結論から書きます。「本営」は「本命営業」あるいは「本カノ営業」の略とされる業界内の俗称で、客に「自分はこの人にとって本命の恋人だ」と認識させたうえで来店と注文につなげていく営業の呼び名です。法令にこの言葉はありません。
そして、この記事で主役にしたいのはその先です。本営という言葉が指しているのは、接客の技術ではなく「客の側の認識」です。そして2025年に施行された改正風営法と、消費者契約法のいわゆるデート商法規定は、どちらも「客が誤信していることを知りながら」という一文を要件に置いています。 つまり法律は、営業スタイルの名前ではなく、まさに本営という語が名指ししている「認識のずれ」を見ています。
もうひとつ、業界の側の事実があります。業界の用語集は「本営」と「本カノ」を別の言葉として区別しています。 前者は営業、後者は私生活の交際相手。ところが消費者庁は、ホスト側が「恋人間の個人的なやり取りだ」と主張していても結論は変わらないと明記しています。業界が自分で引いている線を、法律は見ていない。 この対比が、本営という言葉を理解するうえでいちばん実用的な補助線になります。
営業スタイルの全体像や、友営との比較は友営・色恋・本営の違いの記事、色恋営業そのものの構造は色恋営業の記事にあります。ここでは「本営」という一語に絞ります。
この記事で分かること
- 「本営」という語の作り——何の略で、どこで使われているか
- 定義が一つに定まっていないこと(略元も、色恋との関係の説明も食い違う)
- 業界の用語集が「本営」と「本カノ」をどう区別しているか
- その区別が、法律の評価を変えないと明記されていること(消費者庁の周知文)
- 改正風営法第18条の3第2号と消費者契約法第4条第3項第6号が共有している「誤信」という要件
- 「本営=違法」ではない理由と、罰則が付く行為との段差
- 公的資料に記録されている、関係が問題化していく経路と実際の数字
- 名前ではなく何を確認すればよいか、どこに相談できるか
なお、この記事の用語の説明は業界向けメディアを複数読み比べた整理であり、店舗・地域・個人によって使い方は異なります。法令の部分は条文と警察庁・消費者庁・自治体の公表資料で確認しています。法律の一般的な情報であり、個別の事案の結論は事情によって変わります。
「本営」という語の作り
何の略なのか——二つの説明が併存している
まず語源からです。ここが既に一つに定まっていません。
キャバクラ求人サイトの用語集は「本営とは、本命営業の略です」と書き、水商売用語集も同じく「本命営業」の略としています。一方、ホスト求人メディアの用語解説は「本カノ営業」を見出しに立てたうえで「略して『本営』とも呼ばれます」と説明し、別のホスト求人サイトも「本カノ営業」とも呼ばれるとしています。
つまり「本営」は、「本命営業」の略として説明されることも、「本カノ営業」の略として説明されることもあります。 どちらが正しいという話ではなく、業界内で自然発生した略語なので、元の語形が複数残っているのだと読むのが素直です。実際に会話で使われるのはほぼ「ほんえい」という音だけで、書き言葉としての正解を業界が決めた形跡はありません。
ホストクラブの外でも使われる
「本営」はホストクラブの文脈で語られることが多い言葉ですが、それ専用の語ではありません。キャバクラ求人サイトの用語集にも、ガールズバー・コンカフェ向けの用語集にも項目があり、女性が接客する側の営業スタイルとしても同じ語が使われています。男性客を本命の恋人として扱う形は「本カレ営業」と呼ばれることもあります。
風営法上、ホストクラブもキャバクラもスナックも同じ第2条第1項第1号の営業(設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業)に含まれます。後述する条文が「接客従業者」「客」という性別を含まない言葉で書かれているのも、この枠組みに対応しています。本営を「ホストの話」として読むと、条文の射程を読み違えます。
定義が指しているのは行為ではなく「認識」
各用語集の書き方を並べると、共通しているのは動作ではなく状態の説明だという点です。
- 「実際にお客様と付き合っているかのように接する営業スタイル」(キャバクラ用語集)
- 「客に『自分が本命の恋人だ』と思い込ませることで、来店頻度と支出を継続・拡大させる営業手法」(水商売用語集)
- 「お客様を本命の彼女だと思わせる営業スタイル」(ホスト求人メディア)
- 「姫様を本物の彼女のように扱い、その気持ちを信じ込ませる営業方法」(ホスト求人サイト)
「思わせる」「思い込ませる」「信じ込ませる」——主語は接客する側ですが、結果が生じる場所は客の頭の中です。 ここが本営という語の核心で、「何をするか」ではなく「相手に何をどう認識させるか」で定義されています。この記事の後半で条文を見ると、法律もまったく同じ場所を見ていることが分かります。
色恋との関係も、説明が割れている
水商売用語集は本営を「色恋営業の最も踏み込んだ一段階」と位置づけ、色恋営業 ⊃ 本営という包含関係で説明し、判別の基準を「本命の彼女(彼氏)として扱われている事実があるか」としています。ホスト求人メディアも「擬似恋愛を提供する『色恋営業』をさらに発展させたもの」と書きます。一方で、営業スタイルを列挙する記事では色恋営業と本カノ営業を並列の別項目として並べているものもあります。
区別の目安としてしばしば挙げられるのは、店の外をどこまで含むかです。ある用語集は、本営の特徴として店内だけでなく「デートや私的な連絡、自宅への招待などで『本当に付き合っている感』を演出」する点を挙げています。別の解説は、本営の特徴として①店休日にデートや電話など恋人のような扱いをすること、②「彼女である」と明言せず行動で示すこと、③重要なイベントや締め日に来店を求められることの三つを挙げています。
この三つ目の要素——関係の中に「来店してほしい日」が組み込まれること——が、私生活の交際と決定的に違う点です。 用語集自身が、本営の本質を「恋愛そのものではなく売上を目的とした演出である」と書いています。
業界が引いている線——「本営」と「本カノ」
用語集は両者を別項目にしている
ここが本営という語を扱ううえで見落とせない部分です。業界には「本カノ」という別の言葉があり、ホスト求人サイトの用語解説では、本カノは「ホストがプライベートで実際に交際している本当の彼女」を指し、営業や売上に影響するため非公開で、従業員のみが存在を知るのが一般的だとされています。
つまり業界は、「営業としての本命扱い(本営)」と「実際の交際相手(本カノ)」を、はっきり別の語に分けているわけです。同じサイトは、本営は「お店での関係・指名やイベント参加を依頼」する関係、本カノは「プライベートな時間を共有する関係」だと整理しています。
見分け方として語られるのは「お金の向き」
別の解説サイトは、本カノと本営の見分け方として、本カノはプライベートで客側が金銭を負担しない(相手が負担する)のに対し、本営は客が支払いを負担している傾向がある、という点を挙げています。
これは、業界の側から見ても「本営かどうか」を分けているのが感情の真偽ではなくお金の流れの向きだ、ということを意味します。気持ちが本物かどうかは外からは確かめようがありませんが、誰が誰に払っているかは記録に残る事実です。この点は、後で「何を確認するか」を考えるときにそのまま使えます。
そして、その線は法律の評価を変えない
業界がこれだけ丁寧に線を引いている一方で、公的な文書ははっきり別のことを言っています。
消費者庁が令和5年11月30日付で出した「ホストクラブなどにおける不当な勧誘と消費者契約法の適用について(周知)」には、次の一文があります。仮にホストが恋人間の個人的なやり取り(売掛金の立替えなど)だと主張している場合でも、ホストが同法上の事業者に該当する場合で、同法の要件に該当する不当な勧誘をしていれば、その契約は取り消すことができる。
「これは営業ではなく個人的な関係だ」という説明が、そのまま法的な結論になるわけではない、と国が明記しているということです。 本営と本カノを分ける業界内の線引きは、業界の内側では意味を持ちますが、契約の効力を判断する場面では前提として採用されません。本営という語について書ける中で、これがいちばん実務的な事実だと思います。
条文が置いた「誤信していることを知りながら」
改正風営法第18条の3第2号
2025年(令和7年)5月に風営法の改正法が成立・公布され、警察庁の説明によれば令和7年11月28日までに全ての規定が施行されました。接待飲食等営業に関する規定は令和7年6月に施行されています。
このとき新設された第18条の3(客の正常な判断を著しく阻害する行為の規制)の第2号は、条文としてこう書かれています。
客が、接客従業者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該接客従業者も当該客に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、次に掲げる行為により当該客を困惑させ、それによつて遊興又は飲食をさせること。
続けて、困惑させる行為の中身がイ・ロの二つに限定されています。イは「当該客が遊興又は飲食をしなければ当該接客従業者との関係が破綻することになる旨を告げること」、ロは「当該接客従業者がその意に反して受ける降格、配置転換その他の業務上の不利益を回避するためには、当該客が遊興又は飲食をすることが必要不可欠である旨を告げること」です。
注目したいのは「誤信していることを知りながら」という部分です。 条文が問題にしているのは、好意を持たれていることでも、恋愛感情を前提にした接客でもありません。「相手も自分と同じ気持ちだ」と客が思い込んでいて、そのことを接客する側が分かっていた——この認識の非対称が要件に組み込まれています。
本営という語は、まさにこの状態を作ることを名前にしています。だから本営は、この条文の要件と最も近いところに位置する呼び名になります。
それでも「本営=違法」ではない
ただし、条文を分解すると成立には少なくとも六つの要素が全部必要だと分かります。①客が好意の感情を抱いていること、②相手も同じ感情を抱いていると客が誤信していること、③その誤信を知っていること、④それに乗じたこと、⑤イまたはロを告げたこと、⑥それにより困惑させ、遊興・飲食をさせたこと。
⑤が抜ければ成立しません。 業界向けの解説の中には「改正風営適正化法により色恋営業は禁止になりました」と要約しているものもありますが、条文はそう書かれていません。禁じられたのは、誤信に乗じて「注文しないと関係が終わる」「注文がないと自分が降格する」と告げて困惑させ、注文させる、という具体的な言動です。
警察庁の悪質ホストクラブ対策検討会の最終報告書には、この設計の理由がそのまま残っています。委員から「恋愛感情に付け込んで女性を依存させる行為を規制する場合、恋愛の自由との関係で、規制の必要性、合理性、規制を裏付ける立法事実がないと憲法との関係で問題がある」という指摘が出され、「恋愛の自由それ自体を規制するのではなく、恋愛に絡む悪質な行為に着目した形の規制にする必要がある」とまとめられました。
罰則が付くのはもう一段先
第18条の3は遵守事項であり、直接の刑罰は定められていません。違反した場合は、第25条により公安委員会が必要な指示をすることができ、第26条により許可の取消し、または6月を超えない範囲での営業の全部・一部停止を命ずることができます。効くのは、個人ではなく店に対する行政処分です。
罰則付きで禁止されたのは第22条の2で、客に注文や料金の支払等をさせる目的で威迫して困惑させる行為(第1号)と、威迫し又は誘惑して、料金の支払等のために売春防止法その他の法令に違反する行為や性風俗店での稼働等により金銭を得ることを要求する行為(第2号)です。第53条により、6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科とされています。
警察庁が公表している検挙事例には、支払をさせる目的でSNSに「お前舐めすぎやろ」等のメッセージを送って威迫し困惑させたとして逮捕された事例、SNSで「がんばって今日3万いこう」「応援してるだいすき」等を送信して誘惑し、支払のために売春により金銭を得ることを要求したとして逮捕された事例が挙げられています。後者は、好意を伝える言葉と支払の要求が同じメッセージの中に入っている例です。 言葉づかいが柔らかいことは、条文の判断とは無関係だと分かります。
消費者契約法の側から見た本営
第4条第3項第6号の要件
風営法は営業を取り締まる法律なので、払ったお金が戻るかどうかは別の枠組みになります。そこで関係するのが消費者契約法第4条第3項第6号、いわゆるデート商法の規定です。条文の要件は次のとおりです。
消費者が、①社会生活上の経験が乏しいことから、②勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ③相手も同様の感情を抱いていると誤信していることを、④勧誘者が知りながら、⑤これに乗じ、⑥契約を締結しなければ関係が破綻することになる旨を告げ、⑦それにより消費者が困惑して申込み等をしたとき。
風営法第18条の3第2号とほぼ同じ構造です。 違いは、消費者契約法のほうには「社会生活上の経験が乏しいこと」が要件として入っていること、そして効果が行政処分ではなく契約の取消しであることです。消費者庁の周知文は、ホストクラブなどにおける飲食などの契約も消費者契約法上の消費者契約に当たり得ると説明しています。
民事ルールであることと、期間の制限
同じ周知文は、消費者契約法が民事ルールであることから、客である当事者が取消しを主張したうえで当事者間で解決する必要があり、最終的には個別具体的な事案に即して司法の場で判断されると明記しています。自動的に無効になるわけではありません。
さらに、取消権は消費者契約法第7条により、追認をすることができる時から1年間行わないと時効で消滅し、契約の締結の時から5年を経過したときも同様とされています。関係が続いている間は「取り消す」という発想自体が出てきにくいのが本営の難しさですが、期間の制限は関係の状況と関係なく進みます。
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公的資料が記録している、問題化までの経路
本営という言葉そのものは公的資料に出てきません。ただし、そこで起きうることの経路は、かなり具体的に記録されています。
出会いが店の外から始まる
警察庁の検討会の報告書には、若い女性がSNSやマッチングアプリをきっかけに店に入ってくることが問題として挙げられ、これらは「店が関与しない一個人としてのホストとの出会いの場」であること、そして「ホストが営業の目的を秘して近づくという行為は問題である」という意見が記録されています。
東京都消費生活総合センターが令和5年12月から令和6年3月にかけて実施した「悪質ホストクラブ等被害特別相談」の結果でも、受付87件のうちマッチングアプリを契機にホストと知り合った相談者が約16%、当事者の平均年齢は28.6歳、契約金額は平均で500万円を超えていたとされています。相談事例には「マッチングアプリで知り合った男性からホストだと打ち明けられ、ホストクラブに連れていかれた」(20歳代女性)、「同棲中のホストからホストクラブでお金を使うよう強要され」(10歳代女性)といったものが挙げられています。
関係が先にあって、店が後から出てくる。 本営という語が想定している状態は、店内だけで完結しない——という業界側の説明と、公的資料に残る経路は、ここで一致します。
支払いが先送りされ、名前が変わる
報告書は、初回に安い料金をうたって来店させ、社会経験の乏しさや担当ホストに対する恋愛感情等に付け込んで高額な注文をさせ、多額の借金を負わせる手法が「確立している」と書いています。そして、自主的に売掛金の禁止を宣言した店でも、呼称を「売掛金」から「立替金」等に変更したにすぎず実質的な改善が見られないという指摘があったことも記録しています。
呼び名の変更が実態を変えないという指摘は、「本営」と「本カノ」の言い換えについても同じ構造です。 東京都の相談事例にも、最初は少額だったが「ツケで支払いできる」と言われて高額化していったという傾向が示されています。
規模の目安
数字も公表されています。厚生労働省によれば、女性相談支援センターでは悪質ホストクラブ等に関する相談を月に30件前後受理しています。全国警察におけるホストクラブ関係の相談受理件数は、令和3年2,044件、令和4年2,089件、令和5年2,362件、令和6年は10月末現在で2,675件と推移しました。悪質ホストクラブに係る検挙事件は令和5年1月から令和6年6月までで83事件、検挙人員は203人で、うちホストが90人、その他ホストクラブ関係者が64人とされています。
これらは業界全体の姿ではなく、問題として顕在化した部分の数字です。規模を測るためではなく、「起きるときはこの経路で起きる」という参照点として読むのが適切だと思います。
働く側から見た「本営」
業界メディア自身が警告していること
意外に思われるかもしれませんが、本営に対して最も率直な注意を書いているのは業界向けの求人サイトです。キャバクラ求人サイトの用語集は、本営を「お客様との関係を維持するのが難しいかつ、嘘だと判明した際に大きな問題に発展する可能性も秘めている営業スタイル」と説明し、「無暗に取り入れないよう注意してください」と書いています。
ホスト求人メディアの解説も、本営はオンリーワンとして扱う営業なのでターゲットを絞るのが得策で、複数の客に同時に行うには高度なテクニックが必要だとしています。同じ解説は、営業として始まっても時間の経過で実際の感情に変わることもあるとも書いています。
「唯一である」という前提は、維持のコストが構造的に上がり続けます。 そして前提が崩れたときの落差も、他の関係の作り方より大きくなります。これは道徳の話ではなく、設計上そうなるという話です。
責任は個人で完結しない
風営法の遵守事項・禁止行為は、店を規律する条文として書かれています。検討会の報告書にも、従業員等が遵守事項や禁止行為に該当する行為を行った場合には営業者に対して指示処分や営業停止命令等の行政処分を行うことができることを念頭に置く、と記されています。誰の判断で始めた営業であっても、結果は店の責任として跳ね返る設計です。
また、報告書には個人事業主として働くホストにも遵法意識の向上のための講習を受講させられないか、という意見や、ホストの雇用関係やフリーランス新法に関する論点も記録されています。働き方の形にかかわらず、法令の線が個人に及ばないわけではありません。
なお第18条の2は、接待飲食等営業を営む風俗営業者が、接客従業者に対し、辞めた場合には直ちに残存する債務を完済することを条件として支払能力に照らし不相当に高額の債務を負担させることや、そうした従業者の旅券等を保管し・第三者に保管させることを禁じています。線は客に向けてだけでなく、働く側を守る向きにも引かれています。
名前ではなく、事実を確認する
本営かどうかを当てにいく作業には、実益がほとんどありません。定義は割れ、境目は書き手によって違い、当てられたところで会計も法的評価も変わらないからです。代わりに確認できる事実を挙げます。
客側として確認できること。
- 料金表が営業所内で見やすいように表示されているか(風営法第17条は所定の料金の表示を義務づけています)
- 会計の内訳が示され、口頭の説明と一致しているか
- 自分が注文の意思表示をしていない飲食物が出ていないか(第18条の3第3号に関わります)
- 「今日入れてくれないと関係が終わる」「入れてくれないと自分が降格する」という趣旨の話が出ていないか
- 支払を先送りする話が出たとき、名目が売掛でも立替でも、誰の誰に対する債務なのかが説明されているか
- 店の外での支出も含めて、お金がどちらからどちらへ動いているか
働く側として確認できること。
- 関係の呼び名が、料金や支払の説明の代わりに使われていないか
- 客の勤務先・収入・借入といった情報を、必要な範囲を超えて共有していないか(報告書でも、関係者間で女性客の個人情報が共有され活用されている点が問題として挙げられています)
- 店の指示であっても、条文の言葉(関係の破綻、自分の不利益)に該当する告知になっていないか
相談できるところ
消費者庁の周知文と警察庁の資料に記載のある窓口です。いずれも一般的な案内で、適切な窓口は事情によって変わります。
- 消費生活センター/消費者ホットライン 188——契約の取消しが可能かどうかなど消費者トラブルの相談
- 日本司法支援センター(法テラス)0570-078374——売掛金に係る契約等の取消しの手続など法的トラブルの相談
- 都道府県警察/警察相談専用電話 #9110——売春等を強要されている、追われているなどの犯罪被害の相談
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター #8891
- 女性相談支援センター #8778——どこに相談してよいか分からない場合、一時保護や福祉的支援が必要な場合
よくある質問
Q1. 「本営」は何の略ですか。 説明が二通りあります。キャバクラ用語集や水商売用語集は「本命営業」の略とし、ホスト向けの求人メディアは「本カノ営業」の略(本カノ営業を略して本営とも呼ぶ)としています。業界内で自然発生した略語なので、公的に定まった語形はありません。
Q2. 本営と色恋営業はどう違うのですか。 統一された基準はありません。水商売用語集は本営を色恋営業の最も踏み込んだ一段階と位置づけ(色恋営業 ⊃ 本営)、判別の基準を「本命の彼女(彼氏)として扱われている事実があるか」としています。一方、営業スタイルを列挙する記事では両者を並列の別項目にしているものもあります。詳しくは友営・色恋・本営の違いの記事で扱っています。
Q3. 本営は違法になったのですか。 「本営」という名前の営業が丸ごと違法になったわけではありません。改正風営法第18条の3第2号が禁じたのは、客が相手も同じ感情を抱いていると誤信していることを知りながら、それに乗じて「注文しなければ関係が破綻する」「自分が降格する」と告げて困惑させ、遊興・飲食をさせる行為です。この告知がなければ条文の対象になりません。
Q4. 相手が「これは営業ではなく本当の交際だ」と言っています。 業界の用語集も、営業としての本営と、私生活の交際相手である本カノを別の言葉として区別しています。ただし消費者庁は、ホストが恋人間の個人的なやり取り(売掛金の立替えなど)だと主張している場合でも、消費者契約法上の事業者に該当し要件に当たる不当な勧誘をしていれば契約は取り消せる、と明記しています。主張の内容が結論を決めるわけではありません。
Q5. 本営はホストクラブだけの言葉ですか。 いいえ。キャバクラ用語集にもガールズバー・コンカフェ向けの用語集にも項目があります。男性客を本命として扱う形は「本カレ営業」と呼ばれることもあります。風営法上、ホストクラブもキャバクラもスナックも同じ第2条第1項第1号の営業に含まれ、第18条の3も「接客従業者」「客」という性別を含まない書き方をしています。
Q6. 支払ってしまったお金は取り戻せますか。 消費者庁は、消費者契約法の要件に該当する不当な勧誘によって締結した契約は取り消せる可能性があると周知しています。ただし民事ルールなので、当事者が取消しを主張したうえで解決する必要があり、最終的には司法の場で個別に判断されます。また第7条により、追認をすることができる時から1年、契約の締結の時から5年で取消権は時効消滅します。早めに188や法テラスに相談してください。
Q7. 本営をされているかどうか、見分けられますか。 気持ちの真偽を外から確かめる方法はありません。業界向けの解説が見分け方として挙げているのも感情ではなく、お金の向き(本カノは客側が負担しない、本営は客が負担している傾向がある)という事実の話です。確認しやすいのは、料金表示・会計の内訳・注文の意思表示・支払を先送りする話の中身のほうです。
Q8. 本営を続けることは、働く側にとってリスクがありますか。 業界向けの求人サイト自身が、関係の維持が難しく、嘘だと判明したときに大きな問題に発展する可能性があるとして注意を促しています。加えて、従業員の行為が遵守事項や禁止行為に当たれば、営業者に対して指示処分や営業停止命令等の行政処分が行われうる設計です。個人の裁量の話として完結しません。
まとめ
- 「本営」は「本命営業」または「本カノ営業」の略とされる業界内の俗称で、公的な定義はない。略元の説明も、色恋との関係の説明も、媒体によって食い違う
- 各用語集の定義に共通するのは「思わせる」「思い込ませる」という書き方で、指しているのは接客の技術ではなく客の側の認識
- 業界は「本営(営業)」と「本カノ(私生活の交際相手)」を別の語として区別し、見分け方として金銭負担の向きを挙げている
- 一方、消費者庁は、ホスト側が恋人間の個人的なやり取り(売掛金の立替えなど)だと主張していても、事業者に該当し要件に当たる不当な勧誘があれば契約は取り消せると明記している
- 改正風営法第18条の3第2号と消費者契約法第4条第3項第6号は、どちらも「相手も同じ感情を抱いていると誤信していることを知りながら」を要件に置いている。法律が見ているのは、スタイルの名前ではなくこの認識のずれ
- ただし成立には「関係が破綻する」「自分が不利益を受ける」と告げて困惑させたことまで必要で、「本営=違法」ではない。第18条の3は罰則のない遵守事項で、効くのは第25条・第26条の行政処分。罰則があるのは第22条の2(威迫・有害業務の要求)で、第53条により6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金
- 公的資料には、出会いが店の外(SNS・マッチングアプリ)から始まること、支払の先送りが売掛から立替へと名前を変えても実態が変わらないことが記録されている。東京都の特別相談では受付87件・平均年齢28.6歳・契約金額は平均500万円超・マッチングアプリ契機が約16%
- 呼び名を判定するより、料金表示・会計の内訳・注文の意思表示・支払を先送りする話・お金の向きという事実を確認するほうが実益がある
法令に関する記述は一般的な情報であり、個別の事案の結論は事情によって異なります。用語の説明は業界向けメディアを読み比べた整理で、店舗・地域・個人によって使い方は異なります。
関係の呼び名がこれだけ複雑になるのは、そこに来店と支払いの設計が組み込まれているからです。逆に、いま少し誰かと話したいだけなら、料金も指名も関係の名づけも介在しない手段があります。LOVETOK NOWは「今、話せます」と待機している人だけが一覧に並び、マッチングを待たずにその場でチャットを始められるサービスです(20歳以上・年齢確認あり)。地域ごとの話は出会いガイドにまとめています。
参考情報
- 悪質ホストクラブ対策について|警察庁
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律(概要)|警察庁
- 悪質ホストクラブ対策検討会 最終報告書|警察庁
- 悪質ホストクラブ等の検挙事例|警察庁
- ホストクラブなどにおける不当な勧誘と消費者契約法の適用について(周知)|消費者庁
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律|e-Gov法令検索
- 消費者契約法|e-Gov法令検索
- 「悪質ホストクラブ等被害特別相談」の実施結果|東京くらしWEB(東京都)
- 悪質なホストクラブやコンカフェ等の高額請求に気をつけましょう|東京くらしWEB(東京都)
- 悪質ホストクラブ対策等に関する風営法改正について|大阪府警察
- 本営とは|キャバクラ用語集 体入ドットコム
- 本営|水商売用語集 夜レジ
- ホスト業界の必須用語「本営」と「本カノ」とは|ホスリク
- 【ホスト用語】本カノ営業(ほんかのえいぎょう)|ホストワーク
- ホストの本営とは?特徴や本カノとの見分け方も徹底解説|W-terrace

