結論から書きます。街で「スカウトです」と声をかけられたとき、判断の材料になるのは、相手が良い人か悪い人かではありません。①その声かけ自体が条例で禁じられている行為に当たるか、②話が進んだとき相手が職業安定法の許可を持っているか、③契約の前に何が書面で示されるか——この三つです。
理由は単純で、スカウトをめぐる法令は「人」ではなく「行為」と「手続」に向けて書かれているからです。誰が信用できるかを見抜く条文は存在しませんが、どの行為が禁じられ、どの書類が出てくるはずかを定めた条文は存在します。前者は当てになりませんが、後者はその場で確かめられます。
この記事は、声をかけられてから契約を結ぶまでの間だけを扱います。会計時の高額請求は高額請求の記事に、好意の感情につけ込む勧誘の類型はデート商法の記事に、店側の名簿と身分証確認は従業者名簿の記事にあります。ここでは制度の全体像を繰り返さず、勧誘という行為そのものにかかる条文だけを追います。
なお、以下は法令の一般的な情報です。実際にどう扱われるかは個別の事情によって変わり、同じ行為でも都道府県や状況によって結論が動きます。特定の職業や特定の人を「危険だ」と決めつける趣旨の記事ではありません。
この記事で分かること
- 風営法第22条が禁じているのは「客引き」であって、働き手への勧誘ではないこと
- スカウト行為を正面から禁じているのは国の法律ではなく都道府県の条例であること
- 東京都条例第7条第1項第5号から第7号までが、何をどこまで禁じているか
- 「やらせた側」と「待っていた行為」に別の罰則が用意されている理由
- 条番号が都道府県で違うこと(千葉県は第7条の2)
- 声をかけた側ではなく店側を名宛人にした条文(風営法第28条第13項)
- スカウトが「職業紹介」に当たるとき、許可・手数料・明示にどんな制限がかかるか
- 職業安定法でいちばん重い罰則が置かれている第63条第2号
- 街頭とSNSで、効いてくる枠が入れ替わる理由
- 撮影・出演の話が出てきたときに効いてくる期間のルール
- 契約の前に確認できる六つのこと
- 断ったあともつきまとわれたときの相談先
まず、「客引き」と「スカウト」は別の話
風営法第22条が禁じているのは客引き
夜の街の勧誘というと風営法が思い浮かびますが、条文を開くとずれが見つかります。第22条第1項はこう始まります。
風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。 一 当該営業に関し客引きをすること。 二 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
第3号以下は、営業所で18歳未満に接待をさせること、午後10時から午前6時までに18歳未満を客に接する業務に従事させること、18歳未満を客として立ち入らせること、20歳未満に酒類・たばこを提供すること。第1号と第2号の違反には第53条第1号で6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり)が定められています。
二つのずれ
ここには二つのずれがあります。
ひとつは名宛人です。第22条第1項の主語は「風俗営業を営む者」であって、街で声をかける第三者一般ではありません。風営法の名宛人が営業者であることは風営法の基礎の記事で扱ったとおりです。
もうひとつは対象となる行為です。第1号・第2号が禁じているのは「客引き」、つまり客を店に誘う行為です。働き手になってほしいと誘う行為は、第22条第1項のどの号にも書かれていません。
つまり、街での「働きませんか」という声かけは、風営法第22条の射程の外です。この空白を埋めているのが、次に見る都道府県の条例です。
スカウト行為を正面から禁じているのは都道府県の条例
東京都の場合——第7条第1項第5号
東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(昭和37年10月11日東京都条例第103号。一般に迷惑防止条例と呼ばれます)は、第7条第1項でこう定めています。
何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
第1号から第4号までが客引き・誘引・執ような客引きです。第5号から第7号までが、働き手への勧誘にあたります。
五 次のいずれかに該当する役務に従事するように勧誘すること。 イ 人の性的好奇心に応じて人に接する役務(性的好奇心をそそるために人の通常衣服で隠されている下着又は身体に接触し、又は接触させる卑わいな役務を含む。以下同じ。) ロ 専ら異性に対する接待をして酒類を伴う飲食をさせる役務(イに該当するものを除く。)
第6号は撮影の被写体になるよう勧誘する行為、第7号は「人の身体又は衣服をとらえ、所持品を取りあげ、進路に立ちふさがり、身辺につきまとう等執ように役務に従事するように勧誘すること」です。
条文の作りで押さえておくべき点が三つあります。主語が「何人も」であること——第22条と違い、営業者かどうかを問いません。場所が「公共の場所」に限られること。そして相手が「不特定の者」であること——通りがかりの人に声をかける形が想定されています。
第2項——「やらせた側」に重い罰則
何人も、対償を供与し、又はその供与の約束をして、他人に前項の規定に違反する行為を行わせてはならない。
罰則を並べると、条例の重みづけが見えます。第7条第1項の違反は第8条第4項第5号で50万円以下の罰金または拘留もしくは科料。これに対し第2項の違反は第8条第3項第1号で100万円以下の罰金です。声をかけた人よりも、報酬を約束して声をかけさせた側のほうが重いという設計になっています。
第3項——「待っている」だけで規制される区域がある
第3項は、公安委員会が指定した区域内の公共の場所で、客引き等の相手方となるべき者を「公衆の目に触れるような方法で待つ」ことを禁じています。第4項で、警察官はこの第3項に違反していると認められる者に中止を命じることができ、命令違反は第8条第6項で20万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。
東京都の指定は、東京都公安委員会告示第181号(平成24年6月1日)によるもので、警視庁のページには千代田・中央・港・新宿など23区の地区に加え、八王子・立川・武蔵野・町田・小金井・国分寺の各市の地区が列挙されています。
ここは誤解されやすい部分です。第4項の中止命令は「待つ行為」(第3項)に向けられたものであって、勧誘そのものをその場で止める命令ではありません。
罰則の対応を並べる
| 条項 | 内容 | 罰則(第8条) |
|---|---|---|
| 第7条第1項 | 客引き・誘引・勧誘・執ような勧誘 | 第4項第5号:50万円以下の罰金または拘留・科料 |
| 第7条第2項 | 対償を供与して他人にやらせる | 第3項第1号:100万円以下の罰金 |
| 第7条第4項の命令違反 | 警察官の中止命令に従わない | 第6項:20万円以下の罰金または拘留・科料 |
条番号は都道府県で違う
ここが実務でいちばん間違えられる点です。「条例第7条第1項第5号」は東京都の番号であって、全国共通ではありません。
千葉県警察の説明によれば、千葉県の迷惑防止条例ではスカウト行為は第7条の2第1項第1号・第2号に置かれ、平成26年4月1日から施行されています。罰則は50万円以下の罰金または拘留もしくは科料、他人に客引き行為等をさせる行為は100万円以下の罰金です。
条番号だけでなく、どの役務への勧誘が対象か、規制区域があるかも条例ごとに違います。自分の住む都道府県の例規集で確認するのが確実です。
条例自身が書いている歯止め
第7条第5項には、こう書かれています。
本条の規定の適用に当たつては、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。
条例自身が、この条文を人の選別に使うなと書いているわけです。この記事も同じ立場を取ります。ここで扱っているのは行為であって、人ではありません。
声をかけた側ではなく、払った側を名宛人にした条文
2025年施行の改正風営法で、別の角度から一本入りました。第28条第13項です。
第二条第六項第一号又は第二号の営業を営む者は、営業所で異性の客に接触する役務を提供する業務に従事しようとする者の紹介を受けた場合において、当該紹介をした者又は第三者に対し、当該紹介の対価として金銭その他の財産上の利益を提供し、又は第三者をして提供させてはならない。
無店舗型については第31条の3第1項が準用し、罰則は第53条第7号で6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり)です。
構造を見てください。名宛人は営業者であって、紹介をした人ではありません。 禁じられているのは「紹介を受けること」ではなく「対価を提供すること」です。いわゆるスカウトバックにあたる部分で、改正全体の位置づけは2025年改正の記事にまとめています。
話が進むと、そこは「職業紹介」かもしれない
定義から始める
職業安定法第4条第1項は、職業紹介をこう定義します。
求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすること
同条第5項の「労働者の募集」は、労働者を雇用しようとする者が自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対しその被用者となることを勧誘することです。店から報酬を受けて人を店につなぐ形は、この二つのどちらかに入り得ます。 そして、どちらに入るかで適用される条文が変わります。
有料の職業紹介は許可制
第30条第1項——「有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。」無許可で行った場合は第64条第1号で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
許可を受けた事業者には、次の義務がかかります。
- 第32条の4第2項:許可証を事業所ごとに備え付け、関係者から請求があったときは提示しなければならない
- 第32条の13:取扱職種の範囲等、手数料に関する事項、苦情の処理に関する事項などを求人者・求職者に明示しなければならない
- 第32条の14:職業紹介責任者を選任しなければならない(違反は第66条第5号で30万円以下の罰金)
求職者から手数料は取れない
第32条の3第2項は、はっきり書いています。
有料職業紹介事業者は、前項の規定にかかわらず、求職者からは手数料を徴収してはならない。
ただし書で、手数料を求職者から徴収することがその求職者の利益のために必要と認められるときとして厚生労働省令で定めるときの例外がありますが、原則は手数料は求人者側から取るものです。違反は第65条第2号で6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。
「紹介料はあなたの給料から引く」という説明が出てきたら、少なくともその説明が原則と逆を向いていることは分かります。
いちばん重い条文——第63条第2号
職業安定法の罰則で最も重いのは、次の条文です。
第六十三条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、一年以上十年以下の拘禁刑又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。 一 暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき。 二 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき。
下限が1年、罰金の下限が20万円という書き方は、この法律の中で例外的です。第2号が「募集情報等提供」まで含んでいる点も見落とされがちで、直接引き合わせなくても対象になり得る作りになっています。第67条には両罰規定があり、行為者を罰するほか法人にも罰金刑が科されます。
もっとも、どの業務が「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」に当たるかは個別に判断される事柄で、この記事で線を引くことはできません。
「紹介じゃなくて募集の代行です」と言われた場合
募集の枠に入っても、報酬の流れは自由ではありません。
- 第36条第1項:被用者以外の者に報酬を与えて労働者の募集に従事させるには厚生労働大臣の許可が必要(無許可は第64条第7号で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)
- 第39条:募集を行う者・募集受託者は、募集に応じた労働者から、いかなる名義でも報酬を受けてはならない
- 第40条:募集を行う者は、賃金・給料等を支払う場合や第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、募集に従事する者に報酬を与えてはならない
第39条・第40条の違反は第65条第6号で6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。呼び名を「紹介」から「募集」に変えても、抜けられる枠にはなっていないことが分かります。
なお第65条第9号は、虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して職業紹介・募集などを行った場合を、同じ法定刑で罰しています。
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街の外——SNSやDMで届いた場合
条例と法律で、場所の扱いがまったく違います。ここが実際にはいちばん効いてきます。
東京都条例第7条第1項は「公共の場所において、不特定の者に対し」と書いています。二つとも要件です。したがって、アカウントを特定して個別に送られたメッセージは、この条文の想定する形から外れやすい。第3項の「待つ行為」も、指定された区域内の公共の場所という前提で作られています。
一方、職業安定法にはこの限定がありません。第30条第1項の許可も、第32条の3第2項の手数料の制限も、行為の場所を問いません。第63条第2号にいたっては「職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給」と並べており、第4条第6項の定義によれば募集情報等提供には、募集を行う者の依頼を受けて募集に関する情報を提供する行為が含まれます。画面越しでも枠の中に入るという作りです。
まとめると、こうなります。
| 場面 | 主に効く枠 | 名宛人 |
|---|---|---|
| 街頭で不特定の人に声をかける | 都道府県の迷惑防止条例 | 声をかけた人(東京都は「何人も」) |
| 報酬を約束して他人にやらせる | 都道府県の迷惑防止条例 | やらせた人(東京都条例第7条第2項) |
| 紹介の対価を店が払う | 風営法第28条第13項 | 営業者 |
| 紹介・募集の業として行う | 職業安定法 | 紹介事業者・募集を行う者・募集受託者 |
| 契約を結ぶ | 労働基準法・職業安定法第5条の3 | 使用者・求人者 |
「条例に当たらない=問題がない」ではありません。 街頭でないというだけで、許可・手数料・明示のルールはそのまま残ります。
撮影や出演の話が出てきたとき
「モデル」「撮影」という言葉が出てくる場面では、別の法律が重なります。性行為映像制作物への出演に係る被害の防止と出演者の救済のための法律(令和4年法律第78号)です。長い題名の法律ですが、風営法第22条の2第1項第2号ニもこの法律を名指ししています。
期間と書面に関する規定が中心です。
- 第4条第2項:出演契約は書面または電磁的記録でしなければ効力を生じない
- 第5条第1項:契約前に、出演契約書等の案を示した説明と、書面等の交付による説明が必要
- 第7条第1項:撮影は、出演契約書等または説明書面等の交付を受けた日のいずれか遅い日から1か月を経過した後でなければ行えない
- 第9条:公表は、すべての撮影が終了した日から4か月を経過した後でなければ行えない
- 第10条第2項第1号:出演者の債務不履行について損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項は無効
- 第13条第1項:出演者は任意に、書面等で契約の申込みの撤回または解除ができる(原則として公表が行われた日から1年を経過するまで)
- 第20条:任意解除等を妨げるため不実を告げたり威迫して困惑させた場合、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科
第7条第2項は、契約で定められた撮影であっても出演者はその全部または一部を拒絶でき、それによって損害が生じても賠償責任を負わないと明記しています。「もう契約したから」が理由にならない場面があるということです。第17条は国と都道府県に相談体制の整備を求めています。
契約の前に確認できる六つのこと
ここまでの条文を、確認できる形に並べ替えます。
| # | 確認すること | 根拠になる条文 |
|---|---|---|
| 1 | 業務内容・賃金・労働時間が書面等で示されるか | 職業安定法第5条の3、労働基準法第15条第1項 |
| 2 | 違約金・罰金・前借りの話が出ていないか | 労働基準法第16条・第17条 |
| 3 | 身分証を預かると言われていないか | 風営法第18条の2第1項第2号 |
| 4 | 紹介料を誰が誰に払うのか | 職業安定法第32条の3第2項、風営法第28条第13項 |
| 5 | 紹介事業の許可があるか | 職業安定法第30条第1項、第32条の4第2項 |
| 6 | 個人情報を何に使うと言われたか | 職業安定法第5条の5 |
補足を四つ足します。
1について。 労働基準法第15条第2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できると定めています。第3項は、就業のために住居を変更した労働者が契約解除の日から14日以内に帰郷する場合、使用者が必要な旅費を負担すると定めています。第15条第1項違反は第120条第1号で30万円以下の罰金です。
2について。 第16条(賠償予定の禁止)と第17条(前借金相殺の禁止)の違反は、第119条第1号で6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。また第6条は「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と定め、違反は第118条第1項で1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
3について。 風営法第18条の2第1項は、接待飲食等営業を営む風俗営業者に対し、支払能力に照らし不相当に高額の債務を負担させること(第1号)と、そうした債務を負担させた接客従業者の旅券や運転免許証などを保管し、または第三者に保管させること(第2号)を禁じています。第28条第11項が店舗型性風俗特殊営業に、第31条の3第1項が無店舗型に準用しています。この条文には直接の罰則がなく、第25条の指示、第26条の営業停止・許可取消しという行政処分で担保される作りです。罰則がないことは軽いという意味ではなく、店の許可そのものに響く話です。
5について。 職業紹介事業と労働者派遣事業の許可・届出事業所は、厚生労働省職業安定局が運営する「人材サービス総合サイト」で検索できます。事業所名から許可の有無を確認できるので、名刺やSNSのアカウント名しか手元にない段階でも、事業者名が分かれば照合できます。
断ったあとに困ったときの動き
その場でできることは多くありません。だからこそ順番が要ります。
- その場を離れる。 会話を続けるほど、「公共の場所において、不特定の者に対し」という条例の要件から離れた個別のやり取りになっていきます
- 記録を残す。 時刻、場所(ビル名と交差点名)、相手の外見、言われた内容、渡された名刺やアカウント名。当日中に書く
- つきまとわれたら。 東京都条例では第7条第1項第7号が執ような勧誘を、第4号が執ような客引きを対象にしています。身の危険を感じるなら110番、急がない相談は警察相談専用電話#9110(受付時間は都道府県警察により異なります)
- 契約や金銭が絡んだら。 消費者ホットライン188。会計をめぐるトラブルの手順は高額請求の記事にまとめています
警察官の中止命令(東京都条例第7条第4項)は、指定区域で「待つ行為」をしている者に向けられたものです。声をかけられた人が命令を求める仕組みではない点は、期待とずれやすいので押さえておいてください。
数字で見ると
警視庁が「客引き・スカウトの検挙状況と検挙事例」として公表している検挙人員は、平成27年の712人から令和6年の333人へと推移しています(令和2年399人、令和3年415人、令和4年470人、令和5年390人)。
同じページには、「キャバクラで働きませんか。稼げますよ。」などとつきまとって勧誘する行為が問題になっていること、性風俗営業やアダルトビデオ出演への勧誘も行われていること、モデル等の勧誘とうそを言って声を掛けてくる場合もあることが書かれています。適用される法令として風営法違反と東京都迷惑防止条例違反が挙げられていますが、条番号までは示されていません。
数字が減っていることを「安全になった」とも「取締りが緩んだ」とも、この数字だけからは言えません。検挙人員は、起きた件数ではなく警察が扱った件数です。
よくある質問
Q1. 声をかけられただけで、相手は条例違反になりますか?
なりません。東京都条例第7条第1項第5号が対象にしているのは、公共の場所で不特定の者に対し、同号イ・ロに当たる役務に従事するよう勧誘する行為です。場所、相手、勧誘の中身という要件がそろって初めて問題になります。どんな職種への声かけでも違反になるわけではありません。
Q2. スカウトという仕事そのものが違法なのですか?
いいえ。人材を紹介する事業は、職業安定法第30条第1項の許可を受けて適法に行えます。条例が禁じているのは、公共の場所で不特定の人に特定の役務への勧誘をすることであって、職業紹介という業態そのものではありません。この記事は特定の職業を否定する趣旨ではありません。
Q3. 名刺やSNSのIDを渡されました。連絡してもいいですか?
判断は本人次第です。ただ、連絡する前に事業者名で「人材サービス総合サイト」を引いておくと、許可を受けた事業所かどうかが分かります。会って話す段階では、職業安定法第32条の4第2項が関係者から請求があったときは許可証を提示しなければならないと定めていることも使えます。
Q4. 「紹介ではなく募集の代行だ」と言われました。
呼び名が変わっても制限は残ります。被用者以外の者に報酬を与えて募集に従事させるには第36条第1項の許可が要り、募集受託者は第39条により応募した人から報酬を受けられません。第40条は、募集を行う者が募集に従事する者に報酬を与えることも、賃金等の支払や認可に係る報酬の場合を除いて禁じています。
Q5. 紹介料を自分の給料から引くと言われました。
職業安定法第32条の3第2項は、有料職業紹介事業者が求職者から手数料を徴収することを原則として禁じています(例外は厚生労働省令で定める場合に限られます)。違反は第65条第2号の罰則の対象です。また、労働基準法第17条は前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺することを禁じています。個別の当てはめは事情により変わるため、金額や名目が出てきた時点で相談窓口に事実関係を伝えるのが確実です。
Q6. 20歳未満です。年齢の線はどうなりますか?
風営法第22条第1項は、営業所で18歳未満に接待をさせること(第3号)、午後10時から午前6時までに18歳未満を客に接する業務に従事させること(第4号)、20歳未満に酒類・たばこを提供すること(第6号)を禁じています。第51条第1項第4号の罰則があり、同条第2項は年齢を知らないことを理由に処罰を免れることができない(過失がないときを除く)と定めています。年齢の線の全体像は年齢確認の記事にあります。
Q7. 断ったのに連絡が続きます。
東京都条例第7条第1項第7号は「身辺につきまとう等執ように役務に従事するように勧誘すること」を禁じています。連絡の記録(日時・内容・アカウント名)を残し、身の危険を感じる場合は110番、そうでなければ#9110へ。記録があるかどうかで、その後にできることの幅が変わります。
Q8. 撮影の仕事だと言われて話が進んでいます。
出演契約に関する法律には期間のルールがあります。撮影は書面等の交付から1か月を経過した後(第7条第1項)、公表はすべての撮影終了から4か月を経過した後(第9条)でなければ行えません。この期間が守られずに撮影や公表が行われた場合、第12条第1項により催告なしで解除できることがあります。 契約で定められた撮影であっても拒絶でき、それによる損害の賠償責任を負わないことも第7条第2項に明記されています。
Q9. 東京以外に住んでいます。同じ条文で調べればいいですか?
いいえ。スカウト行為の規制は都道府県の条例に置かれているため、条番号も対象範囲も違います。 千葉県ではスカウト行為が第7条の2に置かれています。お住まいの都道府県の例規集で迷惑防止条例を開き、客引き・勧誘に関する条を確認してください。
Q10. 街ではなくSNSのDMで届きました。条例は関係ないのですか?
東京都条例第7条第1項は「公共の場所において、不特定の者に対し」という要件を置いているため、個別に送られたメッセージはこの条文の想定する形から外れやすいのは確かです。ただし職業安定法にはその限定がなく、許可(第30条第1項)も手数料の制限(第32条の3第2項)も場所を問いません。第63条第2号は募集情報等提供も対象に含めています。確認すべきことは、街で声をかけられた場合と変わりません。
この記事の要点
- 風営法第22条は「客引き」の条文で、働き手への勧誘は書かれていない。 名宛人も「風俗営業を営む者」であって第三者一般ではない
- スカウト行為を正面から禁じているのは都道府県の条例。東京都は第7条第1項第5号(イ・ロ)、第6号(撮影の被写体への勧誘)、第7号(執ような勧誘)
- 罰則は東京都条例第8条第4項第5号で50万円以下の罰金または拘留・科料。対償を供与して他人にやらせた場合は第8条第3項第1号で100万円以下の罰金と、より重い
- 指定区域で「相手方となるべき者を待つ」行為には第7条第3項があり、警察官の中止命令(第4項)はこの行為に向けられている
- 条番号は都道府県で違う。 千葉県はスカウト行為を第7条の2に置いている
- 風営法第28条第13項は、紹介の対価を払う側(営業者)を名宛人にした条文。罰則は第53条第7号
- 話が進めば職業安定法の問題になる。有料職業紹介は第30条第1項の許可制、求職者から手数料を取ることは第32条の3第2項で原則禁止
- 第63条第2号は下限のある重い罰則(1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金)。募集情報等提供も対象に含まれる
- 条例は「公共の場所」「不特定の者」を要件にするが、職業安定法は場所を問わない。 街頭でないというだけで許可・手数料・明示のルールが消えるわけではない
- 契約前に確認できるのは六つ——書面での明示、違約金・前借り、身分証の預かり、紹介料の流れ、許可の有無、個人情報の使い道
- 撮影・出演の話では、1か月・4か月・1年という期間のルールが効く
- 記録が残っているかどうかで、後にできることが変わる。 時刻・場所・言われた内容を当日中に書く
夜の街をめぐる勧誘の話は、断片的な体験談として流れてくることが多く、どこまでが法令の話でどこからが個々の運用なのかが混ざりがちです。混ざったままだと、判断の材料になりません。 この記事は、条文で確かめられる部分だけを取り出して並べました。
会って話す相手を探しているだけなら、街で声をかけられる形をとらない選択肢もあります。LOVETOK NOW は「今、話せます」と待機している人だけが並び、マッチングを待たずにその場でチャットを始められるサービスです(20歳以上・年齢確認あり)。地域ごとの様子は地域から探すページにまとめています。
参考情報
- e-Gov法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(第18条の2・第22条・第22条の2・第25条・第26条・第28条・第31条の3・第51条・第53条)https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122
- e-Gov法令検索「職業安定法」(第4条・第5条の3・第5条の5・第30条・第32条の3・第32条の4・第32条の13・第32条の14・第36条・第39条・第40条・第63条・第64条・第65条・第66条・第67条)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141
- e-Gov法令検索「労働基準法」(第6条・第15条・第16条・第17条・第118条・第119条・第120条)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- e-Gov法令検索「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」(第4条・第5条・第7条・第9条・第10条・第12条・第13条・第17条・第20条)https://laws.e-gov.go.jp/law/504AC1000000078
- 東京都例規集「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(第7条・第8条)https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00002212.html
- 警視庁「客引き・スカウトの検挙状況と検挙事例」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/anzen/sakaribasogo/kenkyo_jirei.html
- 警視庁「客引き等の相手方となるべき者を待つ行為を規制する区域の指定について」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/keiyaku_horei_kohyo/horei_jorei/kyaku_ku.html
- 千葉県警察「迷惑防止条例改正(客引き・スカウト規制関係)」https://www.police.pref.chiba.jp/fuhoka/safe-life_publicspace-trouble.html
- 厚生労働省職業安定局「人材サービス総合サイト」https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/

