結論:アフターは「営業が終わったあとの時間」に起きる
夜の店をめぐる言葉の多くは、店の中で起きることを指しています。セットも指名もドリンクも、営業時間のなかで発生し、会計とともに終わります。ところがアフターだけは、会計が終わったところから始まります。
この一点が、アフターという言葉を他の用語と分けています。店の外という「場所」の問題であると同時に、営業時間の外という「時間」の問題でもある。場所と時間の両方で、店のルールの外側に出る——これがアフターの構造です。
そして、外側に出た瞬間から、別のルールが働きはじめます。深夜に酒を出せる店とそうでない店を分ける規制、深夜に働くことをめぐる労働法の規定、深夜の移動と飲酒運転をめぐる道路交通法、飲酒量と健康をめぐる国のガイドライン。アフターを理解するというのは、閉店後という時間帯に何が待っているかを知ることとほぼ同じ意味になります。
この記事で分かること
- アフターという言葉が何を指し、どこまでが業界の慣行でどこからが法律の話なのか
- 閉店後に「移動先の店」が成り立つ制度上の理由(接待ができる営業と、深夜に酒を出せる営業の違い)
- 閉店後の時間が労働時間に当たるのか、当たるとすれば深夜割増賃金がどう関わるのか
- 法律が深夜業をどう特別扱いしているか(健康診断・深夜業の制限)
- 帰りの移動をめぐる論点——通勤災害の考え方、運転代行、飲酒運転の罰則
- 飲酒の量を数える単位と、国が示している目安
- 断りにくさをどう扱うか、困ったときにどこへ相談するか
同伴の仕組みそのものは同伴とはで扱っています。同伴とアフターを並べて比べたい方は同伴とアフターの違いへ。この記事は閉店後の時間にしか起きないことに絞ります。
アフターとは何か——言葉の輪郭を先に決める
会計を終えたあと、店の外で過ごす形
アフターは一般に、店での飲食と会計を終えたあと、そのまま店の外で食事などをして過ごすという時間の使い方を指す業界の言葉として使われています。英語の after(〜のあと)がそのまま名詞になったもので、何のあとかといえば「店の営業のあと」です。
大切なのは、これが来店の形ではなく、退店の形を指しているという点です。同伴は「入店の仕方」を指す言葉で、アフターは「退店したあとの過ごし方」を指す言葉。似ているようで、時計の針の位置がまったく違います。
内容も条件も店ごと・人ごとに違う
アフターに行くかどうか、どこへ行くか、誰が費用を負担するか、店として何らかの扱いを設けているかどうか——これらはすべて店や人によって違います。 「夜の店では必ずアフターがある」とも、「アフターは必ずこういうものだ」とも言えません。制度として整備されているものではなく、慣行として存在しているものなので、業界共通のルールとして語れる部分はほとんどないと考えたほうが実態に近くなります。
この記事でも、金額の相場や頻度の目安といった数字は書きません。確認できないからです。代わりに、どんな場合にも共通してかかってくる法律や制度の枠組みを整理します。
「アフター」は法令の用語ではない
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)にも、労働基準法にも、「アフター」という用語は登場しません。法律の側から見れば、それは「営業時間外に、営業所の外で、人と人が会っている」という状態にすぎません。
ただし、状態が法律の外にあるということと、何のルールもかからないということは別です。会っている場所が飲食店なら食品衛生や営業時間の規制がかかりますし、移動すれば交通ルールがかかる。酒を飲めば健康の問題が生じ、それが仕事として行われているのなら労働法の問題になる。「アフターという制度」は存在しないが、「アフターの時間に働くルール」は複数存在する——この整理から始めると混乱しにくくなります。
なぜ「閉店後」という時間帯が生まれるのか
接待ができる営業には営業時間の枠がある
キャバクラやホストクラブは、風営法でいう接待飲食等営業(1号営業)にあたります。警視庁の業種一覧は、この営業を「キャバレー、待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食させる営業」と説明しています。
この営業には営業時間の制限があり、深夜の時間帯には原則として営業できません。営業できない時間があるということは、必ずどこかに「閉店」という区切りが来るということです。アフターという言葉が成り立つのは、この区切りがあるからにほかなりません。24時間営業ができる業態であれば、そもそも「閉店後」という概念自体が生まれません。営業時間の規制の詳細は同伴の記事で扱っています。
移動先の店は、別の枠組みで営業している
ここで多くの人が疑問に思うのが、「店が閉まる時間なのに、なぜ別の店は開いているのか」という点です。答えは、業態が違うからです。
警視庁の業種一覧によれば、深夜における酒類提供飲食店営業とは、設備を設けて午前0時から午前6時の間に客へ酒類を提供する飲食店営業で、通常の食事を提供するものを除いたものを指します。この営業は、接待を伴う風俗営業とは別の枠組みで扱われ、届出をして営むものです。警視庁は「性風俗関連特殊営業、深夜における酒類提供飲食店営業の届出」というページで、届出書(別記様式第47号)や営業の方法を記載した書類、営業所の平面図などの必要書類を案内しています。
ここから読み取れる線引きは明快です。接待をする営業は深夜の時間帯に営業できず、深夜に酒を出せる営業は接待をしない。 閉店後に別の店へ移動するという行動が成り立つのは、この2つの枠が別々に存在しているからです。つまりアフターの時間に入った店は、接待を伴う店ではなく、通常の飲食店として客を迎えていることになります。
「営業所の外・営業時間の外」という二重の外側
まとめると、アフターは次の2つの意味で店のルールの外側にあります。
- 場所の外側:料金の表示義務も営業所の構造の基準も、営業所という箱を単位に組み立てられている。店の外に出れば、その箱の規制は直接には働かない
- 時間の外側:営業時間の制限は、その営業所が営業している時間にかかる規律。閉店後は、その店の営業そのものが終わっている
同伴が「店に入る前」という片側だけ外に出るのに対して、アフターは両側とも外に出る。だからこそ、店の規制ではなく、一般の法律や個人の判断に委ねられる部分が大きくなります。裏を返せば、自分で気をつけるしかない領域が広いということでもあります。
その時間は労働時間になるのか
閉店後の時間をめぐって、働く側でもっとも問題になりやすいのがここです。結論から言えば、「アフターだから労働時間だ」「アフターだから労働時間ではない」と一律に決まる仕組みにはなっていません。
判断の軸は「指揮命令下に置かれていたか」
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)は、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間と定義しています。そして、労働時間に当たるかどうかは労働契約や就業規則の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるかにより客観的に定まるとされ、義務づけられていたか、余儀なくされていたかといった実態から個別具体的に判断されるという組み立てです。
つまり見るべきは呼び名ではなく中身です。同じ「閉店後の食事」でも、店から行くように言われていたのか、行かないことが事実上できない状況だったのか、それとも本人が自分の判断で行ったのか。この違いが評価を分けます。
アフターに固有の難しさは「記録が途切れていること」
同伴の時間と比べて、アフターには構造的な難しさがあります。退勤の記録が先に打たれているという点です。
出勤前の時間であれば、その後に出勤記録が続くので、前後関係を追える余地があります。ところが閉店後の時間は、退勤処理を済ませ、店が閉まったあとに始まる。書類の上では「もう終わっている時間」なので、あとから事実を再現する材料が残りにくいのです。
だからこそ、記録の残し方が重要になります。判断材料になりうるのは、たとえば次のようなものです。
- 誰から、どんな言葉で誘われたのか(連絡手段と文面が残っているか)
- 店の連絡ツールや業務用の連絡網を通じたやり取りだったか
- 本数や回数の目標が示されていたか、達成状況が記録・共有されていたか
- 行かなかった場合に、待遇や取り扱いに何か違いが生じる説明があったか
- 実際に何時から何時まで、どこにいたのか
これは店を疑うための作業ではありません。あとから食い違いが起きたときに、事実を突き合わせられる材料を自分の手元に持っておくための作業です。
もし労働時間なら、深夜割増賃金が関わってくる
ここがアフターと同伴の決定的な違いです。閉店後の時間は、深夜の時間帯に重なります。
労働基準法37条は、時間外・休日・深夜の割増賃金を定めています。栃木労働局の解説によれば、深夜労働(午後10時から午前5時)および時間外労働については2割5分以上、法定休日労働については3割5分以上の割増賃金が必要とされています。また、割増賃金の基礎となる賃金から除外される手当については、名称ではなく内容により判断されるとされています。
出勤前の時間であれば、多くの場合この深夜の枠には入りません。しかし閉店後の時間は、その時間帯に入っている可能性が高い。 だから「労働時間に当たるかどうか」という問いは、アフターの場合、「当たるとすれば深夜割増の対象になる時間である」という重みを持ちます。同じ論点でも、金額としての意味合いが違うのです。
その前提として「労働者かどうか」がある
ただし、以上の話はすべて、その人が労働基準法上の労働者に当たることを前提としています。雇用契約なのか、業務委託の形をとっているのか。契約書の題名ではなく実態から判断される論点であり、ここが争点になる場合もあります。
自分がどちらなのか分からないまま「割増賃金が出るはずだ」と考えても議論は前に進みません。契約の形と実際の働き方を確認するのが最初の一歩で、そのうえで労働基準監督署や総合労働相談コーナーといった公的な窓口に、実際の資料を持って相談するのが確実です。
法律は深夜業を特別扱いしている
アフターを「深夜に活動する時間が増えること」と捉え直すと、別の角度が見えてきます。日本の労働法制は、深夜業をはっきり特別扱いしています。 割増賃金だけの話ではありません。
深夜業に従事する人の健康診断は年2回
高知労働局の案内によれば、特定業務従事者の健康診断は、対象となる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際および6か月以内ごとに1回、定期に実施するものとされています。対象業務には高熱・低温作業や放射線業務、粉じん業務などとともに、深夜業を含む業務が挙げられています。
一般の定期健康診断が年1回であるのに対し、深夜業に従事する人は年2回の頻度が求められている。これは「深夜に働くことは体に負荷がかかる」という前提が、制度の側にあることを意味します。
自分の判断で受けられる健康診断もある
同じく高知労働局の案内には、深夜業従事者の自発的健康診断についての記載があります。過去6か月間に平均して1か月当たり4回以上、深夜業に従事した労働者が、自らの判断で受けることができる健康診断で、受診を支援する助成金の制度もあるとされています。
次の定期健診を待たずに受けられるという点が、この制度の要点です。体調に不安があるなら、自分から動ける道が用意されている。 夜の仕事に就いている人ほど知っておく価値のある制度です。
子どもを育てている人は、深夜業を免除してもらえる
厚生労働省の育児休業制度特設サイトによれば、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、会社は深夜の時間帯(午後10時から午前5時)に働かせてはいけないとされています。
対象となるのは、日々雇用ではなく、継続して雇用された期間が1年以上あり、週の所定労働日数が3日以上で、所定労働時間の全部が深夜にあるわけではなく、深夜に子を保育できる同居の家族がいない、といった要件を満たす人です。請求は制度利用開始予定日の1か月前までに事業主に行い、1回の請求につき1か月以上6か月以内の期間について、回数の制限なく請求できるとされています。
アフターに直接関係する制度ではありませんが、「深夜に働く時間をどこまで引き受けるか」を自分で線引きできる仕組みが法律にあるという事実は、閉店後の時間の使い方を考えるうえで知っておくべきことです。
帰りの移動——ここがいちばん現実的な論点
アフターの話で見落とされやすいのが、終わったあとにどうやって帰るかです。閉店後の時間はそのまま深夜・早朝につながるため、移動の条件が昼間とはまるで違います。
通勤災害の枠組みを知っておく
石川労働局の説明によれば、通勤災害とは「労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡」を指し、「通勤」に当たるには次の要件が必要とされています。
- 就業に関し——住居と就業の場所との往復行為が、業務と密接な関連をもって行われること
- 住居と就業の場所との間の往復——住居は、本人が居住して日常生活に用いており、就業の拠点となる場所
- 合理的な経路及び方法——一般に用いると認められる経路および手段等
そして重要なのが逸脱・中断の扱いです。同局の説明では、逸脱は通勤途中で合理的な経路から外れること、中断は経路上で通勤と無関係な行為をすることを指し、逸脱・中断後は原則として通勤とは認められないとされています。ただし、公衆便所の利用やタバコの購入といった小規模な付随行為は逸脱・中断に当たらない場合があるとされ、また例外として認められる日常生活上必要な行為として、日用品の購入、職業訓練や教育訓練の受講、選挙権の行使、病院・診療所での診察や治療、配偶者・子・親などの継続的または反復的な介護が挙げられています。
閉店後に別の場所へ移動してから帰宅するという行動が、この枠組みのどこに位置づけられるのか。列挙されている例外にそのまま当てはまるものは見当たりません。 ただし、実際の判断は個々の事情に基づいて行われるものであり、ここで一般論として断定することはできません。万一の事故が労災として扱われるかどうかは、あらかじめ確定しているわけではない——この不確実さを認識しておくこと自体が、リスク管理の第一歩になります。
「送る」「送ってもらう」が犯罪になる線
飲酒をともなう場面で、絶対に踏み越えてはいけない線があります。警視庁の「飲酒運転の罰則等」によれば、道路交通法65条は次のように定めています。
- 2項:酒気を帯びている者に対し、車両等を提供してはならない
- 3項:酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない(飲酒運転をするおそれがある者に対して)
- 4項:運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該車両に同乗してはならない
罰則も、運転者だけにとどまりません。同ページによれば、酒酔い運転では運転者と車両提供者が5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、酒類の提供者と同乗者が3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。酒気帯び運転では運転者と車両提供者が3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、酒類の提供者と同乗者が2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金とされています。
つまり、酒を飲んだ人の車に「送ってもらう」ことも、飲む人に車を貸すことも、運転する人に酒をすすめることも、それぞれ処罰の対象になりうるということです。「自分は運転していないから関係ない」は通りません。アフターという場面は、飲酒と移動が同じ時間帯に重なるため、この規定がもっとも近くにある場面のひとつです。
運転代行という選択肢と、その制度
自分の車で来ていて飲んでしまった場合の選択肢として、自動車運転代行業があります。警視庁のページによれば、これは自動車運転代行業法に基づく業種で、認定申請の手続きが案内されています。随伴用自動車とは、代行運転自動車の後ろを追って顧客を自宅等に届けたあと、当該自宅等から営業所等に戻るために用いる自動車と説明されています。
利用する側として知っておきたいのは、この業種が法律に基づく制度のもとで営まれているという点です。事業者が正規の手続きを踏んでいるかどうかを確認する材料は、制度の側に用意されています。詳しい遵守事項は、都道府県警察のサイトで確認できます。
深夜の移動そのものに備える
制度の話とは別に、実務的な備えも要ります。終電の時刻、タクシーが拾える場所、帰宅経路のうち人通りが少なくなる区間、家族や友人と共有できる連絡手段——これらは、遅くなってから考えるのでは間に合いません。
身の危険を感じる出来事があった場合や、つきまとい・待ち伏せといった行為に困っている場合は、緊急でない相談として警察相談専用電話(#9110)という窓口があります。緊急時は110番です。「大ごとにしたくない」と一人で抱え込む前に、相談だけでもできる窓口があることは覚えておいて損がありません。
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飲酒の健康影響——量を「数える」という発想
閉店後にもう一軒、という時間の使い方は、飲酒の機会と量が積み上がる場所でもあります。国は近年、飲酒について明確なガイドラインを出しました。
「純アルコール量」という共通の単位
厚生労働省は令和6年(2024年)2月19日に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表しました。同省の発表によれば、その趣旨は飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を図ることにあり、国民それぞれの状況に応じた適切な飲酒量・飲酒行動の判断を支援することが目的とされています。
このガイドラインの考え方の中心にあるのが、純アルコール量という単位です。厚生労働省は次の計算式を示しています。
摂取量(ml)× アルコール濃度(度数/100)× 0.8(アルコールの比重)
例として、ビール500ml(5%)であれば、500 × 0.05 × 0.8 = 20g と説明されています。
この発想が重要なのは、「何杯飲んだか」では量を比べられないからです。度数の違う酒を何種類も飲む場面では、杯数はほとんど意味を持ちません。グラムに換算して初めて、その日どれだけ摂ったかを自分で把握できるようになります。
目安として示されている数値
厚生労働省の「健康日本21(第二次)におけるアルコール対策」のページでは、生活習慣病のリスクを高める量として、1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上という数値が示されています。同ページには、飲酒量は低ければ低いほどよいという趣旨の記述もあります。
先の計算式に当てはめれば、女性の20gはビール500ml(5%)1本に相当する量です。この数値は「ここまでなら安全」という許可ではなく、リスクが上がる境界の目安として示されているものです。
個人差を前提にする
厚生労働省がガイドラインの目的として「それぞれの状況に応じた」判断を挙げているのは、飲酒の影響に個人差があることが前提だからです。同じ量を飲んでも、体格、体質、年齢、その日の体調によって影響は変わります。他人と同じペースで飲めるかどうかを基準にすると、自分の身体の反応を見落とします。
なお、20歳未満の飲酒は法律で禁じられており、店の営業所内での20歳未満への酒類提供も風営法で禁じられています。年齢をめぐる線引きは同伴の記事で整理しています。
回数という観点
1回あたりの量と同じくらい重要なのが、その機会が週にどれくらいあるかです。営業の一環として飲酒の機会が繰り返されると、1日単位では大きく見えなくても、月・年の単位では相当量になります。
これは意志の強さの問題ではなく、単純な足し算の問題です。だからこそ、飲まない日をあらかじめ決める、水を挟む、その日の上限をグラムで決めておくといった、量を管理するための具体的な手立てが意味を持ちます。健康上の不安がある場合は、前述の深夜業従事者の自発的健康診断のような制度も含め、医療機関に相談するのが確実です。
断りにくさをどう扱うか
断ることは、制度上まったく問題がない
まず確認しておきたいのは、アフターに行かないことを禁じる法律はないし、行くことを義務づける法律もないということです。客の側が誘いを断るのも、働く側が断るのも、それ自体は何の問題もありません。
感情に乗じた要求には規制が入った
警察庁のサイトによれば、令和7年(2025年)に、悪質な営業行為の規制等を内容とする風営法の一部改正法が成立・公布され、令和7年11月28日までにその全ての規定が施行されました。この改正では、料金の説明や、客の感情に乗じた形での飲食等の要求などについて、接待飲食等営業を営む風俗営業者の遵守事項や禁止行為が整理されています。改正の中身は同伴の記事や色恋営業の記事で扱っています。
アフターに引き寄せて言えば、誘うこと自体が直ちに問題になるわけではありません。 ただし、関係が壊れることをほのめかして困惑させ、飲食に至らせるところまで行けば、話は別の領域に入っていきます。「誘い」と「困惑させる要求」の間には線があるということです。
働く側から見た断りにくさ
一方で、働く側が感じる断りにくさは、感情の問題ではなく労働条件の問題として現れることがあります。行かないことで待遇に違いが出るのであれば、それは事実上の義務づけに近づき、前述の労働時間の評価にも関わってきます。
判断に迷う段階で、労働基準監督署や総合労働相談コーナーといった公的な窓口に、実際の資料を持って相談する。 これが遠回りに見えて、いちばん確実な道です。窓口は全国に置かれており、相談自体に費用はかかりません。
費用の扱いについて
アフターで発生する飲食代は、店の会計とは別の飲食店との取引です。誰がどう負担するかは、その場の当事者の問題であって、店の料金表の外側にあります。金額や慣行を一般化して語ることはできません。
なお、働く側に支払われる金銭の税務上の扱いについては、名目ではなく実質で判断されるため、個別の確認が必要です。報酬や給与の考え方はキャバ嬢の収入で扱っています。ここに書いたのは一般的な制度の説明であり、個別の税務判断ではありません。
トラブルを避けるための確認手順
働く側として関わる場合
- 閉店後の時間が業務としての位置づけなのか、本人の裁量なのかを、書面や記録で確認できる形にしておく
- 誘いや指示のやり取りが、どの連絡手段で行われたかを意識する(記録が残る手段かどうか)
- 実際の時刻(何時から何時まで)を、その日のうちにメモしておく
- 帰宅手段を先に決めておく。終電の時刻、タクシー乗り場、代行を使う場合の連絡先
- 飲酒量は杯数ではなくグラムで把握する。上限をあらかじめ決めておく
- 体調に不安が出たら、次の定期健診を待たずに受けられる制度があることを思い出す
客として関わる場合
- 店の会計と、店外での支払いを最初から別のものとして考える
- 車で来ている場合は、飲んだ時点で運転しないことを確定させる。代行かタクシーか、決めてから飲む
- 飲酒している人の車に同乗しない。運転する人に酒をすすめない
- 相手が断ったときに、それ以上求めない
いずれも特別なことではありません。判断力が落ちる時間帯だからこそ、判断を前倒しして済ませておくという考え方です。
よくある質問
Q1. アフターと同伴は何が違うのですか。
時間軸が違います。同伴は営業時間より前に店外で合流して一緒に入店する形、アフターは会計を済ませたあとに店外で過ごす形を指す言葉として使われています。同伴は「店に入る前」だけが店の外にありますが、アフターは営業時間の外かつ営業所の外という二重の外側にあります。詳しい比較は同伴とアフターの違いで扱っています。
Q2. アフターの時間は労働時間になりますか。
一律には決まりません。厚生労働省のガイドラインは、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間と定義し、契約書の記載にかかわらず客観的に判断されるとしています。義務づけられていたか、余儀なくされていたかといった実態から個別に判断されるため、記録を残したうえで労働基準監督署などに相談するのが確実です。なお、この判断の前提として、その人が労働基準法上の労働者に当たるかどうかも問題になります。
Q3. 労働時間に当たる場合、深夜の割増賃金はどうなりますか。
栃木労働局の解説によれば、労働基準法37条により、深夜労働(午後10時から午前5時)については2割5分以上の割増賃金が必要とされています。閉店後の時間はこの時間帯に重なることが多いため、労働時間と評価されるのであれば深夜の割増が関わってきます。ただし、実際に支払いが必要かどうかは労働者性や労働時間該当性の判断が前提となります。
Q4. なぜ店が閉まる時間なのに、別の店は営業できるのですか。
業態が違うためです。警視庁の業種一覧によれば、接待をして客に遊興または飲食させる営業(接待飲食等営業)と、午前0時から午前6時の間に客へ酒類を提供する深夜における酒類提供飲食店営業は、別の枠組みとして整理されています。後者は届出をして営むもので、接待を伴わない業態です。
Q5. アフターの帰りに事故に遭った場合、労災になりますか。
一般論として断定できません。石川労働局の説明では、通勤とは就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路および方法で往復することを指し、逸脱・中断があった場合は原則として通勤と認められないとされています。例外として認められる日常生活上必要な行為として、日用品の購入、職業訓練の受講、選挙権の行使、診察・治療、家族の介護などが挙げられています。実際の判断は個々の事情によるため、労働基準監督署に事実関係を持ち込んで確認してください。
Q6. 飲んだ人の車に乗せてもらうのは、どこまで問題になりますか。
警視庁の説明によれば、道路交通法65条4項は、運転者が酒気を帯びていることを知りながら当該車両に同乗することを禁じています。罰則も定められており、酒酔い運転の場合は同乗者に3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、酒気帯び運転の場合は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金とされています。運転していなくても処罰の対象になりうるということです。
Q7. 1日にどのくらいまでなら飲んでよいのですか。
厚生労働省の「健康日本21(第二次)におけるアルコール対策」のページでは、生活習慣病のリスクを高める量として、1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上という数値が示されています。これは安全を保証する上限ではなく、リスクが上がる境界の目安です。純アルコール量は「摂取量(ml)× アルコール濃度(度数/100)× 0.8」で計算でき、ビール500ml(5%)で20gにあたります。影響には個人差があるため、自分の状況に応じた判断が必要です。
Q8. アフターを断ると不利になりますか。
断ることを禁じる法律はありません。客として断るのも、働く側が断るのも自由です。ただし、断りにくさが待遇の違いという形で現れているなら、それは労働条件の問題として整理できる場合があります。また、関係が壊れることをほのめかして困惑させ、飲食に至らせる行為については、2025年に成立・施行された改正風営法が悪質な営業行為の規制として扱う領域に関わってきます。
Q9. 深夜に働く時間を減らしたい場合、使える制度はありますか。
厚生労働省の育児休業制度特設サイトによれば、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、会社はその人を午後10時から午前5時の間に働かせてはいけないとされています。継続雇用期間が1年以上あることなどの要件があり、開始予定日の1か月前までに請求し、1回につき1か月以上6か月以内の期間について、回数の制限なく請求できるとされています。
まとめ:閉店後という時間帯に、何が待っているかを知る
- アフターは業界の言葉で、法令の用語ではない。会計を終えたあとに店外で過ごす形を指す
- 特徴は、営業時間の外・営業所の外という二重の外側にあること。同伴が片側だけ外に出るのとは構造が違う
- 閉店後に別の店が営業できるのは、接待を伴う営業と、深夜に酒類を提供する営業が別の枠組みだから
- その時間が労働時間に当たるかは、指揮命令下に置かれていたかという基準で個別具体的に判断される
- 当たると評価される場合、閉店後は深夜(午後10時〜午前5時)の割増賃金が関わる時間帯である
- 法律は深夜業を特別扱いしている。健康診断は6か月以内ごとに1回、自発的健康診断の制度もある
- 帰りの移動には通勤災害の逸脱・中断という論点があり、飲酒運転は同乗者や酒類提供者も処罰の対象になる
- 飲酒量は杯数ではなく純アルコール量(グラム)で数える。男性40g以上・女性20g以上がリスクの目安
アフターが分かりにくいと言われるのは、内容が複雑だからではありません。店のルールが届かない場所と時間で起きるため、判断が個人の側に丸ごと返ってくるからです。何が自由で、何に法律がかかっていて、どこに相談できるのか。この3つを分けて持っておくだけで、閉店後の時間の扱い方はずいぶん変わってきます。
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参考情報
- 警視庁「風俗営業等業種一覧」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/fuzoku/gyoshu_ichiran.html
- 警視庁「性風俗関連特殊営業、深夜における酒類提供飲食店営業の届出」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/fuzoku/todokede.html
- 警視庁「飲酒運転の罰則等」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/torishimari/inshu_info/inshu_bassoku.html
- 警視庁「自動車運転代行業 概要」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/kotsu/daiko_menu/daiko_gaiyo.html
- 警察庁「悪質ホストクラブ対策について」 https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/hostclubto/hostclubto.html
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html
- 厚生労働省 栃木労働局「時間外、休日及び深夜の割増賃金(第37条)」 https://jsite.mhlw.go.jp/tochigi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/roukijou/roukihou_point/kijunhou_kaisetsu/article37.html
- 厚生労働省 高知労働局「健康確保・健康診断関係」 https://jsite.mhlw.go.jp/kochi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/hourei_seido/kenkou01.html
- 厚生労働省 石川労働局「通勤災害とは」 https://jsite.mhlw.go.jp/ishikawa-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/hourei_seido/kyufu/kyufu05.html
- 厚生労働省「深夜業の制限|育児休業制度特設サイト」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/midnightwork/
- 厚生労働省「『健康に配慮した飲酒に関するガイドライン』を公表します」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37908.html
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドラインについて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38541.html
- 厚生労働省「健康日本21(第二次)におけるアルコール対策」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-06-002.html

