ぼったくりの相談先はどこ?防止条例がある地域とない地域で変わる手順

最終更新:2026-08-28

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結論から書きます。「ぼったくり防止条例」という名前の法律は、どこにも存在しません。これは通称です。正式名称も、対象になる店も、罰則が付く範囲も、自治体ごとに違います。だから「ぼったくりは条例違反だから警察に言えばいい」という一般論は、そのままでは使えません。まず自分がいた場所に条例があるのか、あるとして対象に入る業態なのかで、次の一手が変わります。

そしてもう一つ、先に書いておきたいことがあります。条例は、お金を返してもらうための制度ではありません。 条例が動かすのは、公安委員会による指示・営業停止命令・公表、そして刑事罰です。支払ってしまった金銭を取り戻す話は、まったく別のルート(民事)で動きます。ここを混同すると、「通報したのに一円も戻ってこない」という失望が生まれます。

この記事は、条例そのものを主役にします。会計トラブルが起きた直後の動き方は高額請求されたときの手順の記事に、契約の取消しを主張できる場面は夜のお店の会計は取り消せるかの記事にあります。ここでは重複を避け、条例の条文が実際に何を禁じていて、どこまで届き、どこで止まるのかだけを掘ります。

なお以下は法律・相談制度の一般的な情報です。ある請求が違法かどうか、どの規定が適用されるかは、営業の種別・所在地・個別の事情によって変わります。 条例は改正されますし、条番号も自治体ごとに違います。実際の判断は、最新の例規集と、末尾に挙げた公的な相談窓口・弁護士に確認してください。

この記事で分かること

  • 「ぼったくり防止条例」が通称であること、正式名称が自治体ごとに違うこと
  • 東京都の条例は名前に反してバー・酒場も対象に入れているという定義条文の中身
  • 大阪府・愛知県・広島県・北海道で、対象になる営業と区域がどう違うか
  • 愛知県では表示義務は県内全域だが、罰則が付くのは特別区域内だけという構造
  • 条例が禁じている三つの柱(表示・勧誘・取立て)と、そこに「違約金」が入っている意味
  • 「何人も」という主語が、店の人以外にも規制を及ぼしていること
  • 条例が動いたときに起きること(指示・営業停止・公表)と、起きないこと(返金)
  • 自分の都道府県に条例があるかを、例規集で調べる手順
  • 条例のない地域で代わりに使えるルート
  • その場で残しておくと条例の適用判断が変わる記録
  • 条例違反として相談するときに整理しておく五項目と、よくある三つの誤解

「ぼったくり防止条例」は正式名称ではない

通称と、条例そのもののずれ

報道や解説で「ぼったくり防止条例」と呼ばれているものは、いずれも別の名前を持っています。たとえば東京都のそれは、「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」(平成12年東京都条例第196号)です。大阪府は「大阪府酒類提供等営業に係る不当な勧誘及び料金の不当な取立ての防止に関する条例」(平成13年大阪府条例第9号)。愛知県は「酒類提供等営業に係る不当な勧誘、料金の不当な取立て等の規制等に関する条例」(平成29年愛知県条例第1号)。

名前が違うだけなら大した問題ではありません。問題は、名前から対象が読み取れないことです。

東京都の条例は「性風俗営業等」の中にバー・酒場を入れている

東京都の条例名には「性風俗営業等」としか書かれていません。これを見て「自分が行ったのは普通の飲み屋だから関係ない」と考える人がいますが、条文を開くと違います。

第2条は、この条例でいう「性風俗営業等」を三つ挙げています。第1号が営業所で異性の客の性的好奇心に応じて接触する役務を提供する営業、第2号がその派遣型。そして第3号が、

営業所を設けて、当該営業所において客の接待……をして客に飲食をさせる営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業

です。接待をして酒を出す店が、条例上の定義語である「性風俗営業等」の中に、はっきり書き込まれています。 つまりキャバクラやホストクラブ、接待を伴うスナックも、この条例の射程に入り得ます。

ただし全都一律ではありません。第2条は、被害の発生状況等を勘案して公安委員会が指定した区域内で営まれるものを「指定性風俗営業等」と位置づけており、規制はそこにかかります。同じ都内でも、指定区域かどうかで結論が変わるということです。

北海道もほぼ同じ設計

北海道の「北海道性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例」(平成13年北海道条例第44号、平成13年9月1日施行)も同型です。第2条は「性風俗営業等」を二つに分け、第2号を次のように定めています。

営業所を設けて、当該営業所において客の接待(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第3項に規定する接待をいう。)をして客に飲食させる営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営むもの

東京都と違い、派遣型の類型がありません。東京都は三類型、北海道は二類型。 似ているようで、条文を並べると差があります。そして北海道も「指定区域」内のものだけが対象です。第13条は、指定区域を管轄する警察署長に広報啓発活動を行うものと定めており、区域指定と現場の周知が結びついた作りになっています。

対象になる営業が、自治体でここまで違う

大阪府——接待がなくても入る

大阪府の条例は、名前のとおり「酒類提供等営業」を対象にします。第2条第1項の定義は、

バー、酒場その他名称のいかんを問わず、営業所を設けて客に飲食をさせる営業のうち、客に酒類を提供し、かつ、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなして営む営業

で、「接待」が要件になっていません。 風営法上の接待に当たらなくても、歓楽的な雰囲気でもてなす酒の店であれば入り得る、という書き方です。範囲としては広い部類に入ります。

ただし同じ条文の末尾に「公安委員会規則で定める地域内において営むもの」という限定が付いています。業態は広く、区域は絞る。 これが大阪府型の設計です。

第2条第2項の「料金」の定義も特徴的で、「飲食に係る料金その他名目のいかんを問わず、酒類提供等営業に関し客が支払うべきものとする一切の金銭」とされています。名目を問わない、と正面から書いてあるわけです。

愛知県——接待が要件、しかし区域は絞らない

愛知県はちょうど逆です。第2条の定義は、

バー、酒場その他名称のいかんを問わず、営業所を設けて客に飲食させる営業のうち、客に酒類を提供し、かつ、客の接待……をして営むもの

と、接待を要件にしています。 そのぶん業態は絞られますが、この定義には地域の限定が入っていません。

代わりに愛知県は、第3条で別枠の「不当な勧誘、料金の不当な取立て等規制特別区域」を置きました。列挙されているのは、名古屋市中区錦三丁目の区域(都市公園の区域を除く)と、名古屋市中区栄三丁目1番から15番まで、栄四丁目、栄五丁目1番及び3番から7番までの区域です。

愛知県で本当に効いてくるのは、罰則の書き方

ここが、この条例でいちばん見落とされやすいところです。表示義務(第4条)・不当な勧誘の禁止(第5条)・不当な取立ての禁止(第6条)は、特別区域の内外を問わず適用されます。ところが罰則である第20条第2項は、各号がすべて「特別区域内において営まれる酒類提供等営業に関し」という書き出しで始まっています。

つまり愛知県では、

  • 特別区域の外——表示違反も不当な勧誘も条例違反ではあるが、直接の刑事罰は付かない。公安委員会の指示(第9条)や営業停止命令(第10条)という行政のルートに乗る
  • 特別区域の中——同じ行為に6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が付く

という二層構造になっています。「条例違反です」と言ったときに何が起きるかが、通りひとつで変わり得るということです。なお第20条第1項は、営業停止命令に違反した者を1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金としており、こちらに区域の限定はありません。

広島県——1号営業と2号営業の二本立て

広島県警察が解説している同県の条例は、名称が「酒類提供営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例」で、規制の対象を1号営業(酒類提供営業)と2号営業(性風俗営業)に分けています。酒類提供と性風俗の両方を一つの条例で受ける形で、東京都型と大阪府型を足したような構成です。

適用される区域は、広島市の一部(中区・西区・佐伯区)、東広島市、呉市、三原市、尾道市、福山市の各一部で、県警の説明では計6市8区域とされています。罰則は、表示義務違反と不当な勧誘が50万円以下の罰金、不当な取立てが6月以下の懲役または50万円以下の罰金と説明されています。

見比べるとこうなる

自治体対象になる営業区域の限定
東京都(平12条例196号)接触役務(店舗型・派遣型)+接待をして酒を出す店公安委員会の指定区域内
北海道(平13条例44号)接触役務(店舗型)+接待をして酒を出す店公安委員会の指定区域内
大阪府(平13条例9号)酒類提供+歓楽的雰囲気(接待は要件でない)公安委員会規則で定める地域内
愛知県(平29条例1号)酒類提供+接待(地域限定なし)罰則は特別区域内のみ
広島県1号営業(酒類提供)+2号営業(性風俗)6市8区域

同じ通称で呼ばれていても、要件の置き方がそれぞれ違います。 表の右列と左列のどちらかが外れれば、条例のルートは使えません。

自分の地域を調べる手順

一覧を暗記する必要はありません。調べ方だけ覚えておけば足ります。

  1. 「都道府県名+例規集」で検索し、その自治体の例規集(多くは `reiki` を含むURL)を開く
  2. 例規集の検索窓に「不当な勧誘」または「料金の取立て」と入れる
  3. ヒットした条例の第2条(定義)を最初に読む。対象の営業と、区域の限定がここに書かれている
  4. 次に罰則の条を見て、その禁止に刑罰が付いているのか、行政処分だけなのかを確かめる
  5. 区域の具体的な範囲が条例本体にない場合は、公安委員会規則か、都道府県警察のサイトの解説を見る

都道府県警察が「ぼったくり防止条例」という見出しで解説ページを置いていることも多く、そちらのほうが読みやすい場合があります。ただし解説は要約なので、争点になりそうなときは条文そのものに戻ってください。

条例が禁じている三つの柱

正式名称も対象もばらばらですが、中身は驚くほど似ています。 確認した五つの自治体は、いずれも次の三つを並べています。

柱1/料金等の表示——「違約金」が入っているのが肝

東京都第3条、北海道第3条、大阪府第3条、愛知県第4条が、営業所内で客に見やすいように料金を表示することを義務づけています。

注目してほしいのは、表示の対象に「違約金」が明記されていることです。愛知県第4条第1項第2号は、

違約金その他名目のいかんを問わず、当該酒類提供等営業に関し客が支払うべきものとする金銭に関する定めがある場合にあっては、その内容

を表示せよ、と書いています。北海道第3条第2号、東京都第3条も同趣旨です。風営法第17条の表示義務には「違約金」という語がありません(料金表示義務の記事参照)。条例は、法律が拾っていなかった「後から出てくる名目」を、正面から表示対象に加えているわけです。

表示の方法まで規則に下りている例もあります。愛知県の施行規則第2条は、

壁、ドア、ついたてその他これらに類するものに客に見やすいように掲げること又は客席に客に見やすいように備えることにより行うものとする

と定めています。壁への掲示だけが方法ではない、ということです。

柱2/不当な勧誘——基準は「著しく低廉であると誤認させる」

東京都第4条第1項、北海道第4条第1項、愛知県第5条は、ほぼ同じ文言を使っています。

当該営業に係る料金について、実際のものよりも著しく低廉であると誤認させるような事項を告げ、又は表示すること

「嘘をついたか」ではなく「著しく低廉だと誤認させたか」が基準である点が重要です。金額を明言していなくても、誤認させる言い方であれば要件に当たり得ます。さらに東京都・北海道は、違約金等について「不実のことを告げること」も別号で禁じています。

大阪府の第5条は、これに加えて勧誘の態様そのものを二つ挙げています。

二 声をかけ、又はビラ、パンフレット等を配り、若しくは提示してつきまとうこと。 三 勧誘を拒む者の身辺から立ち退こうとせず勧誘を続けること。

そして第16条で、この態様違反に5万円以下の罰金を定めています。料金の話が出る前の段階、つまり通りでのつきまといそのものを条例が拾っているのは大阪府型の特徴です。

柱3/不当な取立て——所持品の隠匿が名指しされている

東京都第4条第2項、北海道第4条第2項、愛知県第6条は、揃ってこう書いています。

粗野若しくは乱暴な言動を交えて、又はその者から預かった所持品を隠匿する等迷惑を覚えさせるような方法で、当該営業に係る料金又は違約金等の取立てをしてはならない

「預かった所持品を隠匿する」が条文に書かれているのは、この種の条例に共通する特徴です。上着や鞄、身分証を返さないという形での取立てが、条文の中に類型として置かれています。

大阪府第6条は言い回しが違い、「すごみ、若しくは取り囲む等人を威迫するような行為又は人に不安を覚えさせるような言動」を禁じています。囲まれた、という状況を条文の言葉で説明できるようにしておくと、相談のときに話が早くなります。

「何人も」——店の人でなくても対象になる

三つの柱のうち、勧誘と取立ての条文の主語を見てください。東京都第4条、北海道第4条、愛知県第5条・第6条、いずれも「何人も」です。営業者に限定されていません。

したがって、店の従業員でない人が通りで勧誘した場合も、取立ての場面だけ現れた人物も、条文上は規制の対象になり得ます。さらに北海道第6条は、違反行為を用いた営業に対して情を知って資金または場所を提供することまで禁じています。愛知県第7条は、勧誘や取立てを外部に委託した営業者に、受託者が違反しないよう指導する義務を課しました。

「うちの従業員ではない」という説明で規制の外に出られる作りにはなっていない、という理解が正確です。

愛知県だけにある、客引きとつなぐ条文

愛知県第8条は、他ではあまり見ない規定です。

酒類提供等営業を営む者は、当該酒類提供等営業に関し、愛知県迷惑行為防止条例の規定に違反する行為をした者その他の者から紹介を受けて、当該客引きを受けた者を客として営業所内に立ち入らせてはならない。

違法な客引きに連れて来られた客を、店が入れてはいけないという作りです。客引きを取り締まる条例(迷惑行為防止条例)と、店側を規律する条例とを、一本の線でつないでいます。この違反も、特別区域内であれば第20条第2項第5号により罰則の対象です。

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条例が動くと何が起きて、何が起きないのか

指示 → 営業停止命令 → 罰則、という順序

条例のルートは、いきなり刑事罰から始まりません。まず公安委員会の指示があります(東京都第6条、北海道第8条、大阪府第7条、愛知県第9条)。指示に従わなかったとき、あるいは条例上の罪に当たる違法行為があったときに、営業停止命令へ進みます。停止できる期間の上限は、東京都と北海道が8月を超えない範囲、大阪府と愛知県が6月を超えない範囲と、自治体で差があります。

停止命令に違反したときの刑がいちばん重く、大阪府第12条・愛知県第20条第1項は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、北海道第15条第1項も同水準です。条例の中では、命令に従わないことがもっとも重く扱われているという構造です。

なお、例規集の表記が「懲役」のものと「拘禁刑」のものがあります。これは刑法改正で自由刑の名称が変わったことを反映した時期の違いと読めますが、最新の表記は各自治体の例規集で確認してください。

公表という手段

愛知県第12条は、指示または命令をしたときに、その旨と内容を公表することができると定めています。第15条第2項にも、建物提供者への勧告に従わない場合の公表があります。実際に愛知県警察は、条例に基づく公表を行うページを設けています。

行政処分に加えて「公表」という手段が条例に書き込まれているのは、通常の行政処分にはない特徴です。ここでは制度の存在だけを紹介し、個別の店の評価はしません。

条例は返金の制度ではない——ここが最重要

そして、この記事でいちばん伝えたいのがこれです。

上に並べた指示・営業停止命令・公表・罰則のどれも、支払ったお金を客に返す仕組みではありません。 条例の目的規定はいずれも「身体及び財産に対する危害の発生を防止すること」であって、個別の返金を実現する条文は置かれていません。

だから、条例違反を警察に申告することと、お金を取り戻そうとすることは、最初から二本の別のレールとして動かす必要があります。

「通報したのに返ってこない」という失望は、この二本を一本だと思っていたときに起きます。

その場でできること——条例の適用は、残した記録で決まる

条文を読むと分かるのは、条例違反かどうかの判断材料が、ほとんど「その場にしかないもの」だということです。後から取り返せません。

表示を見る、そして撮る

料金の表示があったか、違約金の定めが書かれていたか。表示義務違反はここだけで決まります。掲示があった場合も撮ってください。 表示があったのに請求額が違う、という事実のほうが問題になる場面もあります。撮影が難しければ、メモに「壁に料金表なし」「席に冊子あり、違約金の記載なし」と時刻付きで残すだけでも違います。

言われた言葉を、言い換えずに残す

勧誘の条文の要件は「著しく低廉であると誤認させるような事項を告げ」たかどうかです。要約すると要件から離れます。 「安いと言われた」ではなく、「『飲み放題で三千円ぽっきり、それ以上は一切かかりません』と言われた」というように、聞いたままの言葉を残してください。誰が言ったか(店の人か、通りで声をかけてきた人か)も一緒に。「何人も」が主語である以上、どちらでも意味があります。

取立ての態様を、動作で書く

「怖かった」は評価であって事実の記述ではありません。条文が拾っているのは動作です。囲まれた(大阪府第6条の「取り囲む」)、上着や鞄を返してもらえなかった(東京都・北海道・愛知県の「所持品を隠匿する」)、出口の前に立たれた。そのまま条文の言葉に対応する形で書けるのが理想です。

危険が迫っているときは、条例の話をしない

これは実務的な優先順位の話です。その場で店員と条例を議論することは、身の安全にとってプラスになりません。 暴行や監禁に当たり得る状況、出られない、電話をさせてもらえないといった状況は、条例の解釈の問題ではなく、いま起きている事件です。迷わず110番してください。条例の話は、安全が確保されてからで間に合います。

相談先の使い分け

窓口ごとの受付時間や役割の詳しい比較は高額請求されたときの手順の記事に譲り、ここでは条例との関係だけを書きます。

  • 110番——いま危険がある、出られない、囲まれている。条例以前の問題です
  • #9110(警察相談専用電話)——危険は去ったが警察に相談したい。条例の所管は公安委員会であり、実務を担うのは都道府県警察です。条例違反の申告は、最終的に所轄警察署の生活安全担当につながります
  • 188(消費者ホットライン)——料金・契約・返金の相談。条例違反かどうかとは別の軸で、支払いをどう扱うかを相談できます
  • カード会社——カードで支払った場合は、条例の話と並行して速やかに連絡する

条例違反の申告と、返金の相談は、窓口が違います。 どちらか一方で足りることは、あまりありません。

条例違反として伝えるときに、整理しておく五項目

条例の条文は、要件がはっきりしています。裏を返せば、伝えるべき情報の形も決まっているということです。相談の前に、次の五つを並べておくと話が早くなります。

  1. 場所——店名だけでなく、番地・ビル名・階まで。指定区域や特別区域に入るかどうかがここで決まります。区域は町丁目や番地の単位で切られていることがあり(愛知県第3条がその典型です)、「〇〇の繁華街」では足りません
  2. 業態——接待があったか、酒類の提供があったか。東京都・北海道・愛知県は接待が定義に関わり、大阪府は「歓楽的雰囲気」で線を引いています。どの条例に乗るかが、この一点で変わります
  3. 表示——料金の表示があったか、なかったか。あった場合、違約金その他の名目についての記載があったか
  4. 勧誘の言葉——誰が、どこで、どう言ったか。要約せず、聞いたままの言葉で
  5. 取立ての態様——囲まれた、所持品を返してもらえなかった、出口をふさがれたなど、動作として書けること

「高い金額を請求された」だけでは、条例のどの条文の話なのかが決まりません。金額の多寡は、実は条例の要件になっていないからです。条例が見ているのは、表示・勧誘・取立てという行為のほうです。金額そのものを争う話は高額請求されたときの手順の記事の領域になります。

条例をめぐる三つの誤解

誤解1/「条例違反ならその場で逮捕される」

条例の作りは、指示から始まる段階構造です。表示義務違反や不当な勧誘に罰則が付いている自治体でも、通報したその場で店が閉まるわけではありません。公安委員会の調査を経て、指示や命令、必要に応じて刑事手続きへ進みます。時間軸が違うということを知っておくと、期待のずれが減ります。

誤解2/「料金表さえ出ていれば、いくら請求してもよい」

そうではありません。条例は表示を義務づけているだけで、表示していれば何でも通るとは書いていません。むしろ、勧誘の場面で「実際のものよりも著しく低廉であると誤認させるような事項」を告げていれば、店内の表示とは別に条文に当たり得ます。加えて、表示した料金以外を請求しないことを遵守事項に加えている風営法施行条例を持つ自治体もあります(料金表示義務の記事参照)。

誤解3/「条例がある地域だから安心」

条例の有無は、その地域の安全の指標ではありません。条例は、被害の発生状況等を勘案して区域を指定する仕組みです(東京都第2条、北海道第2条、愛知県第3条がいずれもその趣旨を書いています)。つまり、規制が置かれていること自体は、対策の手当てがされている場所であることを意味するのであって、特定の街や店を評価する材料にはなりません。この記事では、個別の地域や店の善し悪しについては述べません。

条例のない地域では何が使えるか

自分の都道府県に該当する条例が見当たらなかった、あるいは条例はあるが対象や区域から外れていた——このとき、手段がなくなるわけではありません。 使う条文が変わるだけです。

  • 風営法のルート——料金の表示義務(第17条)や、料金について事実と違う説明・誤認させる説明を禁じる規定は、条例とは別に働きます。詳しくは料金表示義務の記事と風営法の基礎の記事にあります
  • 風営法施行条例のルート——「ぼったくり防止条例」がなくても、風営法第21条の委任を受けた施行条例に「表示する料金以外の料金を客に請求しないこと」といった遵守事項が置かれている自治体があります。通称で探すと見落とすので、施行条例も一緒に検索してください
  • 民事のルート——消費者契約法や民法にもとづく取消し・無効の主張。会計は取り消せるかの記事へ
  • 刑法のルート——欺いて財産を交付させた、脅して支払わせたといった行為は、条例の有無に関係なく刑法の問題になり得ます

条例は「上乗せ」であって、土台ではありません。 条例がない地域は、土台だけで戦うことになる、という理解が正確です。

働く側から見た条例

この条例群は、客だけのものではありません。主語が「何人も」である以上、店で働く人も条文の名宛人です。

指示や停止命令は店に対して出ますが、罰則の対象は行為者です。両罰規定(東京都第12条、北海道第16条など)は、法人と行為者の双方を罰する作りになっています。「店の方針だった」という説明で、行為者の責任が自動的に消える構造ではありません。

働く側が確認しておくと安全なのは、次の三つです。

  1. 自分の店の所在地が、指定区域・特別区域に入っているか。都道府県警察の解説ページか公安委員会規則で確認できます
  2. 店の表示が条例の要求を満たしているか。とくに違約金の定めがあるのに表示されていない状態は、条例が正面から拾っている類型です
  3. 勧誘や取立てを外部に委託していないか。愛知県第7条のように、委託した側に指導義務を課している例があります

「知らなかった」で済ませにくい部分が条文に書かれている、というのが実際のところです。

よくある質問

Q. 「ぼったくり防止条例」は全国どこにでもありますか?

いいえ。すべての都道府県にあるわけではありません。 この記事で条文を確認できたのは東京都・北海道・大阪府・愛知県・広島県ですが、これは網羅的な調査ではなく、他にも同種の条例を持つ自治体があります。逆に、条例が見当たらない自治体もあります。自分の行動範囲について、例規集で「不当な勧誘」「料金の取立て」を検索して確かめるのが確実です。

Q. 東京都の条例は名前に「性風俗営業等」とあります。キャバクラやホストクラブは関係ないのでは?

条文上はそうとは限りません。東京都の条例第2条第1項第3号は「接待をして客に飲食をさせる営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業」を「性風俗営業等」の定義に含めています。北海道の条例も同様の号を置いています。条例名から対象を判断するのは危険で、定義条文を読む必要があります。 ただし、いずれも指定区域内で営まれるものが対象です。

Q. 条例違反だと警察に言えば、お金は返ってきますか?

条例そのものには、返金を実現する仕組みは置かれていません。 条例が定めているのは公安委員会の指示・営業停止命令・公表と、刑事罰です。支払った金銭の扱いは民事の問題として別に進める必要があります。ただし、警察に伝えた事実関係の記録が、後の民事の主張を支えることはあります。

Q. 条例がない地域では、泣き寝入りするしかないのですか?

そうではありません。風営法の表示・説明に関する規定、風営法の委任を受けた各都道府県の施行条例の遵守事項、消費者契約法や民法にもとづく主張、刑法の問題としての扱い——条例以外の道は残っています。 条例は上乗せの規制であって、これが唯一の根拠ではありません。

Q. 通りで声をかけてきた人は店の従業員ではないと言われました。条例は使えませんか?

条文の主語は「何人も」です(東京都第4条、北海道第4条、愛知県第5条など)。営業者に限定されていないので、店の従業員かどうかは条文上の要件ではありません。 さらに、勧誘を外部に委託した営業者に指導義務を課す規定(愛知県第7条、北海道第7条)や、違法な客引きを受けた客を立ち入らせることを禁じる規定(愛知県第8条)もあります。

Q. 料金表が壁に貼っていなければ、それだけで条例違反ですか?

一概には言えません。表示の方法は規則に委ねられており、たとえば愛知県の施行規則第2条は「壁、ドア、ついたてその他これらに類するものに……掲げること又は客席に……備えることにより行う」としています。席に備え付ける方式も認められているので、掲示がないことだけをもって違反と決めることはできません。表示の有無と併せて、記載内容(とくに違約金の定めがあるか)まで見る必要があります。

Q. その場で「これは条例違反だ」と主張したほうがよいですか?

身の安全が最優先です。 その場での議論は、状況を悪化させることがあります。条例の適用を判断するのは公安委員会であって、当事者ではありません。やるべきことは、表示・言われた言葉・取立ての態様を記録に残すことと、危険があれば110番することです。条例の主張は、安全な場所に移ってから相談窓口を通じて行うほうが現実的です。

まとめ

  • 「ぼったくり防止条例」は通称。正式名称・対象・区域・罰則の範囲は自治体ごとに違う
  • 東京都・北海道は条例名に「性風俗営業等」とあるが、定義条文に「接待をして酒を出す店」が入っている。名前で判断しない
  • 大阪府は接待を要件にせず「歓楽的雰囲気」で線を引くが、区域は公安委員会規則で限定
  • 愛知県は接待が要件だが地域限定なし。ただし罰則が付くのは特別区域内の違反だけで、区域外は行政処分のルート
  • 共通する三つの柱は表示・不当な勧誘・不当な取立て。表示対象に違約金が入っているのが条例の特色
  • 勧誘・取立ての条文の主語は「何人も」。店の従業員に限られない
  • 条例が動かすのは指示・営業停止命令・公表・刑事罰。返金の制度ではないので、お金の話は民事のレールで別に進める
  • 条例がない地域でも、風営法・施行条例・消費者契約法・民法・刑法のルートが残る
  • その場で残すのは、表示の状態・言われた言葉そのまま・取立ての動作。危険があれば110番が先

以上は一般的な情報であり、実際にどの規定が適用されるか、どう扱われるかは個別の事情によって変わります。 条例は改正されるため、最新の条文は各自治体の例規集で確認してください。


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参考情報

  • 東京都例規集「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」 https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00002219.html
  • 北海道警察「北海道性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例」(PDF) https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/koukai/jyourei/j-seian/j-hoan/hoan13-03.pdf
  • 大阪府例規「大阪府酒類提供等営業に係る不当な勧誘及び料金の不当な取立ての防止に関する条例」 https://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00001070.html
  • 愛知県警察例規「酒類提供等営業に係る不当な勧誘、料金の不当な取立て等の規制等に関する条例」 https://www.pref.aichi.jp/police_reiki/reiki_honbun/u393RG00000424.html
  • 愛知県警察例規「酒類提供等営業に係る不当な勧誘、料金の不当な取立て等の規制等に関する条例施行規則」 https://www.pref.aichi.jp/police_reiki/reiki_honbun/u393RG00000425.html
  • 広島県警察「いわゆる『ぼったくり防止条例』について(解説)」 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/police/042-botta.html

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