基づく接客、継続する連絡、次回来店の理由づくり、ヘルプを含む卓の組み立て、営業時間外の準備。才能ではなく手順として書かれている
- ただし公的な統計はなく、残った成功例からの共通点抽出には限界がある
- 2025年6月28日施行の改正風営法で、第18条の3(料金の虚偽説明/誤信に乗じた告知による飲食等/注文前の提供)が遵守事項として新設され、第22条の2(威迫、売春等の要求)が罰則付きで禁止された。第53条第2号により6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金
- 解釈運用基準は、シャンパンコール・シャンパンタワーを注文前に行うことを第3号の該当例として挙げ、他の客にも好意を思わせる言動をしながら営業していた場合は誤信と認識を推認できると書き、「推し活」も第2号の射程に入ると明記している
- 令和7年6月4日付けの警察庁通達により、「指名数No.1」「年間売上〇億円突破」「総支配人」「売上バトル」「○○を推せ」といった表示は、広告物に掲げれば法第16条の違反に該当すると解される。売れっ子であることの目印そのものが規制対象になった
- 対象は「常時又は一定の期間継続して公衆に表示される」広告物。店内の掲示にも施行規則第7条・法第12条の維持義務がかかる。対応は行政指導が先で、従わない場合に法第25条の指示処分等
- 遵守事項違反の効果は店に対する行政処分(法第25条・第26条)。個人の裁量として完結しない
- 客側が確認できるのは、順位や肩書きではなく、料金表示・会計の内訳・注文の意思表示より先に提供が始まっていないか・支払を先送りする話の中身
法令に関する記述は一般的な情報であり、個別の事案の結論は事情によって異なります。仕事の進め方に関する記述は業界向けメディアの整理であり、店舗・地域・個人によって大きく異なります。
順位や肩書きが人の価値の物差しになりやすいのは、そこに売上の設計が組み込まれているからでした。逆に、いま少し誰かと話したいだけなら、指名も順位も関係の名づけも介在しない手段があります。LOVETOK NOWは「今、話せます」と待機している人だけが一覧に並び、マッチングを待たずにその場でチャットを始められるサービスです(20歳以上・年齢確認あり)。地域ごとの話は出会いガイドにまとめています。
参考情報
- 悪質ホストクラブ対策について|警察庁
- 悪質ホストクラブ対策に関する報告書(令和6年12月・悪質ホストクラブ対策検討会)|警察庁
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律(概要)|警察庁
- 接待飲食営業における広告及び宣伝の取扱いについて(通達)令和7年6月4日付け警察庁丁保発第104号|警察庁
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)令和7年5月30日付け警察庁丙保発第7号ほか|警察庁
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律の施行等について(通達)令和7年6月6日付け警察庁丙保発第9号|警察庁
- 悪質ホストクラブ等の検挙事例|警察庁
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律|e-Gov法令検索
- ホストクラブなどにおける不当な勧誘と消費者契約法の適用について(周知)|消費者庁
- 令和7(2025)年改正風営法の概要 遵守事項・禁止行為・広告宣伝規制|TMI総合法律事務所
- 売れるホストの特徴5選|指名が増える人が必ずやっている共通点とは|ホスリク
- ホストクラブのバースデーイベント完全解説|ホスリク
- 【最新】ホストの営業方法7種類!新人が売れるための行動と失敗しないコツ
- ホストの仕事内容|大阪男塾(求人向け解説ページ)

