結論から書きます。従業者名簿とは、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)第36条が、店に対して「営業所ごとに備えなさい」と命じている帳簿のことです。そして、入店の日に身分証の提示を求められるのは、名簿そのものの義務ではなく、別の条文——第36条の2の「確認」義務によるものです。
この二つは、現場では「入店手続き」というひとつの流れとして経験されます。書類を出して、用紙に住所と氏名を書いて、コピーを取られる。ですが条文の上では、義務の中身も、義務がかかる店の範囲も、根拠となる下位法令も違います。 名簿は風営法第36条と内閣府令、確認は第36条の2と内閣府令、記録の作り方は国家公安委員会規則(施行規則)——と、三つの法令に分かれて書かれています。
そしてもうひとつ、あまり知られていない構造があります。確認に使った身分証の写しは、独立したファイルに保管されるのではなく、施行規則第108条によって「従業者名簿に添付して保存する」と定められています。 つまり名簿は、名前と住所の一覧ではなく、身分証の写しが綴じ込まれた束として、退職から3年間、営業所に置かれることになります。
この記事は、その名簿と確認の中身を条文で追います。源氏名と本名が二層になる仕組みそのものはキャバ嬢の源氏名の記事、入店の日に何を確認しておくかという順番の話は新人ホストが最初に覚えることの記事で扱っているので、ここでは重複を避け、名簿と確認記録という「帳簿の側」に絞ります。
この記事で分かること
- 従業者名簿(法第36条)と生年月日等の確認(法第36条の2)が、別の義務であること
- 名簿義務がかかる店の範囲のほうが、確認義務がかかる店の範囲より広いこと
- 名簿に載るのは「雇用契約のある労働者」に限らないと警察庁の通達が明記していること
- 名簿の記載事項5項目(内閣府令第25条)と、そこに本籍も源氏名も入っていないこと
- 確認書類に「本籍地都道府県名の記載があるもの」という条件が付いている理由と、その帰結
- 確認記録は名簿の中に作られ、身分証の写しが名簿に添付されること(施行規則第108条)
- 名簿も記録も、退職日から3年を経過する日まで保存されること
- 名簿を管理するのが「管理者」という法定の役職であること
- 立入検査で名簿が確認される仕組みと、立入りに引かれている限界
- 名簿を備えなかった場合の罰則(法第54条)と両罰規定
法令に関する記述は一般的な情報です。実際にどの書類を求めるか、どう保管するかといった運用は店や所轄の指導によって異なり、個別の事案の結論は事情によって変わります。
名簿と確認は、別の条文の別の義務
第36条——名簿を「備える」義務
条文はこう書かれています。
風俗営業者、店舗型性風俗特殊営業を営む者、(中略)特定遊興飲食店営業者、第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者及び深夜において飲食店営業(酒類提供飲食店営業を除く。)を営む者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、営業所ごと(中略)に、従業者名簿を備え、これに当該営業に係る業務に従事する者の住所及び氏名その他内閣府令で定める事項を記載しなければならない。(風営法第36条)
読みどころが三つあります。ひとつめは「営業所ごと」。本社や運営会社でまとめて持っているだけでは条文を満たしません。ふたつめは「当該営業に係る業務に従事する者」——接客する人に限られていません。みっつめは、記載事項が「住所及び氏名」+内閣府令、という二段構えになっていることです。
第36条の2——働かせる前に「確認する」義務
一方、確認の条文は名宛人が狭くなります。
接待飲食等営業を営む風俗営業者、店舗型性風俗特殊営業を営む者、無店舗型性風俗特殊営業を営む者、特定遊興飲食店営業者及び第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者は、当該営業に関し客に接する業務に従事させようとする者について次に掲げる事項を、当該事項を証する書類として内閣府令で定める書類により、確認しなければならない。(風営法第36条の2第1項)
「従事させようとする者について」——未来形です。働かせたあとで確認するのではなく、働かせる前に確認する構造になっています。入店初日に書類を求められ、それが済むまで卓に出されないことがあるのは、この語順に対応しています。
対象の広さが違う
二つの条文の名宛人を並べると、ずれが見えます。
| 営業の種類 | 名簿(第36条) | 生年月日等の確認(第36条の2) |
|---|---|---|
| 接待飲食等営業(法第2条第1項第1〜3号。キャバクラ・ホストクラブなど) | 必要 | 必要 |
| まあじやん屋・ぱちんこ屋(同項第4号)、ゲームセンター等(同項第5号) | 必要 | 条文の名宛人に含まれない |
| 特定遊興飲食店営業(ナイトクラブなど。法第2条第11項) | 必要 | 必要 |
| 深夜における酒類提供飲食店営業(法第33条第6項) | 必要 | 必要 |
| 深夜における飲食店営業(酒類提供飲食店営業を除く) | 必要 | 条文の名宛人に含まれない |
| 店舗型・無店舗型電話異性紹介営業 | 必要 | 条文の名宛人に含まれない |
名簿のほうが、対象が広い。 深夜に営業する普通の飲食店にも従業者名簿の義務はかかりますが、そこには第36条の2の確認義務はありません。「身分証の提示を求める店=接待のある店」という理解は正確ではなく、条文が分けているのは業種のイメージではなく、客に接する業務があるかどうかです。
なお、「接待飲食等営業」とは法第2条第4項により第2条第1項第1号から第3号までの営業を指します。第1号は「設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」で、ホストクラブもキャバクラもスナックもここに含まれます。
名簿に載るのは誰か——雇用契約は関係ない
ここからが、名簿という帳簿の性格がはっきりする部分です。警察庁が発出している「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準」(令和8年7月1日付け通達)の第35は、名簿についてこう書いています。
従業者名簿の記載については、雇用契約のある労働者に限るものではないが、労働基準法(昭和22年法律第49号)に基づく労働者名簿の記載により従業者名簿に代替できる場合には、別に従業者名簿を作成することを要しない。
「雇用契約のある労働者に限るものではない」。 業務委託でも、日雇いでも、体験入店でも、その営業に係る業務に従事しているなら名簿に載ります。逆に、労基法の労働者名簿で記載事項が満たせるなら、二重に作らなくてよいとも書かれています。従業者名簿と労働者名簿の役割の違いは新人ホストが最初に覚えることの記事で整理しています。
同じ通達は、委託の場合にも触れています。
業務の一部が委託される場合において、当該委託業務に携わる従業者も従業者名簿に記載することを要する。例えば、第三者から派遣されたコンパニオンやダンサー、歌手等も「当該営業に係る業務」として接待をし、ダンスを見せ、又は歌を聴かせるのであれば、「当該営業に係る業務に従事する者」に当たる。
「うちの社員ではないから載せない」は通りません。 誰から給料をもらっているかではなく、その営業所の業務に従事しているかで判断される、という読み方になります。
さらに、深夜営業の店については範囲の念押しがあります。深夜酒類提供飲食店営業や深夜の飲食店営業について、名簿の記載を要する従業者とは「午後10時以降又は深夜において当該営業に係る業務に従事する従業者のみならず、全ての従業者である」と書かれています。昼の時間帯だけ働く人も名簿に載ります。
名簿には何を書くのか
法第36条が「住所及び氏名」を求め、残りは内閣府令に委ねられています。その内閣府令は、法律の名前とは別に立っている「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令」(昭和60年総理府令第1号)で、第25条にこうあります。
法第三十六条の内閣府令で定める事項は、性別、生年月日、採用年月日、退職年月日及び従事する業務の内容とする。
まとめると、名簿の記載事項は次の7つです。
- 住所(法第36条)
- 氏名(法第36条)
- 性別(内閣府令第25条)
- 生年月日(同)
- 採用年月日(同)
- 退職年月日(同)
- 従事する業務の内容(同)
入っていないものが二つあります。本籍と、源氏名です。 本籍は後述するとおり確認書類の側で見る事項であり、名簿に転記して残す事項としては挙げられていません。源氏名にいたっては、法令上まったく登場しません。フロアの呼び名が法令の関心の外にあることの意味は、キャバ嬢の源氏名の記事で扱っています。
もうひとつ、実務でよく聞かれるのが様式です。風営法にも施行規則にも内閣府令にも、従業者名簿の様式(フォーマット)を定めた規定は置かれていません。 警視庁が公開している「風俗営業、特定遊興飲食店営業(様式一覧)」にも、許可申請書や変更届出書などは並んでいますが、従業者名簿の様式は掲載されていません。法令が求めているのは記載事項であって、紙の形ではない、ということになります。
なぜ入店日に身分証を出すのか
「客に接する業務」の範囲
第36条の2の確認義務がかかるのは「客に接する業務に従事させようとする者」です。この言葉の意味は、先ほどの通達の第11の4に定義があります。
「客に接する業務」とは、客に接し、客にサービスを提供するなどの業務をいい、「接待」(法第2条第3項)に該当する行為を含む。
そして具体例が列挙されています。接待飲食等営業に関係するものを挙げると、①歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと(接待)、②談笑、お酌、水割りの調整等、③ショー、歌舞音曲等を見せたり、聴かせたりすること、④客の相手となってダンスをすること、⑤客を客席等に案内すること、⑥飲食物を客席に運搬すること、⑦客から飲食代金等を徴収すること、⑧客の手荷物等を客から預かること——です。
卓に着かない役割も、ほとんどが入ります。 ドリンクを運ぶ、席へ案内する、会計を受け取る、クロークで荷物を預かる。これらは全部「客に接する業務」です。一方で、通達には除外もはっきり書かれています。
なお、客が入らない時間帯での営業所の掃除その他の開店準備等は含まれない。
開店前の清掃や準備だけを担当する人は、第36条の2の確認の対象にはなりません。ただし第36条の名簿には載ります。ここでも、名簿のほうが範囲が広いという関係が繰り返されています。
確認する事項
条文が挙げているのは、①生年月日、②国籍、③日本国籍を有しない人については在留資格・在留期間の満了の日・資格外活動許可の有無と内容、または特別永住者として永住することができる資格——です。
通達は、生年月日と国籍については「接客従業者が日本人であるか外国人であるかにかかわらず、必ず確認しなければならない」と明記しています。日本人だから国籍の確認は不要、とはなりません。
生年月日の確認が置かれている理由は、法第22条を見ると分かります。同条第1項第3号は営業所で18歳未満の者に客の接待をさせることを、第4号は午後10時から翌日の午前6時までの時間に18歳未満の者を客に接する業務に従事させることを、第6号は営業所で20歳未満の者に酒類又はたばこを提供することを、それぞれ禁じています。年齢による線が引かれている以上、年齢を確認する手続きが必要になる。 第36条の2は、その禁止を実効化するための入口に置かれた条文だと読めます。
確認書類が限定される理由——「本籍地都道府県名」
内閣府令第26条が指定しているもの
「内閣府令で定める書類」の中身は、同じ内閣府令の第26条にあります。日本国籍を有する者については、次のいずれかです。
イ 住民票記載事項証明書(住民基本台帳法第七条第二号に掲げる事項及び本籍地都道府県名が記載されているものに限る。) ロ 旅券法(昭和二十六年法律第二百六十七号)第二条第二号の一般旅券 ハ イ及びロに掲げるもののほか官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに類するもので、当該者の生年月日及び本籍地都道府県名の記載のあるもの
三つとも、共通して「本籍地都道府県名」が要件になっています。 ハの一般条項ですら、生年月日だけでは足りず、本籍地都道府県名の記載を求めています。
なぜ本籍まで見るのか。条文は理由を書いていませんが、確認事項の第2号が「国籍」であることと合わせて読むと素直です。日本国籍であることを書面で示す手段として、本籍地の記載が使われている、という構造です。
通達が挙げている具体例
ハに当たる書類の例は、通達に列挙があります。
府令第26条第1号ハの「官公庁から発行され、又は発給された書類」で「当該者の生年月日及び本籍地都道府県名の記載があるもの」としては、例えば、船員手帳、小型船舶操縦免許証、身体障害者手帳、猟銃又は空気銃の所持許可証がある。一方、例えば、児童扶養手当証書は、本籍が記載されていないことから、これに当たらない。
当たらない例が挙げられているところが重要です。 官公庁が発行した書類であっても、本籍の記載がなければハには当たらない、と明示されています。
手元にある身分証で足りるとは限らない
ここから先は、条文の条件と、公表されている券面の仕様を突き合わせた読み方です。
警視庁のICカード免許証の案内によれば、改正道路交通法施行規則が平成22年7月17日に施行され、運転免許証の本籍欄が削除されました。同庁は「本籍はプライバシー保護のため、表面から削除されました」と説明しており、表面の記載内容はICチップに記録され、ICカード読み取り装置に暗証番号を入力しないと見ることができないとされています。
マイナンバーカードについても、券面の記載事項は法律で定まっています。行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第2条第7項は、個人番号カードに記載される事項として氏名、氏名の振り仮名、住所、生年月日、性別、個人番号、その他政令で定める事項を挙げており、本籍は列挙されていません。 総務省のマイナンバーカードの案内でも、券面の記載として住所・氏名・生年月日・性別・顔写真などが説明され、本籍は挙げられていません。
つまり、券面に本籍の記載がない書類は、その書類だけでは内閣府令第26条第1号が指定する書類の条件を満たしません。 入店時に「免許証だけでなく、本籍の記載がある住民票記載事項証明書を持ってきてほしい」と言われることがあるのは、店が過剰に慎重なのではなく、条文の条件がそう書かれているためです。逆に、書類を求められないまま働き始める形のほうが、条文の想定から外れています。
実際にどの書類を求めるか、複数の書類を組み合わせるかといった運用は、店ごと・所轄ごとに異なります。ここで書いているのは条文と通達の読み方であって、特定の店の運用を評価するものではありません。
確認記録は、名簿の中に作られる
施行規則第108条が方法を二つに限定している
第36条の2第2項は、確認をしたときは国家公安委員会規則で定めるところにより記録を作成し、保存しなければならないとしています。その「国家公安委員会規則」が風営法施行規則(昭和60年国家公安委員会規則第1号)で、第108条にこうあります。
法第三十六条の二第二項の記録の作成及び保存は、次のいずれかの方法により行わなければならない。この場合において、当該記録は、当該従業者が退職した日から起算して三年を経過する日まで保存しなければならない。 一 (中略)記録事項を当該従業者に係る従業者名簿に記載し、かつ、当該確認に用いた書類の写しを当該従業者名簿に添付して保存する方法 二 (中略)記録事項を当該従業者に係る電磁的名簿に記録し、かつ、(中略)確認に用いた書類の写し又は当該書類に記載されている事項をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む。)により読み取つてできた電磁的方法による記録を(中略)電磁的名簿の内容と照合できるようにして保存する方法
「次のいずれかの方法により行わなければならない」——方法が二つに限定されています。 そして両方とも、記録の置き場所は従業者名簿(または電磁的名簿)です。名簿と無関係な別のファイルに確認記録を作る形は、条文が挙げている方法に含まれていません。
そして、確認に使った書類の写しは「従業者名簿に添付して保存する」と書かれています。 身分証のコピーを取られるのは、店が念のためにやっていることではなく、この条文の要求です。名簿は名前の一覧ではなく、身分証の写しが綴じられた束になる——というのは、ここから来ています。
「記録事項」から名簿の記載事項が除かれている
細かいところですが、条文の作りとして面白い部分があります。第108条第1項第1号は「記録事項」を、第36条の2第1項各号に掲げる事項および確認をした年月日から、「法第36条の規定により従業者名簿に記載しなければならないこととされている事項を除く」ものと定義しています。
生年月日は、内閣府令第25条によりすでに名簿の記載事項です。したがって、確認の記録として名簿に書き足されるのは、生年月日を除いた部分——日本国籍の人であれば国籍と確認年月日、日本国籍でない人であればそれに加えて在留資格や在留期間の満了の日など——ということになります。二重に書かなくてよいように、条文の側で引き算がされているわけです。
電磁的名簿にできる条件
紙でなければならないわけではありません。施行規則第107条第1項は、法第36条に規定する事項が電磁的方法により記録され、必要に応じ電子計算機その他の機器を用いて直ちに表示されることができるときは、その記録(電磁的名簿)をもって名簿に代えることができるとしています。第2項は、その記録をする場合には国家公安委員会が定める基準を確保するよう努めなければならない、と続けます。
条件は「直ちに表示されることができる」ことです。クラウドにあること自体は問題になりませんが、立入りの場で開けないなら、備えていることにならない可能性があります。
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3年という期間
名簿と記録には、それぞれ保存の終期が定められています。
- 従業者名簿——施行規則第106条により、その従業者が退職した日から起算して3年を経過する日まで、その者に係る従業者名簿を備えておかなければならない
- 確認の記録——施行規則第108条第1項により、当該従業者が退職した日から起算して3年を経過する日まで保存しなければならない
どちらも起算点は「退職した日」で、期間は3年。辞めた翌日に消える記録ではありません。 そして確認記録には身分証の写しが含まれるので、3年間残るのは氏名と住所だけではありません。
では3年を過ぎたらどうなるか。風営法と施行規則が定めているのは「いつまで備えなければならないか」であって、期限を過ぎたら捨てなさいとは書かれていません。ここから先は個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)の領域になります。同法第22条は、個人情報取扱事業者に対し、利用目的の達成に必要な範囲内で個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、「利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない」としています。
個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」は、この「利用する必要がなくなったとき」について、利用目的が達成され当該目的との関係で保有する合理的な理由が存在しなくなった場合などを挙げたうえで、「法令の定めにより保存期間等が定められている場合は、この限りではない」としています。裏返せば、風営法上の保存期間が終われば、その法令の定めを理由に持ち続ける根拠はなくなる、という読み方になります。もっとも第22条は努力義務であり、消去を強制する規定ではありません。名簿を含む個人データの扱いについてはキャバ嬢の源氏名の記事で、安全管理措置や第三者提供の制限まで含めて整理しています。
名簿を管理するのは「管理者」
名簿は、誰かが片手間で作るものとして放置されているわけではありません。風営法第24条第1項は、風俗営業者に対し、営業所ごとに、業務の実施を統括管理する者のうちから管理者1人を選任しなければならないと定めています。同条第2項により、未成年者は管理者になれません。
そして、管理者が行う業務は施行規則第38条に列挙されており、その中に次の二つがあります。
八 法第三十六条に規定する従業者名簿及びその記載について管理すること。 九 接待飲食等営業にあつては、法第三十六条の二第一項の規定による確認に係る記録について管理すること。
名簿の管理と確認記録の管理は、法定の役職の法定の業務です。 同条には、業務の一部が委託される場合に、その契約の内容や業務の履行状況などの点検の実施と記録の記載について管理することも挙げられています(第12号)。派遣されたスタッフを名簿に載せる話と、この点検の話は地続きです。
なお第24条第4項は、風俗営業者又はその代理人は管理者が行う助言を尊重しなければならず、使用人その他の従業者は管理者が行う指導に従わなければならない、としています。管理者は名目上の名義人ではなく、条文上は指導の主体として置かれています。
立入検査で名簿はどう見られるか
報告と立入りの条文
法第37条第1項は、公安委員会がこの法律の施行に必要な限度において、風俗営業者などに対し、その業務に関し報告又は資料の提出を求めることができるとしています。第2項は、警察職員が同じく法の施行に必要な限度において営業所などに立ち入ることができるとし、第3項は立入りの際に身分を示す証明書を携帯し関係者に提示しなければならないとしています。
そして第4項です。
第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
立入りは行政上の調査であって、捜査ではないと、条文自身が線を引いています。従業者名簿の備付けが求められているのは、この行政的な確認を成り立たせるためだ、という読み方ができます。
通達が書いている立入りの限界
先ほどの解釈運用基準の第36は、立入りについてかなり具体的な歯止めを書いています。
- 立入り等の行使は法の施行に必要な限度で行い得るもので、法の目的の範囲内で必要最小限度で行わなければならない。犯罪捜査の目的や他の行政目的のために行うことはできず、例えば経営状態の把握のために会計帳簿や経理書類等の提出を求めたり、保健衛生上の見地から調理場の検査を行ったりすることは認められない
- 一方で、接待飲食営業を営む風俗営業者が表示し又は客に説明した料金と実際に請求された料金が異なることや、客が注文していないと主張する飲食等の実際の伝票処理状況等を確認するため、会計帳簿や経理書類等の提出を求めることは認められる
- 報告又は資料の提出で行政目的が十分に達せられるものについては、それで済ませることとし、この場合には立入りは行わない
- 個室又はこれに類する施設内に立ち入る場合は、事前にノックするなどにより客が在室しないことを確認する必要がある
- 質問は原則として営業者・従業者等営業者側の者に対するものに限り、客に対する質問は営業者側への質問で十分に目的を達しない場合に限り行うこととし、通常は行わないようにする
- 報告又は資料の提出を求めることができる回数は、原則として1回とする
法第37条第2項ただし書も、営業所に設けられている個室その他これに類する施設で客が在室するものには立ち入れないとしています。名簿は営業所に備えるものなので確認の対象になりますが、その確認は無制限ではありません。
備えていなかった場合
罰則は法第54条に置かれ、いずれも100万円以下の罰金です。
- 第3号——第36条の規定に違反して、従業者名簿を備えず、又はこれに必要な記載をせず、若しくは虚偽の記載をしたとき
- 第4号——第36条の2第1項の規定に違反したとき(確認をしなかった場合)
- 第5号——第36条の2第2項の規定に違反して、記録を作成せず、若しくは虚偽の記録を作成し、又は記録を保存しなかったとき
- 第6号——第37条第1項の報告をせず、資料を提出せず、又は虚偽の報告・虚偽の資料を提出したとき
- 第7号——第37条第2項の立入りを拒み、妨げ、又は忌避したとき
「備えていない」だけでなく、「必要な記載をしていない」「虚偽の記載をした」も同じ条文に並んでいます。 記録を保存しなかった場合も同様です。
加えて法第57条の両罰規定により、法人の代表者や従業者がその法人の業務に関して第54条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人に対しても各本条の罰金刑が科されます。
行政処分の側も動きます。法第25条は、風俗営業者又はその代理人等が当該営業に関し法令に違反した場合において、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるときは、必要な指示をすることができるとし、法第26条第1項は、著しくそのおそれがあると認めるときなどに、許可の取消し、または6月を超えない範囲内で期間を定めた営業の全部・一部の停止を命ずることができるとしています。罰金と行政処分は別ルートで、要件も違います。
混同しやすい三つの区別
従業者の確認と、客の年齢確認は別
第36条の2は働く側の確認です。客の年齢の話は法第22条第1項第5号(18歳未満の者を営業所に客として立ち入らせること)などが扱っており、条文の構造も、内閣府令による書類の指定の有無も違います。「うちは身分証を確認する店です」という説明が、従業者の話なのか客の話なのかは、条文上まったく別の話題です。
写しの保存と、原本の預かりは別
施行規則第108条が求めているのは、確認に用いた書類の写しの保存です。一方、法第18条の2第1項第2号は、接待飲食等営業を営む風俗営業者が、その支払能力に照らし不相当に高額の債務を負担させた接客従業者の旅券等(旅券、運転免許証その他求人者が求職者の本人確認のため通常提示を求める書類として政令で定めるもの)を保管し、又は第三者に保管させることを禁じています。政令で定める書類は施行令第12条に列挙されています。
コピーを取って名簿に添付するのは義務、原本を店が預かり続けることは、条文が想定している場面ではありません。 第18条の2は、条文上、不相当に高額の債務を負担させた場合という要件が付いた禁止規定です。
従業者名簿と労働者名簿は別
前者は営業を規律する風営法の帳簿、後者は労働基準法が使用者に求める帳簿です。目的が違うので両方あるのが正常ですが、通達が書いているとおり、労働者名簿の記載で従業者名簿に代替できる場合は別に作ることを要しません。契約の形との関係は新人ホストが最初に覚えることの記事で扱っています。
働く側・関わる側が確認できること
名簿は店が備えるものなので、働く側が直接作るわけではありません。それでも、条文を知っていると確認できることがあります。
- 入店の日に生年月日と国籍の確認があったか。なかった場合、店が第36条の2第1項を満たしていない可能性がある
- 提出した書類の写しが名簿に添付される、という説明を受けたか。原本を預けたままになっていないか
- 名簿・記録が退職日から3年残ることを踏まえて、退職年月日が正しく記載されるか
- 名簿は営業所ごとに備えるものなので、どの営業所の名簿に載っているのかが分かるか
- 個人情報の利用目的の説明があったか(個人情報保護法第21条以下。詳細は源氏名の記事)
いずれも「店を疑う」ための項目ではなく、自分の情報がどの帳簿にどれだけの期間置かれるのかを把握するための項目です。
よくある質問
Q1. 従業者名簿とは、要するに何ですか。 風営法第36条が、風俗営業者などに対して営業所ごとに備えることを義務づけている帳簿です。記載事項は、住所・氏名(法第36条)に加え、性別・生年月日・採用年月日・退職年月日・従事する業務の内容(内閣府令第25条)の合計7項目です。様式は法令上定められていません。
Q2. アルバイトや業務委託でも名簿に載りますか。 載ります。警察庁の解釈運用基準は「従業者名簿の記載については、雇用契約のある労働者に限るものではない」と明記しています。委託業務に携わる従業者も記載を要するとされ、第三者から派遣されたコンパニオンやダンサー、歌手等も対象として例示されています。
Q3. なぜ入店の日に身分証を出すのですか。 法第36条の2第1項が、客に接する業務に従事させようとする者について、生年月日・国籍等を内閣府令で定める書類により確認することを店に義務づけているためです。確認しなかった場合、店は法第54条第4号により100万円以下の罰金の対象になります。書類の提出は店の裁量ではなく、店に課された義務です。
Q4. 運転免許証やマイナンバーカードでは足りないと言われました。 内閣府令第26条第1号は、日本国籍を有する者の確認書類として、住民票記載事項証明書(生年月日および本籍地都道府県名が記載されているものに限る)、一般旅券、または官公庁から発行・発給された書類で生年月日および本籍地都道府県名の記載のあるもの、を指定しています。運転免許証は平成22年7月17日施行の改正で表面の本籍欄が削除され、マイナンバーカードの券面記載事項にも本籍は含まれていません。そのため、券面に本籍の記載がない書類だけでは条文の条件を満たしません。実際にどの書類を求めるかは店や所轄の指導によって異なります。
Q5. 身分証のコピーはどこに保管されるのですか。 施行規則第108条第1項第1号は、確認に用いた書類の写しを従業者名簿に添付して保存する方法を定めています。第2号は電磁的名簿にスキャナで読み取った記録を照合できるようにして保存する方法です。条文はこの二つの方法に限定しており、名簿と無関係な場所に置く形は挙げられていません。
Q6. 辞めたあと、名簿や身分証の写しはいつまで残りますか。 施行規則第106条により、従業者名簿は退職した日から起算して3年を経過する日まで備え付けることとされ、同第108条第1項により確認記録も同じ期間の保存が必要です。法令上の義務なので、本人の希望で早く消せる性質のものではありません。3年経過後については、個人情報保護法第22条が「利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければならない」としていますが、これは努力義務です。
Q7. 名簿を作っていない店は、何が起きますか。 法第54条第3号により、名簿を備えず、必要な記載をせず、又は虚偽の記載をしたときは100万円以下の罰金の対象です。確認をしなかった場合(第4号)、記録を作成しなかった・虚偽の記録を作成した・記録を保存しなかった場合(第5号)も同じ100万円以下の罰金です。さらに法第57条の両罰規定により法人にも罰金刑が科され得ます。行政処分としては、法第25条の指示、法第26条の許可取消しまたは6月を超えない範囲での営業停止命令があります。
Q8. 立入検査で、名簿は必ず見られるのですか。 法第37条第2項により、警察職員は法の施行に必要な限度において営業所に立ち入ることができ、名簿はその確認の対象になり得ます。ただし同条第4項は「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」としており、通達も、必要最小限度で行うこと、報告や資料の提出で足りる場合は立入りを行わないこと、客が在室する個室には立ち入らないこと、客への質問は通常行わないことなどを定めています。
Q9. 店に確認記録を管理する担当者はいるのですか。 います。法第24条により、風俗営業者は営業所ごとに管理者1人を選任しなければならず、施行規則第38条第8号は「法第36条に規定する従業者名簿及びその記載について管理すること」を、第9号は接待飲食等営業について「法第36条の2第1項の規定による確認に係る記録について管理すること」を、管理者の業務として挙げています。
まとめ
- 従業者名簿は風営法第36条が定める帳簿で、営業所ごとに備え、業務に従事する者の住所・氏名を記載する。記載事項の残りは内閣府令第25条が定め、性別・生年月日・採用年月日・退職年月日・従事する業務の内容の5項目。本籍も源氏名も入っていない
- 名簿の義務(第36条)と、生年月日等の確認の義務(第36条の2)は別の条文で、対象になる店の範囲も違う。名簿は深夜の飲食店営業やぱちんこ屋等まで及ぶが、確認は接待飲食等営業・特定遊興飲食店営業・深夜酒類提供飲食店営業などに限られる
- 警察庁の解釈運用基準は、名簿の記載が「雇用契約のある労働者に限るものではない」こと、委託や派遣で入る人も記載を要すること、深夜営業では全ての従業者が対象になることを明記している
- 確認の対象は「客に接する業務に従事させようとする者」。通達は、接待だけでなく案内・運搬・会計・手荷物の預かりまで例示し、客が入らない時間帯の掃除や開店準備は含まないとしている
- 内閣府令第26条が指定する確認書類には「本籍地都道府県名の記載があるもの」という条件が付く。運転免許証は平成22年7月17日施行の改正で表面の本籍欄が削除され、マイナンバーカードの券面記載事項にも本籍は含まれない
- 確認の記録は施行規則第108条により、名簿に記載して書類の写しを名簿に添付するか、電磁的名簿に記録してスキャン画像を照合できるように保存するか、二つの方法に限定されている
- 名簿(施行規則第106条)も確認記録(同第108条)も、退職した日から起算して3年を経過する日まで。3年経過後は個人情報保護法第22条の消去の努力義務の領域に移る
- 名簿と確認記録の管理は、法第24条の管理者の法定業務(施行規則第38条第8号・第9号)
- 名簿を備えない・必要な記載をしない・虚偽記載、確認をしない、記録を作らない・保存しないは、いずれも法第54条により100万円以下の罰金。法第57条の両罰規定で法人にも科され得る
- 立入りは行政調査であり、法第37条第4項は犯罪捜査のためのものではないと明記している。通達も必要最小限度、客が在室する個室への立入り禁止、客への質問の抑制などの歯止めを置いている
法令に関する記述は一般的な情報であり、個別の事案の結論は事情によって異なります。運用は店舗・地域・所轄によって差があります。
名簿と確認記録の話は、要するに「誰がどこで働いているかを、法令が求める形で残す」という制度の話です。人と話すこと自体にそこまでの手続きが要るわけではありません。LOVETOK NOWは「今、話せます」と待機している人だけが一覧に並び、マッチングを待たずにその場でチャットを始められるサービスです(20歳以上・年齢確認あり)。地域ごとの話は出会いガイドにまとめています。
参考情報
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律|e-Gov法令検索
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則|e-Gov法令検索
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令|e-Gov法令検索
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令|e-Gov法令検索
- 個人情報の保護に関する法律|e-Gov法令検索
- 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律|e-Gov法令検索
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(令和8年7月1日付け通達)|警察庁
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)|個人情報保護委員会
- ICカード免許証|警視庁
- 風俗営業、特定遊興飲食店営業(様式一覧)|警視庁
- マイナンバーカード|総務省

