結論から書きます。ホストが髪型にこだわるのは、髪型が「自分を一人の個人として指し示すための目印」として機能しているからです。 源氏名は音、髪型は見た目。この二つがそろって初めて、客の記憶の中で「あの人」が一人に定まります。名刺の写真も、店のサイトのプロフィール写真も、SNSのアイコンも、すべて同じ人物を指していると分かる必要がある——その一致を毎日つくり直す作業が、出勤前のヘアセットです。
そして、この記事でいちばん書きたいのはその先です。2025年に施行された改正風営法を受けて、警察庁は同年6月4日付の通達で、接待飲食営業の広告物に「指名数No.1」「○億円プレイヤー」「覇者」「神」といった文言を表示することが法第16条の広告・宣伝の規制違反に当たると示しました。看板から数字と称号が消えた一方で、通達が規制対象として名指ししたのは文言のほうです。 結果として、街頭の広告物に残るのは名前と顔になります。髪型が担っていた識別の役割は、むしろ相対的に重くなった——そう読むこともできる状況が、いま起きています。
なお、指名そのものの仕組みは本指名の記事、名前の付け方は源氏名の記事、出勤前の時間の使い方はホストの1日の記事、衣装・美容にかかるお金と天引きのルールは夜職の衣装・美容代の記事にあります。ここでは「髪型」という一点に絞ります。
この記事で分かること
- 髪型が営業上で果たしている三つの機能(識別・写真・指名との接続)
- 「写真指名」という、来店前に写真だけで担当が選ばれる入り口の存在
- 髪型を変えることが、名刺やプロフィール写真の作り直しにつながる構造
- 業界メディアが描く年代別の流行の変化と、その記述をどこまで史実として読めるか
- 流行が「遠くで目立つ形」から「近くで見て自然な形」へ動いた理由を、表示面の変化から説明する見方
- 毎日のヘアセットに関わる美容師法の条文(美容の定義・無資格者の禁止・美容所以外での業の禁止)
- 2025年の改正風営法と警察庁通達が、看板の何を規制し、何を規制していないのか
- 屋外広告物条例やアドトラック規制、新宿区の路上看板条例という、風営法の外側の枠
- 働く側から見たときの、費用・時間・「変えにくさ」という三つのコスト
法令に関する記述は一般的な情報であり、個別の事案の結論は事情によって変わります。業界の慣習に関する部分は業界向けメディアを読み比べた整理で、店舗・地域・個人によって扱いは異なります。
髪型が担っている三つの機能
1. 識別——名前と顔をつなぐ
ホストクラブの初回では、複数のホストが順番に席に来ます。この流れは初回の記事で扱っていますが、ここで起きるのは「短時間に何人もの人物情報が一度に入ってくる」という状態です。
ホスト向けの求人メディアは、名刺の解説の中でこの問題をはっきり書いています。客は短時間に複数のホストから名刺を受け取るため、誰が誰か分からなくなる。だから顔写真入りの名刺(写真名刺)にすることが、自分を覚えてもらう手段として有効だ、という説明です。同じ記事は、新人が手書きで情報を書き足す「空名刺」、源氏名やキャラクターに合わせた「デザイン名刺」、ハート型などの「変形名刺」、ホログラムや金箔加工の「特殊名刺」といった種類を挙げ、関係の段階に応じて使い分ける運用を紹介しています。
つまり業界の側は、「覚えてもらえない」ことを実務上の課題として認識しているわけです。名前は音で、顔は絵。この二つを結びつけるとき、正面からの顔写真の中でいちばん面積が大きく、遠くからでも差が出るのは髪です。髪型は、識別のための情報量を最も安く増やせる場所だと言えます。
源氏名の記事では、名前を選ぶときに効いてくる制約として「口で伝わるか」「重複しないか」「探したときに見つかるか」「変えるコストを払えるか」を挙げました。髪型は、この五つのうち後半の二つとほぼ同じ性質を持っています。認知は積み上がるもので、変えれば積み直しになる——名前と髪型は、その意味で同じ層の話です。
2. 写真——席に着く前に選ばれている
もう一つ、髪型を語るうえで外せない仕組みがあります。「写真指名」です。
キャバクラ用語集は、写真指名を「ホームページなどの写真を見て指名するキャストを選ぶこと」と説明し、店に入ってから何人かに会って決めるのではなく、文字どおり写真だけを見て選ぶ方法だと書いています。ホスト向けメディアでは「写指」と略され、初回に2〜3名を写真から選んで優先的に席に着いてもらう、という運用が紹介されています。
ここが重要です。写真指名という入り口では、声も話し方も間の取り方も関係しません。静止画に写っているものだけで判断が行われます。 静止画において、服装は店やドレスコードで似通いやすく、姿勢や表情は撮影時に整えられます。個体差がいちばん出るのは、輪郭を含めたシルエット——つまり髪型です。
同時に、写真指名には業界メディア自身が指摘するリスクもあります。宣材写真は加工されている場合が多く、客の側から見ると当たり外れのある選び方になる、という指摘です。逆に言えば、写真と実物が一致していることが、この入り口では前提になっているということでもあります。毎日ヘアセットをするという習慣は、「写真の状態を毎日再現する」という約束の履行に近い性質を持ちます。
3. 指名——数字に接続している
本指名の記事で整理したとおり、本指名の第一の機能は、その客が支払った金額をだれの売上として計上するかを一意に決めることです。そして歩合の部分は売上から計算されるため、「指名が増える→売上が増える→歩合が増える」という一本の線が引かれます(歩合の組み立てはホストの歩合の記事にあります)。
この線があるので、識別されること・選ばれることが、そのまま金額に変換されます。 外見への投資が合理的な行動として説明されるのは、この構造があるからです。
ただし、ここは慎重に書いておきます。「髪型を変えたら指名が何本増えた」という因果を検証した公的なデータは存在しません。 業界の求人メディアには「髪型が指名増加に直結する」「第一印象は数秒で決まる」といった記述がありますが、これらは検証された数値ではなく、業界内で共有されている経験則の紹介です。この記事も、髪型が「機能を持っている」ことは説明できますが、「どれだけ効くか」は説明できません。
髪型は「変えにくい資産」になる
髪型のこだわりを、単なる美意識の話として読むと見落とすことがあります。髪型は、いったん定着すると変更コストが発生する資産になるという点です。
さきほどの名刺の記事には、種類ごとの価格の目安も書かれていました。写真名刺は4,400〜23,100円、デザイン名刺は2,200円、特殊名刺は3,300〜23,100円といった幅です(同メディアの記載であり、業界共通の相場ではありません)。ここで効いてくるのは金額そのものより、紙に印刷された写真は、髪型を変えた瞬間に古くなるという事実です。
同じことが、店のサイトのプロフィール写真、SNSのアイコン、初回の卓に置かれる写真の一覧にも起こります。髪型を大きく変えれば、そこに蓄積された「この写真の人」という認知と、実際に席に来る人物の見た目がずれます。写真指名という入り口を持つ業態では、このずれは入り口そのものの精度を落とします。
だから、髪型は「毎日整える」ことと「めったに変えない」ことがセットになりやすい。 一見すると逆方向に見える二つの行動が、どちらも同じ理由——写真と実物の一致を保つこと——から出てきます。ここが、一般のヘアスタイルの話と、営業上のヘアスタイルの話がいちばん分かれるところだと思います。
年代でどう変わってきたか
業界メディアが描く四つの時代
ホストの髪型の変化については、業界メディアがおおむね次のような区切りで整理しています。ホスト向け情報メディアの記事は、年代を四つに分けています。
- 2003〜2007年ごろ——髪が細い束状になる「スジ盛り」。金髪とロングヘアが定番だった時期
- 2007〜2010年ごろ——「ギャル男+ストレートパーマ」系。襟足の長いパーマや前髪を立ち上げる形が流行し、髪色は金から茶へ
- 2010〜2017年ごろ——トップにボリュームを置き、襟足を長めに残す「ウルフカット」へ。派手さからナチュラルさへ流行が移行
- 2017年ごろ以降——黒髪・センターパート・ナチュラルウルフ。K-POPの影響を受けた韓国風のスタイルが広がる
現在の定番として、別の求人メディアは「センターパート」「スマートマッシュ」「ウルフカット」の三つを挙げ、初心者にはセットが簡単なスマートマッシュを勧めています。同メディアは、美容室でのメンテナンスの頻度について「最低でも月に1回」と書いています。
この区切りを、そのまま史実として読まない
念のため書いておきます。これらの年代区分は業界メディアによる回顧的な整理であり、公的な統計や記録に基づくものではありません。 媒体によって年代の切り方も呼び名も違いますし、同じ時期でも店・地域・個人によって実際の髪型はばらばらだったはずです。「2005年のホストは全員スジ盛りだった」といった読み方はできません。
一方で、流行が「派手で目立つ方向」から「自然で違和感のない方向」へ動いた、という向きについては、複数の媒体の記述が一致しています。 ここは、ある程度共通の認識として扱ってよさそうです。
なぜ向きが変わったのか——表示面が変わったという見方
理由を断定できる資料はありません。ただ、「写真がどこに表示されるか」が変わったことで、有利な形が変わったという説明は、この記事のここまでの整理から筋が通ります。
看板やビルの外壁ポスターは、遠くから、大きなサイズで、一瞬だけ見られるものです。この条件では、細かい表情や質感はほとんど伝わらず、効くのは輪郭の差——シルエットの高さや髪色のコントラストです。髪を高く立ち上げ、色を明るくする形は、この表示面に対して合理的です。
一方、スマホの画面に並ぶプロフィール写真の一覧は、近い距離で、小さなサイズで、しかも他の人と横に並べて比較されます。この条件では、極端なシルエットは小さく縮んだときに情報が潰れやすく、逆に顔まわりの輪郭と清潔感のほうが差になります。写真指名という入り口が、紙の一覧からスマホの画面に寄っていけば、有利な形もそちらへ寄る——という説明です。
これはあくまで構造からの推論であって、因果を検証した資料ではありません。 ただ、「なぜ盛らなくなったのか」を美意識の変化だけで説明するより、表示面の変化として見たほうが、次の章で扱う2025年の変化ともつながります。
2025年、看板から数字と称号が消えた
法第16条と、警察庁の通達
風営法第16条は、こう定めています。
風俗営業者は、その営業につき、営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならない。
この条文自体は以前からあるものです。動いたのは運用のほうでした。2025年(令和7年)5月28日に公布された改正風営法で、ホストクラブをはじめとする接待飲食営業に係る遵守事項・禁止行為が新設されたことを受け、警察庁は令和7年6月4日付の丁保発第104号「接待飲食営業における広告及び宣伝の取扱いについて(通達)」を出しました。
通達はまず、規制の対象となる「広告物」を次のように定義しています。常時または一定の期間継続して公衆に表示されるものであって、看板、立看板、はり紙およびはり札ならびに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、または表示されたもの、およびこれらに類するもの。
そのうえで、通達が問題として書いているのは次の構図です。接待飲食営業では「ランキング制」等と称して接客従業者間で指名数・売上額等の営業成績を競わせ、上位者を表彰したり役職を与えたりして称揚する実態が見受けられる。そして——
広告物に接客従業者の容姿と共にその営業成績を直接的に示し、若しくは推認させ、又は接客従業者間の競争を強調する文言を表示することで、客には自身が好意の感情を抱く接客従業者の営業成績を向上させるために高額の遊興又は飲食をする意欲をそそらせるとともに、接客従業者には自身の営業成績を向上させるためには違法行為をもいとわない意識を醸成させるような状態が引き起こされることとなる。
具体的に挙げられた四つの類型
通達は、次の(1)〜(4)のいずれかの表示に該当する広告・宣伝を行った場合、広告および宣伝の規制違反に該当すると解される、としています。挙げられている例まで含めて引きます。
- 接客従業者の営業成績を直接的に示す文言の表示——例:「年間売上〇億円突破」「○億円プレイヤー」「指名数No.1」「億超え」「億男」
- 営業成績に応じた役職の名称等の、営業成績が上位であることを推認させる文言の表示——例:「総支配人」「幹部補佐」「頂点」「winner」「覇者」「神」「レジェンド」「新人王」
- (1)(2)以外の「ランキング制」自体の存在、接客従業者間での優位性を裏付ける事実等の、競争を強調する文言の表示——例:「売上バトル」「カネ」「SNS総フォロワー数○万人」
- 客に対して、自身が好意の感情を抱く接客従業者を応援すること等を過度にあおる文言の表示——例:「○○を推せ」「○○に溺れろ」
四つとも、規制対象として名指しされているのは「文言」です。 「接客従業者の容姿と共に」という書き方からも分かるとおり、通達が問題にしているのは、顔写真そのものではなく、そこに添えられる数字・称号・あおり文句のほうです。
ただし、写真にも別の枠がある
とはいえ、写真がまったく自由というわけではありません。同じ通達は、営業所の内部についても触れています。
風営法施行規則第7条は、法第4条第2項第1号の技術上の基準として、1号営業について「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと」と定めています。条文に「写真」が明記されているわけです。そして法第12条は、風俗営業者は営業所の構造および設備をこの技術上の基準に適合するように維持しなければならないと定めているため、営業開始後に問題のある広告物を店内に設置すれば、構造・設備の維持義務違反に当たることになる、と通達は説明しています。
対応についても書かれています。違反を認めた場合は、まず違反状態を是正するよう行政指導を行い、指導に従わない場合には法第25条に基づく指示処分等を検討する。また、当分の間、行政処分を行おうとする場合はあらかじめ警察庁保安課と調整すること——とされています。いきなり処分ではなく、指導が先に来る設計です。
「顔が残った」ことの意味
以上を並べると、街頭の広告物に起きた変化はこう整理できます。数字(売上・指名数・フォロワー数)と称号(覇者・神・総支配人)とあおり文句(推せ・溺れろ)は、広告物から外すことになった。名前と顔は、それ自体を禁じる書き方にはなっていない。
看板の情報量が減れば、残った要素の相対的な比重は上がります。順位で目立つ経路が塞がれたとき、屋外の広告物で残る差は、名前と写真——そして写真の中でいちばん差が出る髪型になります。「なぜ髪型にこだわるのか」という問いは、2025年以降、少し違う重みを持つようになったと言えます。
ただしこれは条文が定めたことではなく、規制の結果として起こりうる状況の読み方です。実際に何がどう変わったかは、店ごとの対応によって異なります。
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風営法の外側にも枠がある
看板の話は、風営法だけでは完結しません。警察庁の悪質ホストクラブ対策検討会の最終報告書にも、委員の意見としてこう記録されています。
ホストクラブの看板、アドトラックの規制、また、客引きについて、風営適正化法だけの問題ではなく、条例を含め他の規制と全体で考えていかないといけない。
実際、自治体の側でも動きがあります。
広告宣伝車(アドトラック)
東京都は屋外広告物条例施行規則を一部改正し、令和6年6月30日から、都外ナンバーの広告宣伝車にも東京都屋外広告物条例の規制を適用しています。都の説明によれば、それまで条例の適用は都内ナンバーの車両に限られていましたが、改正後は都外ナンバーの車両も同じ手続き(屋外広告物の許可等)の対象になりました。この改正に先立ち、令和5年11月〜12月に「広告宣伝車に対する屋外広告物規制の考え方」についての意見募集が行われ、同年12月26日に東京都広告物審議会から答申が出されています。
路上の立て看板
新宿区は「新宿区路上等障害物による通行の障害の防止に関する条例」を設けています。区の説明によれば、対象は公共の場所にある立て看板やのぼり旗、商品の陳列台その他の工作物で、繰り返しの行政指導に応じずに設置・放置を続けた場合、条例に基づいて区が除去し一時保管する措置を取る場合があるとされています。除去された物件の返還には、今後公共の場所に設置しないことに関する誓約書と返還請求書の提出が必要です。さらに、「歌舞伎町一丁目(シネシティ広場周辺)」「西新宿一丁目」「新宿三丁目」の一部を重点路線とし、命令書を交付してもなお改善されない場合は除却・撤去し、撤去で発生した費用を請求するとしています。
街頭に自分の顔と名前を出すという行為には、風営法・屋外広告物条例・区の条例という三層の枠がかかっているということです。どこまでが可能かは、店の所在地の自治体によって変わります。
毎日セットするという仕事と、美容師法
ヘアセットは法律上「美容」にあたる
出勤前のヘアセットは、法律の上では明確な位置づけを持ちます。美容師法第2条は次のように定めています。
この法律で「美容」とは、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう。
厚生労働省の説明ページも、美容師はこの定義の行為を行う者であり、染毛やまつ毛エクステンションも美容行為に含まれるとしています。「結髪」が定義に入っている以上、ヘアセットは美容そのものです。
そのうえで、同法は二つの制限を置いています。
- 第6条——「美容師でなければ、美容を業としてはならない。」
- 第7条——美容師は、美容所以外の場所において美容の業をしてはならない。ただし、政令で定める特別の事情がある場合はこの限りでない。
罰則もあります。同法第18条は、無免許で美容を業とした場合などについて30万円以下の罰金を定めています。また第8条は皮膚に接する布片・器具の清潔保持や客ごとの取替え・消毒などの措置を、第11条は美容所を開設しようとする者の都道府県知事への届出を、第12条は使用前に構造設備が基準に適合するかの検査確認を受けることを、それぞれ定めています。
「美容所以外」の例外は、思ったより狭い
第7条ただし書の「政令で定める特別の事情」については、自治体が案内を出しています。川崎市の説明によれば、美容師法施行令に規定されている場合として、①疾病その他の理由により美容所に来ることができない者に対して行う場合、②婚礼その他の儀式に参列する者に対しその儀式の直前に行う場合、③養護老人ホーム・児童養護施設その他これらに類する施設の入所者に対して行う場合、④港湾に停泊中の船舶で乗組員に対して行う場合、⑤興行場等で演芸を行う者等に対し出演等の直前に行う場合、が挙げられ、これらは届出不要とされています。加えて⑥その他市長が特に必要と認める場合は、出張業務承認申請書の提出が必要とされています。
この解釈は、なお絞られています。厚生労働省健康・生活衛生局生活衛生課が令和8年3月26日付で出した事務連絡「理容師法施行令第4条第1号及び美容師法施行令第4条第1号に基づく出張理容・出張美容の対象について(改定)」のQ&Aは、通知の対象に含まれない場合は「条例で定めない限り、出張理容・出張美容の対象にならない」と明記しています。同Q&Aは、第1号の「疾病その他の理由」について、入所施設にいる場合、疾病・障害等のため施術を完了することが困難な者、外出困難な妊婦、精神的・心理的理由等により外出が困難な者などを例として挙げ、さらに「常時対応が求められる等の業務や勤務環境で、理容所・美容所の営業時間中に外出する時間の確保が困難である場合も考えられる」としています。
だから「どこで誰にセットしてもらうか」は確認事項になる
業界メディアによれば、ホストのヘアセットには大きく三つの形があるとされます。①店が提携するサロンを使い、出勤前にそこでセットする、②契約したヘアメイク担当が店に来てセットする、③自分でサロンを選ぶ。同メディアは、セットにかかる時間の目安を10〜15分程度とし、多くの店ではセットをしていないと出勤させてもらえないとも書いています。
ここで注意が要ります。②の形が美容師法上どう評価されるかは、誰が施術しているか、業として行われているか、施行令の「特別の事情」に当たるかによって変わります。 この記事で「合法だ」「違法だ」と断定することはできません。自分で自分の髪をセットする行為は「業」ではないので同法の問題になりませんが、他人に反復して施術する形をとる場合は、扱いが変わり得ます。実際の判断は個別具体的な事情によるので、疑問があれば店の所在地を管轄する保健所に確認するのが確実です。
供給側の数字
参考までに、施術を受ける側から見た環境の数字も挙げておきます。厚生労働省の令和6年度衛生行政報告例によれば、令和6(2024)年度末現在の美容所は277,752施設で前年度から3,682施設(1.3%)増加し、理容所は107,995施設で2,302施設(2.1%)減少しています。美容所は増加傾向が続いている一方、理容所は減り続けています。なお総務省統計局の統計FAQも、美容所(美容室)の施設数と従業美容師数は「衛生行政報告例」で調べられると案内しています。
お金の話は、この記事では最小限にします
費用そのものは夜職の衣装・美容代の記事で扱っているので、ここでは三点だけ。
第一に、公的な相場は存在しません。 総務省の小売物価統計調査(動向編)には「理髪料」「パーマネント代」「カット代」「ヘアカラーリング料」といった調査品目があり、市別の年平均価格がe-Statで公開されています。ただし、そこにあるのは一般の理美容サービスの価格であって、「ホストが出勤前に受けるヘアセット」という区分は存在しません。業界メディアには「店の提携サロンなら1回1,000〜1,500円程度で、出勤日数分が給料から天引き」「自分でサロンを使うなら1回1,500〜2,000円程度が目安」「無料の店もある」といった記述がありますが、これらは各媒体の記載であり、業界共通の相場として扱えるものではありません。
第二に、総額を決めるのは単価ではなく頻度です。 毎出勤日に発生する費目なので、月8日出勤と月22日出勤では、同じ単価でも月額が3倍近く変わります。この計算の型は既存記事にまとめてあります。
第三に、天引きにはルールがあります。 雇用されて賃金を受け取っている場合、賃金には全額払いの原則があり、控除が認められるのは法令に別段の定めがある場合か、事業場の過半数労働組合または過半数代表者との労使協定がある場合とされています。給与明細にヘアセット代の控除項目があるなら、その根拠を確認するのが出発点になります。指定のサロンを使うよう求められる場合の論点(雇用か業務委託かで当たるルールが違う)も、同じ記事で扱っています。
働く側から見た三つのコスト
髪型の話を「見た目を良くする努力」としてだけ読むと、負担の形が見えなくなります。実際には、性質の違う三つのコストが同時にかかります。
時間のコスト。 セット自体は10〜15分程度とされますが、店に在籍数が多くヘアメイク担当が順番に対応する形だと、その分だけ早く出勤する必要がある、と業界メディアは書いています。この準備時間が労働時間として扱われるかどうかは、雇用契約か業務委託契約かで法的な位置づけが変わります(ホストの1日の記事で触れています)。
お金のコスト。 出勤日数に連動する変動費で、しかも通常は削りにくい費目です。加えて、カットやカラーの周期的なメンテナンスが別に乗ります。
変更のコスト。 これが、この記事でいちばん強調したい部分です。髪型は認知の一部になったあと、変えると写真・名刺・SNSのアイコンとのずれが生じます。写真指名という入り口を持つ業態では、このずれは実務上の不利になり得ます。髪型は「毎日整えるもの」であると同時に、「軽々しく変えられないもの」でもある。 名前と同じで、蓄積した認知は変更のたびに積み直しになります。
なお、無資格者による美容が禁じられていることや、器具の清潔保持・消毒が法律上の措置として定められていることは、働く側の安全にも関わります。価格や利便だけで選ぶ前に、どの枠のもとで提供されているサービスなのかを確認しておくのが安全です。
客の側から見て、確認できること
写真や髪型は印象を左右しますが、会計は印象では決まりません。 確認できるのは次のような事実のほうです。
- 料金表が営業所内で客に見やすいように表示されているか(風営法第17条は、国家公安委員会規則で定める種類の料金を営業所において客に見やすいように表示することを義務づけています)
- 写真から選ぶ入り口(写真指名)を使うとき、その指名に料金がかかるのかどうかが説明されているか(指名料の考え方は指名料の記事にあります)
- 「○○を推せ」「今日入れてくれないと」という趣旨の働きかけが会計の場面に混ざっていないか——通達が(4)の類型として挙げたのは、まさに応援を過度にあおる文言でした
- 店内・店外の掲示に、売上額や順位を示す表示が残っていないか
写真が加工されていること自体は、業界メディアも書いているとおり珍しくありません。それをどう受け止めるかは個人の判断ですが、見た目の判断と支払いの判断は別の作業として分けるほうが、あとで困りにくくなります。
よくある質問
Q1. ホストはなぜ毎日ヘアセットするのですか。 業界メディアによれば、多くの店でセットをしていないと出勤させてもらえない扱いになっており、身だしなみとして最低限必須とされています。機能の面から言えば、名刺や店のサイト、SNSに出ている写真と実物を一致させる作業でもあります。写真だけを見て指名する「写真指名」という入り口がある以上、写真の状態を毎日再現できるかどうかが実務上の意味を持ちます。
Q2. 髪型を変えると指名は増えるのですか。 その因果を検証した公的なデータはありません。業界の求人メディアには「髪型が指名増加に直結する」といった記述がありますが、これは業界内で共有されている経験則の紹介であって、測定された効果ではありません。確かなのは、髪型が識別と写真の情報量を左右する要素であること、そして指名が売上と歩合に一意に紐づく仕組みになっていること(本指名の記事)までです。
Q3. ヘアセット代はいくらくらいかかりますか。 公的な相場統計はありません。総務省の小売物価統計調査には「理髪料」「カット代」「パーマネント代」などの調査品目がありますが、「ホストのヘアセット」という区分は存在しません。業界メディアには1回1,000〜2,500円程度という記述や、店の提携サロンなら出勤日数分が給料から天引きされるという説明がありますが、店舗・地域によって異なります。総額の出し方と天引きのルールは夜職の衣装・美容代の記事にまとめています。
Q4. 店の中でヘアメイク担当にセットしてもらうのは、法律上どうなりますか。 一般論として、ヘアセット(結髪)は美容師法第2条の「美容」に当たり、同法第6条により美容師でなければ美容を業としてはならないとされ、第7条により美容師は美容所以外の場所で美容の業をしてはならない(政令で定める特別の事情がある場合を除く)とされています。厚生労働省の令和8年3月26日付事務連絡は、通知の対象に含まれない場合は条例で定めない限り出張理容・出張美容の対象にならないと明記しています。ただし、実際にどう評価されるかは誰がどのような形で行っているかによるため、この記事では断定できません。疑問がある場合は所在地の保健所に確認してください。
Q5. 看板から「No.1」が消えたのはなぜですか。写真も禁止されたのですか。 警察庁の令和7年6月4日付通達(丁保発第104号)が、接待飲食営業の広告物に「指名数No.1」「○億円プレイヤー」などの営業成績を示す文言、「覇者」「神」「総支配人」などの役職・称号、「売上バトル」「SNS総フォロワー数○万人」などの競争を強調する文言、「○○を推せ」「○○に溺れろ」などのあおり文言を表示することが、法第16条の広告・宣伝の規制違反に該当すると示したためです。規制対象として挙げられているのは文言であり、顔写真そのものを禁じる書き方にはなっていません。 ただし風営法施行規則第7条は、技術上の基準として「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと」と定めており、写真にも別の枠はかかります。
Q6. 昔のホストはなぜ髪を盛っていたのですか。 理由を確定できる資料はありません。業界メディアは、2000年代前半の「スジ盛り」「金髪」を、派手にして目立つ・非日常感を演出するという営業上の狙いから説明しています。この記事では別の見方も紹介しました。看板やポスターのように「遠くから・大きく・一瞬」見られる表示面では、細部より輪郭の差が効くため、高さと色で差をつける形が合理的になる、という説明です。表示面がスマホの画面に寄れば、有利な形も変わります。ただしこれは構造からの推論で、検証された因果ではありません。
Q7. 髪型を店から指定されたら、断れますか。 立場によって当たるルールが違います。業務委託であれば、フリーランス・事業者間取引適正化等法の「購入・利用強制の禁止」が関わり得ます。雇用であれば、あらかじめ額を決めた罰金や賠償額の予定は労働基準法16条により禁止されています。また、費用を報酬や賃金から差し引く運用には、それぞれ別の論点があります。詳しくは夜職の衣装・美容代の記事にまとめました。判断に迷うときは、公正取引委員会や労働基準監督署が相談先になります。
Q8. 「SNSのフォロワー数○万人」を看板に出すのはどうなりますか。 警察庁の通達は、(3)の類型「接客従業者間の競争を強調する文言の表示」の例として、「売上バトル」「カネ」と並べて「SNS総フォロワー数○万人」を明示的に挙げています。売上額そのものではなくても、優位性を裏付ける数字の表示は対象になり得るという整理です。違反を認めた場合はまず行政指導が行われ、指導に従わない場合に法第25条に基づく指示処分等が検討される、とされています。
Q9. 髪型の流行は、いま何が主流ですか。 求人メディアは現在の人気として「センターパート」「スマートマッシュ」「ウルフカット」を挙げ、韓国風のスタイルの影響にも触れています。ただし、これは各媒体の記述であって統計ではありません。店・地域・年齢層によって傾向は異なりますし、流行は数年単位で変わってきた領域です。
まとめ
- ホストが髪型にこだわるのは、髪型が「識別のための目印」として機能しているから。短時間に何人もの名刺を受け取る客の側では、誰が誰か分からなくなる——という課題を業界メディア自身が書いている
- 写真だけを見て担当を選ぶ「写真指名(写指)」という入り口があり、そこでは声も話し方も関係しない。静止画で最も差が出るのが髪型になる
- 指名は売上と歩合に一意に紐づくため、識別されることが金額に変換される構造がある。ただし「髪型を変えると指名が何本増える」という因果を検証した公的データはない
- 髪型は認知の一部になると変更コストが発生する。名刺・プロフィール写真・SNSのアイコンとのずれが生じるため、「毎日整える」ことと「めったに変えない」ことがセットになりやすい
- 年代別の流行(スジ盛り→ギャル男系→ウルフ→黒髪・マッシュ・韓国風)は業界メディアの回顧的整理で、公的な記録ではない。ただし「派手→自然」という向きは複数媒体で一致している
- 2025年の改正風営法を受けた警察庁の令和7年6月4日付通達(丁保発第104号)は、広告物に営業成績・役職や称号・競争を強調する文言・応援をあおる文言を表示することが法第16条の規制違反に当たると示した。規制対象は文言であり、顔写真そのものを禁じる書き方ではない
- 風営法施行規則第7条は技術上の基準として「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと」を定めており、営業所内部の掲示にも枠がある。違反にはまず行政指導、従わない場合に法第25条の指示処分等
- 街頭の掲示には、風営法のほかに屋外広告物条例(東京都は令和6年6月30日から都外ナンバーの広告宣伝車も規制対象)や区の条例(新宿区の路上等障害物条例、重点路線での除却・費用請求)という枠もかかる
- ヘアセットは美容師法第2条の「美容」にあたり、第6条で無資格者の業が、第7条で美容所以外の場所での業が原則禁止されている。出張美容の例外は施行令が定める場合に限られ、令和8年3月26日付の厚労省事務連絡は「通知の対象に含まれない場合は条例で定めない限り対象にならない」と明記している
- 費用には公的な相場がない。小売物価統計調査に「理髪料」「カット代」等の品目はあるが、ホストのヘアセットという区分は存在しない。総額を決めるのは単価より頻度で、天引きには賃金全額払いの原則が関わる
法令に関する記述は一般的な情報であり、個別の事案の結論は事情によって異なります。業界の慣習に関する部分は業界向けメディアを読み比べた整理で、店舗・地域・個人によって扱いは異なります。
見た目を整えることが、そのまま「選ばれるための設計」になっている——ホストの髪型を追いかけると、そういう構造が見えてきます。逆に、写真も順位も肩書きも介さずに、いま少し誰かと話したいだけということもあると思います。LOVETOK NOWは「今、話せます」と待機している人だけが一覧に並び、マッチングを待たずにその場でチャットを始められるサービスです(20歳以上・年齢確認あり)。地域ごとの話は出会いガイドにまとめています。
参考情報
- 接待飲食営業における広告及び宣伝の取扱いについて(通達)令和7年6月4日 丁保発第104号|警察庁
- 悪質ホストクラブ対策検討会 最終報告書|警察庁
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律|e-Gov法令検索
- 美容師法|e-Gov法令検索
- 美容師法の概要(理容師・美容師関係)|厚生労働省
- 理容師法施行令第4条第1号及び美容師法施行令第4条第1号に基づく出張理容・出張美容の対象について(改定)令和8年3月26日事務連絡|厚生労働省
- 令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況|厚生労働省
- 令和6年度衛生行政報告例の概況 結果の概要「3 生活衛生関係」|厚生労働省
- 美容師が美容所以外の場所で行う美容業務(出張美容)|川崎市
- 都外ナンバーの広告宣伝車に対して東京都屋外広告物条例の規制が適用されます|東京都都市整備局
- 新宿区路上等障害物による通行の障害の防止に関する条例|新宿区
- 小売物価統計調査(動向編)調査品目の年平均価格|e-Stat 政府統計の総合窓口
- 統計FAQ 21B-Q01 美容室及び美容師の数|総務省統計局
- 写真指名とは|キャバクラ用語集 体入ドットコム
- ホストの名刺は使い分けが重要!主な種類と作る時のポイント|体入ホスパラNAVI
- 【髪型攻略】指名を増やすヘアスタイルを徹底解説|ホスリク
- ホストの髪型はなぜ特徴的だった?髪型の歴史やヘアセット事情も紹介|ホスミル
- 【女性向け】ホストクラブの指名とは?種類や料金相場、注意点まで徹底解説|ホスミル
- ホストのヘアメを徹底解説!お店ごとのシステムやセルフセット方法まで|NGG-R

