先に結論を書きます。#9110は「事件にならないと警察は動かない」という思い込みを外すための番号です。 警察庁は#9110を「発信地を管轄する各都道府県警察本部等の総合窓口に直接つながります」と説明しています。つまりこれは緊急通報の簡易版でも、110番の待ち行列でもありません。別の部署につながる、別の入口です。
そしてもうひとつ。#9110は全国共通の番号ですが、受付時間は全国共通ではありません。 平日の日中だけ専門の相談員が出る県もあれば、24時間受け付けている県もあります。夜に働く人にとっては、この差がそのまま「かけられる/かけられない」を決めます。この記事は、そこを具体的な県名と時間で示すところから始めます。
料金や契約のもつれについては高額請求されたときの手順に、消費生活センター側の入口については消費生活センター(188)の記事に分けてあります。ここでは制度の総論を繰り返さず、#9110という一本の電話回線の中身だけを見ます。
なお以下は、公的資料で確認できた一般的な情報です。実際にどう扱われるかは個別の事情によって変わります。 「かければ必ずこうなる」と読める部分は、この記事にはありません。
この記事で分かること
- #9110をかけると、どこの、誰につながるのか
- #9110がつながらない電話回線があること、そのときにかける番号
- 受付時間が都道府県で違う実例(長野・石川・山形の三県を比較)
- 110番と#9110の分かれ目を、件数の実データで見る
- 全国の警察が年間何件の相談を受けているか、内訳は何か
- つきまとい・脅し・しつこい取立てが、それぞれどの条文に触れうるか
- 相談したあとに起きうること(記録・警告・禁止命令・援助・紹介)と、その限界
- 電話の前に用意しておくと話が早い五つ
- 消費生活センター(188)との役割分担
- #9110の外側にある専用窓口
#9110は「番号」というより「経路」
つながる先は、かけた場所で決まる
警察庁が公開している案内資料には、太字で一行こう書かれています。
発信地を管轄する各都道府県警察本部等の総合窓口に直接つながります。
ここで押さえるべきは「発信地」です。相談したい出来事がどこで起きたかではなく、いま電話をかけている場所を管轄する警察本部につながります。旅行先や出張先からかければ、その土地の警察本部に出ます。
だから、別の都道府県で起きた出来事について相談するときは、その前提を最初に伝えたほうが早いです。どの警察が扱うことになるかは、話の中で整理されます。公表されているのは「発信地基準でつながる」という接続の仕様までで、その先の割り振りは相談の内容によります。
「本部」につながる、という意味
もうひとつ見落とされやすいのが、つながるのが警察署ではなく警察本部等の総合窓口だという点です。石川県警察は自県の窓口を「警察安全相談窓口」と呼び、対応の中で「警察内の専門部署をご紹介する場合があります」と書いています。つまり#9110は、最初から専門家に当たる番号ではなく、専門部署への振り分けを含んだ入口として設計されています。
同じ資料は「なお、各警察署でも各種相談に応じています」とも書いています。警察署に直接行く道も、並行して開いています。 電話が苦手な人、資料が手元に多い人は、そちらのほうが向いていることもあります。
通話料は無料ではない
警視庁は#9110について「通常の電話料金がかかります」と明記しています。フリーダイヤルではありません。 短縮ダイヤルであって、無料通話サービスではない、という整理です。長電話になりそうなときは、この前提を頭に置いておくと落ち着いて話せます。
#9110がつながらない電話がある
これは意外と知られていません。警察庁の案内資料には、こう書かれています。
電話での相談には全国共通の短縮ダイヤル「#9110」番が便利です(携帯電話からも利用できます。)。ただし、ダイヤル回線及び一部のIP電話では利用できませんので下表の電話番号におかけ下さい。
ダイヤル回線と一部のIP電話からは、#9110は使えません。 石川県警察も、#9110が使えるのは「プッシュホン、携帯電話、PHS」で、すべての電話からかけるなら「076-225-9110」と、二つの番号を並べて案内しています。長野県警察も同様に、つながらない場合は警察本部代表電話(026-233-0110)を使うよう書いています。
直通番号は「9110」で終わるとは限らない
警察庁の一覧表を見ると、多くの県は末尾が9110の番号です。しかし例外がはっきりあります。
- 警視庁は 03-3501-0110
- 大阪府警察本部は 06-6941-0030
- 奈良県警察本部は 0742-23-1108
- 群馬県警察本部は 027-224-8080
- 福島県警察本部は 024-525-8055
「頭の市外局番だけ変えれば通じるはず」という当て推量は通用しません。 さらに北海道は、道警察本部(011-241-9110)のほかに函館・旭川・釧路・北見の各方面本部が別番号を持っています。自分の地域の直通番号は、事前に一度調べて控えておく価値があります。 スマートフォンの連絡先に「#9110」と直通番号の二つを登録しておけば、回線の種類で迷う場面がなくなります。
受付時間は全国共通ではない
ここが、夜の街で働く人にとって一番実務的な論点です。#9110は番号こそ全国共通ですが、応対体制は都道府県警察ごとに違います。 実際に三県を並べてみます。
| 県 | 公表されている受付時間 | 時間外の扱い |
|---|---|---|
| 長野県警察 | 平日(月曜日から金曜日)8時30分から17時15分まで | 緊急の事件・事故は110番へ |
| 石川県警察 | 平日 9時00分から17時45分まで | 土日祝・時間外で急を要する相談は076-225-0110へ |
| 山形県警察 | 年中無休で24時間受付。平日の執務時間中(8時30分から17時15分)は専門の相談員が対応 | 平日の執務時間外・土日祝は警察本部の当直員が対応 |
同じ#9110でも、始まりの時刻も終わりの時刻も、24時間かどうかも違います。 石川県は開始が9時、終了が17時45分で、長野県とはどちらもずれています。山形県は24時間受け付けたうえで、日中と夜間で出る人が変わるという構造を明示しています。
警察庁の案内資料も、全国の傾向としてこう書いています。
また、土日祝日及び夜間は、「当直」又は「音声案内」等により対応しています。
夜型の生活とどう噛み合わせるか
夜の仕事に就いている人は、平日の8時30分から17時15分がちょうど睡眠時間と重なることが多いはずです。この時間帯の噛み合わなさは、制度の側で解決してくれません。現実的な打ち手は三つあります。
- 自分の地域の受付時間を、先に一度だけ確認しておく。 24時間受付の県なら、夜でも当直員に話せます
- 緊急なら時間帯を問わず110番。 相談時間外だから我慢する、という判断は逆です
- 急がない相談は、起きた直後ではなく「日中にかけられる日」に予定として置く。 記録さえ残しておけば、数日後でも相談はできます
3番目のために必要なのが記録です。これは後半で具体的に書きます。
110番と#9110の分かれ目
数字で見る、二つの窓口の規模
令和6年版の警察白書には、110番についてこう書かれています。
令和5年中の110番通報受理件数(注1)は、約1,021万件であり、約3.1秒に1回、国民約12人に1人から通報を受理したことになる。
同じ白書は、警察庁の呼びかけをこう記しています。
警察では、110番通報の適切な利用の促進のため、事件・事故等の緊急の対応を必要とする場合にはためらわずに110番通報を利用する一方、緊急の対応を必要としない相談等の通報については「#(シャープ)9110」番や各種相談電話を利用するよう呼び掛けている。
一方、相談の側の数字は警察庁が別に公表しています。令和8年3月12日付の広報資料「令和7年における相談取扱状況について」によれば、令和7年中に全国の警察で取り扱った相談の件数は276万8,438件で、前年より10万8,738件(4.1%)増えました。
年が違うので単純な比較はできませんが、110番と相談窓口は、桁がひとつ違う規模でそれぞれ動いていることは分かります。相談が110番のおまけではなく、独立した業務量を持っているということです。
判断の基準は「いま人が来る必要があるか」
警視庁は110番について「警察官にすぐ現場に駆けつけてほしい事件や事故のときに110番をしてください」と書き、#9110については「犯罪や事故は発生していないけど、お困りごとや不安に思うこと」と書いています。
分かれ目は、深刻さでも金額でもありません。「いま、この場所に、警察官が来る必要があるか」です。
- 店の外で待ち伏せされていて、いま帰れない → 110番
- 先週から店の前で待たれている気がする → #9110
- 支払えと言われて出口をふさがれている → 110番
- 支払えという連絡が毎日来ていて怖い → #9110
そして重要なのは、迷ったら110番でよいということです。警察庁自身が「ためらわずに110番通報を利用する」と書いています。緊急かどうかの判定を、当事者が完璧にやる前提には立っていません。
何が相談として持ち込まれているのか
警察庁の広報資料は、相談の中身の内訳も公表しています。令和7年の主な相談内容は次のとおりです。
| 区分 | 令和7年の件数 |
|---|---|
| 犯罪等による被害防止 | 449,334件 |
| 刑事事件 | 441,907件 |
| 家庭・職場・近隣関係 | 281,726件 |
| サイバー関係 | 180,694件 |
| 迷惑行為 | 168,246件 |
| 上記5類型の計 | 1,521,907件 |
| 総件数 | 2,768,438件 |
資料はこの五つで「全体の約6割(55.0%)を占める」と書いています。トップが「犯罪等による被害防止」であることは、#9110の性格をよく表しています。 起きてしまった事件の届出ではなく、まだ起きていないことを起こさせないための相談が、いちばん多い。
推移も出ています。平成28年の2,023,615件から令和7年の2,768,438件まで、指数で137。相談件数は増え続けています。 これは治安の話というより、「相談してよい」という認識が広がった結果とも読めますが、資料自体は理由まで書いていないので、ここでは断定しません。
夜の街で起きやすい困りごとは、この表でいえば「犯罪等による被害防止」「家庭・職場・近隣関係」「迷惑行為」あたりに散らばります。自分の悩みに名前が付いていなくても、受け皿になる区分は用意されているということです。
つきまとい・脅し・取立て——条文はどこに触れるか
ここからは、夜の仕事や夜の街に関わる人が実際に持ち込みやすい三つの型を、条文と対応させて見ます。該当するかどうかの判断は個別の事情によります。以下は、話をするときの見取り図です。
型1:つきまとい
ストーカー行為等の規制等に関する法律の第3条は、見出しを「つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして不安を覚えさせることの禁止」として、こう定めています。
何人も、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない。
条文が禁じているのは「不安を覚えさせること」です。 相手が実際に何をしたかだけでなく、その結果として相手方が置かれた状態が要件に入っています。ここは相談の場で伝えるべき点です。「何をされたか」に加えて「その結果どう感じ、生活のどこが変わったか」を話す意味があります。
また、条文の見出しと本文には「位置情報無承諾取得等」という言葉が並んでいます。承諾なく位置情報を取得する行為も、この条の対象に入っています。 待ち伏せや尾行だけが「つきまとい」ではない、ということです。
型2:脅し・威迫
その場で身に危険が及ぶ状態なら110番です。ただ、まだ起きていない段階でも警察には権限があります。警察官職務執行法第5条は「犯罪の予防及び制止」として、こう定めています。
警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があつて、急を要する場合においては、その行為を制止することができる。
「まさに行われようとするのを認めたとき」という時点が条文に書かれていることに意味があります。予防は警察の仕事の範囲内です。警察法第2条第1項も、警察の責務を「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする」と定めていて、予防が捜査と並んで最初のほうに書かれています。
一方で同条第2項は「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて」とも定めています。何でも引き受ける窓口ではないという限界も、同じ条文の中にあります。店との金銭トラブルのうち、純粋に民事の話だけが残る部分については、後述の188側が担当になります。
型3:しつこい取立て
貸金業を営む者からの取立てには、貸金業法第21条(取立て行為の規制)が働きます。第1項の柱書はこうです。
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
続く各号には、内閣府令で定める時間帯に電話や訪問をすること(第1号)、債務者が連絡の時期を申し出たのに正当な理由なくそれ以外の時間帯に連絡すること(第2号)、正当な理由なく勤務先など居宅以外の場所に電話・訪問すること(第3号)などが並びます。
ただし、この条文の名宛人は「貸金業を営む者」とその委託先です。 店との売掛のように、貸金業者が関与しない金銭のやり取りに、この条文がそのまま当てはまるとは限りません。「取立ては全部違法」でも「民事だから警察は何もしない」でもなく、誰が、どういう資格で、どんな方法で連絡してきているかによります。 売掛そのものの仕組みは売掛(ツケ)の記事に、料金の争いの手順は高額請求の記事にあります。
今、時間がある人が並んでいます
今すぐ話し相手がほしいなら、待つ必要はありません。LOVETOK NOW は 「今、話せます」と出している人だけが並ぶ場所です。気になる人へその場で声をかけられます。
無料で新規会員登録18歳以上・年齢確認済みの方のみ利用できます
相談すると、何が起きるのか
「相談しても話を聞かれて終わりでは」と思う人は多いはずです。法律には、相談を受けた警察が取りうる手が具体的に書かれています。 ストーカー規制法を例に見ます。
記録として残る
まず、相談は件数として計上されます。前掲の広報資料が全国276万8,438件という数字を出せるのは、一件ずつ記録されているからです。「まだ何も起きていないが、こういうことがあった」という記録が、日付とともに残る。 これは後に事態が動いたときの土台になります。
警告(警察本部長等)
ストーカー規制法第4条第1項は、見出しを「警告」として、こう定めています。
警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長(以下「警察本部長等」という。)は、前条の規定に違反する行為があり、かつ、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、その相手方の申出により、又は職権で、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することができる。
注目すべきは「その相手方の申出により、又は職権で」という部分です。 申し出があれば動ける形が、条文にはっきり書かれています。
禁止命令等(都道府県公安委員会)
同法第5条第1項は「禁止命令等」として、こう定めています。
都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、第三条の規定に違反する行為があった場合において、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、その相手方の申出により、又は職権で、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項を命ずることができる。
警告を出すのは警察本部長等、禁止命令等を出すのは都道府県公安委員会と、主体が分かれています。同じ「警察に相談した」でも、その先の手続は複数あるということです。
自分で身を守るための援助
同法第7条第1項は「警察本部長等の援助等」として、こう定めています。
警察本部長等は、ストーカー行為等の相手方から当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該相手方に対し、当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための措置の教示その他国家公安委員会規則で定める必要な援助を行うものとする。
「自ら防止するための措置の教示」という言葉が入っています。相手を止める手続とは別に、自分の側の守り方を教えてもらうという援助の型が用意されている、ということです。
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律にも、同じ構造の条文があります。第8条の2は「警察本部長等の援助」として、被害を自ら防止するための援助の申出があり相当と認めるときは「当該被害を自ら防止するための措置の教示その他……必要な援助を行うものとする」と定めています。同法第8条は「警察官による被害の防止」として、警察官が「暴力の制止、被害者の保護その他の……被害の発生を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めています。
秘密の保持への配慮
ストーカー規制法第8条第1項は、保護や捜査に職務上関係のある者について、こう定めています。
ストーカー行為等に係る相手方の保護、捜査、裁判等に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、当該ストーカー行為等の相手方の安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならない。
「秘密の保持」が条文に書かれていることは、仕事や住まいを知られたくない立場の人にとって知っておく意味があります。とはいえ、どこまでどう扱われるかは個別の事情によります。心配な範囲は、相談の冒頭で自分から伝えるほうが確実です。
窓口の紹介
警視庁は#9110について「相談内容に応じて相談窓口等をご案内します」と書き、石川県警察は「警察内の専門部署をご紹介する場合があります」と書いています。紹介そのものが#9110の機能のひとつとして明示されています。「たらい回しにされた」と感じる場面もあるかもしれませんが、設計上は振り分けが役割に含まれています。
書いていないこと
念のために書きます。上の条文はいずれも「できる」「行うものとする」であって、「相談すれば必ずこうなる」ではありません。 警告も禁止命令等も、要件(違反行為があり、かつ更に反復するおそれがあると認めるとき)を満たすかどうかの判断が入ります。この記事は結果を保証しません。
電話の前に用意しておく五つ
相談の質は、手元にある材料でほとんど決まります。次の五つを、かける前に整理しておくと話が早くなります。
- 時系列 — いつ、どこで、何があったか。何回目か。「先月くらいから何度か」より「7月14日、20日、8月2日の3回」のほうが、反復のおそれの判断材料になります
- 相手を特定できる情報 — 名前(源氏名でも)、店名、連絡手段、車やバイクの特徴。分からない項目は「分からない」と正直に伝えます
- 記録の実物 — メッセージの画面、着信履歴、伝票、貼り紙。消さずに残しておく。スクリーンショットは日時が写る形で
- 自分がどうしたいか — 止めてほしいのか、記録を残したいのか、身の守り方を知りたいのか。前述のとおり、条文上も「相手方の申出」が起点のひとつです
- 自分の生活動線 — 帰宅時間、通勤経路、住まいと店の位置関係。相手が待てる場所を特定するための情報になります
長野県警察は「匿名での相談もお受けしていますので、一人で悩まず相談をお寄せください」と書いています。名乗るかどうかで迷って電話をかけないくらいなら、匿名で一度話すほうが前に進みます。 ただし、匿名では取りうる手が限られる場面もあるので、そこは相談の中で確認してください。
消費生活センター(188)との役割分担
ここが混同されやすいところです。#9110と188は、扱う問題の軸が違います。
消費者庁は消費者ホットライン188について、「地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口をご案内します」と説明し、あわせて「消費者庁につながるものではない」とはっきり注記しています。188は、#9110と同じく案内のための番号です。この点は両者に共通します。
違いは中身です。
| #9110(警察相談専用電話) | 188(消費者ホットライン) | |
|---|---|---|
| つながる先 | 発信地を管轄する警察本部等の総合窓口 | 地方公共団体の消費生活センター等 |
| 軸になる問題 | 身の安全、つきまとい、脅し、犯罪の未然防止 | 消費者と事業者の間の契約・料金 |
| 想定される出口 | 警告、禁止命令等、援助、専門部署の紹介 | 助言、あっせん、他機関の紹介 |
夜の街のトラブルは、この二つにまたがることがよくあります。 料金の話をしていたら怖い思いをした、というときに、どちらか一方を選ぶ必要はありません。契約と金額の筋は188、身の安全と迷惑行為の筋は#9110、いま危ないなら110番。 三つを同時に使ってかまいません。
188側の詳しい使い方は消費生活センターの記事に、料金トラブルの時系列の手順は高額請求の記事に分けて書いています。
#9110の外側にある窓口
#9110は総合窓口なので、内容によっては専用の番号のほうが早いことがあります。警視庁を例にとると、次のような窓口が別に用意されています。
| 窓口 | 番号 | 受付時間 |
|---|---|---|
| 性犯罪被害相談電話 | #8103(通話料無料) | 24時間受付 |
| 暴力ホットライン | 03-3580-2222 | 24時間受付 |
| ヤング・テレホン・コーナー | 03-3580-4970 | 24時間受付 |
| 犯罪被害者ホットライン | 03-3597-7830 | 平日8時30分〜17時15分 |
| サイバー犯罪相談窓口 | 03-5805-1731 | 平日8時30分〜17時15分 |
| 行方不明者相談 | 03-5281-0123 | 平日8時30分〜17時15分 |
注意点が二つあります。 ひとつは、番号も名称も都道府県警察ごとに違うこと(#8103のような全国共通番号は例外)。もうひとつは、24時間受付の窓口が複数あることです。#9110が時間外でも、内容によっては夜間に話せる先があります。自分の県の一覧を一度見ておくと、選択肢が増えます。
誤解されやすい四つの点
「#9110にかけると警察官が来る」ではない
来てほしいときの番号は110番です。#9110は相談を受け、必要に応じて振り分けるための窓口です。駆けつけを求める場面で#9110にかけると、遠回りになります。
「相談=被害届」ではない
相談は相談として記録されますが、それ自体が被害届や告訴ではありません。届出に進むかどうかは別の判断で、進めるかどうかも個別の事情によります。 逆に言えば、届出をする覚悟が固まっていなくても相談はできます。
「深刻でないと申し訳ない」ではない
令和7年の相談で最も多い区分は「犯罪等による被害防止」で449,334件でした。まだ起きていない段階の相談が、いちばん多い。 これは制度がその段階を想定して動いているということです。
「一度断られたら終わり」ではない
同じ話でも、状況が変われば扱いは変わりえます。回数、時間帯、相手の行動の変化は、条文上の「更に反復して当該行為をするおそれ」の判断に関わります。記録を続けることには意味があります。
よくある質問
Q1. #9110は無料ですか
無料ではありません。警視庁は#9110について「通常の電話料金がかかります」と書いています。短縮ダイヤルであることと、通話料がかからないことは別です。なお、警視庁の性犯罪被害相談電話#8103は「通話料無料」と案内されており、窓口ごとに扱いが違います。
Q2. 夜中でもかけられますか
都道府県によります。 山形県警察は「年中無休で24時間受け付けており」と書き、平日の執務時間中は専門の相談員、時間外や土日祝は警察本部の当直員が対応するとしています。一方、長野県警察は受付時間を平日8時30分から17時15分までと案内しています。警察庁の資料は全国の傾向として「土日祝日及び夜間は、『当直』又は『音声案内』等により対応しています」と書いています。自分の地域がどちらかは、事前に確認しておいてください。
Q3. 固定電話からかけたらつながりませんでした
警察庁の案内資料は「ダイヤル回線及び一部のIP電話では利用できません」と明記しています。この場合は、各都道府県警察本部の直通番号にかけます。番号は末尾が9110とは限らず、警視庁は03-3501-0110、大阪府警察本部は06-6941-0030、奈良県警察本部は0742-23-1108です。自分の地域の番号を控えておくのが確実です。
Q4. 旅行先や勤務地からかけると、地元の警察につながりますか
つながりません。警察庁は「発信地を管轄する各都道府県警察本部等の総合窓口に直接つながります」と書いています。基準は出来事の場所ではなく、電話をかけている場所です。 別の都道府県で起きたことを相談するときは、その前提を最初に伝えてください。
Q5. 匿名でも相談できますか
長野県警察は「匿名での相談もお受けしていますので、一人で悩まず相談をお寄せください」と案内しています。ただし取りうる手続の中には、相手方からの申出を要件とするものがあります(ストーカー規制法第4条・第5条・第7条)。匿名で始めて、必要になった段階で名乗るという進め方も含め、相談の中で確認するのが現実的です。
Q6. 電話が苦手です。ほかの方法はありますか
警察庁の案内資料は「なお、各警察署でも各種相談に応じています」と書いています。警察署の窓口に直接行く道があります。 資料が多いときや、経緯が複雑で口頭では説明しにくいときは、そのほうが伝わることもあります。
Q7. 店との金銭トラブルは#9110でいいですか
内容の切り分け次第です。 契約や料金そのものの争いは、消費生活センター(188)の担当範囲に近い話です。一方、支払いを求める過程で待ち伏せや威迫があるなら、それは#9110や110番の側の話になります。警察法第2条第2項が「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて」と定めているとおり、警察が民事の争いそのものを裁くわけではありません。両方の要素があるなら、両方の窓口を使ってください。
要点のまとめ
- #9110は緊急通報の簡易版ではなく、別の入口。 警察庁は「発信地を管轄する各都道府県警察本部等の総合窓口に直接つながります」と説明している
- つながる基準は出来事の場所ではなく、電話をかけている場所。旅行先からかければその土地の警察本部に出る
- ダイヤル回線と一部のIP電話からは使えない。 そのときは直通番号へ。末尾が9110とは限らず、警視庁は03-3501-0110、大阪は06-6941-0030、奈良は0742-23-1108
- 受付時間は全国共通ではない。 長野は平日8時30分〜17時15分、石川は平日9時〜17時45分、山形は24時間受付で日中は専門の相談員・時間外は当直員
- 通話料は無料ではない。 警視庁は「通常の電話料金がかかります」と明記
- 110番との分かれ目は「いま人が来る必要があるか」。 警察庁は緊急時は「ためらわずに110番」と呼び掛けている。迷ったら110番でよい
- 令和7年の相談取扱件数は全国で276万8,438件(前年比4.1%増)。最多区分は「犯罪等による被害防止」の449,334件で、まだ起きていない段階の相談がいちばん多い
- 相談後に取りうる手は条文にある。警告は警察本部長等(ストーカー規制法第4条)、禁止命令等は都道府県公安委員会(第5条)、自ら防止するための援助は第7条。 ただしいずれも要件があり、結果は保証されない
- 電話の前に五つを整理する——時系列、相手の特定情報、記録の実物、自分の希望、生活動線
- 188とは軸が違う。 契約と料金は188、身の安全と迷惑行為は#9110、いま危ないなら110番。またがるなら全部使ってよい
- #9110の外側に24時間の専用窓口がある。 警視庁なら#8103(通話料無料)や暴力ホットラインなど。番号は都道府県で異なる
夜の街の困りごとは、「事件」と呼ぶには小さく、「気のせい」と流すには重い、その中間の帯に集まります。#9110は、まさにその帯のために置かれた番号です。 制度の側は、まだ何も起きていない段階の相談を最も多く受けている。この記事の数字が示しているのは、そういう事実です。
これから会って話す相手を探すなら、やり取りの記録が自分の手元に残る形を選んでおくと、後から振り返るときに困りません。LOVETOK NOW は「今、話せます」と待機している人だけが並び、マッチングを待たずにその場でチャットを始められるサービスです(20歳以上・年齢確認あり)。地域ごとの様子は地域から探すページにまとめています。
参考情報
- 警察庁「警察相談専用電話『#9110』」(都道府県警察本部相談窓口電話番号一覧)https://www.npa.go.jp/bureau/soumu/soudan/soudanmadoguti.pdf
- 警察庁「相談の取扱い等」https://www.npa.go.jp/bureau/soumu/soudan/index.html
- 警察庁長官官房企画課「令和7年における相談取扱状況について」(令和8年3月12日 広報資料)https://www.npa.go.jp/bureau/soumu/soudan/r07_soudan.pdf
- 警察庁「ご意見、各種相談・情報提供等」https://www.npa.go.jp/goiken_index.html
- 令和6年版警察白書「第2項 事件・事故への即応」(110番通報受理件数)https://www.npa.go.jp/hakusyo/r06/honbun/html/aa2232000.html
- 警視庁「警察相談ダイヤル#9110」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/jiken_jiko/110/110_9110.html
- 警視庁「こんなときこそ110番」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/jiken_jiko/110/110_110.html
- 警視庁「相談ホットラインのご案内」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/madoguchi/sogo.html
- 長野県警察「警察の相談ダイヤル#9110」https://www.pref.nagano.lg.jp/police/soudan/seian/9110.html
- 石川県警察「電話で相談する」https://www2.police.pref.ishikawa.lg.jp/inquiry/inquiry02/inquiry04.html
- 山形県警察「警察相談専用電話、#9110」https://www.pref.yamagata.jp/800053/kensei/police/jouhouteikyou/9110.html
- 消費者庁「消費者ホットライン」https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
- e-Gov法令検索「警察法」(第2条)https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000162
- e-Gov法令検索「警察官職務執行法」(第5条)https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000136
- e-Gov法令検索「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(第3条・第4条・第5条・第7条・第8条)https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0100000081
- e-Gov法令検索「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(第8条・第8条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0100000031
- e-Gov法令検索「貸金業法」(第21条)https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032

