結論から書きます。六本木の夜を特徴づけているのは、店の種類ではなく「土地の来歴」と「区域の指定」です。 ここは江戸時代の武家地が明治に陸軍の土地となり、戦後は米軍に接収され、返還された順番にひとつずつ開いていった場所です。そしていま、六本木一丁目から七丁目までの商業地域は、東京都公安委員会が告示する「営業延長許容地域」に全丁目が入っています。深夜0時で閉じる街と、午前1時まで開く街の境目が、この告示で引かれています。
もうひとつ、六本木には他の繁華街にはあまり見られない特徴があります。同じ数百メートルの範囲に、米軍施設・大使館・テレビ局・国立美術館・超高層オフィスが同居しています。 昼と夜で人が入れ替わるのではなく、昼の機能が夜まで残ったまま、その上に飲食の時間が重なる。この記事では、その重なり方を、地名・統計・条例という確認できる材料だけで説明します。
営業時間そのものの仕組みは営業時間のルールの記事、会計まわりで困ったときの動き方は高額請求の記事にまとめてあります。ここでは「六本木という場所」に絞ります。
この記事で分かること
- 町名としての六本木がどこからどこまでか、そして有名な施設の住所が必ずしも「六本木」ではないこと
- この土地が武家地→陸軍→米軍→返還という順番をたどったこと、いまも返還されていない一区画が残っていること
- 経済センサスで見た丁目ごとの事業所数・従業者数の偏り(六丁目と一丁目に極端に集中している)
- 六本木一〜七丁目が営業延長許容地域として告示されている事実と、そこに付いている例外
- 深夜の飲食を分ける条例上の三つの枠(風俗営業・特定遊興飲食店営業・深夜酒類提供飲食店営業)
- 港区の客引き条例と、警視庁が指定している二種類の区域(丁目・番地単位で指定されている)
- 港区と地元団体が2013年に作った「六本木安全安心憲章」という取り組み
法令・条例に関する記述は一般的な情報であり、個別の事情によって結論は変わります。区域の指定や条例は改正されることがあるため、実際に判断が必要なときは最新の条文と告示を確認してください。特定の店や地区を評価する意図はなく、店名も挙げません。
「六本木」はどこからどこまでか
町名としては一丁目から七丁目まで
港区六本木は、一丁目から七丁目まであります。これは統計にもそのまま表れていて、港区が公表している令和3年経済センサス‐活動調査(基準日は令和3年6月1日)の町丁目別集計には、六本木一丁目から七丁目までが並んでいます。
一方、日常会話で「六本木」と言うときに指されているのは、たいてい六本木交差点から半径数百メートルの範囲です。町名としての六本木と、繁華街としての六本木は、範囲が一致しません。 そして後で見るように、条例や告示は町名と丁目、ときには番地の単位で線を引きます。この段差を先に押さえておくと、以降の話が読みやすくなります。
有名な施設の住所は、意外と「六本木」ではない
具体例で確認します。
- 国立新美術館の所在地は、公式サイトによれば港区六本木7-22-2です。これは六本木七丁目です。
- 六本木ヒルズは、森ビルの資料で「六本木六丁目地区市街地再開発組合」による事業として説明されています。つまり六本木六丁目です。
- 東京ミッドタウンを運営する東京ミッドタウンマネジメント株式会社の会社概要に載っている所在地は、港区赤坂9-7-2です。六本木駅に接していますが、町名は赤坂九丁目です。
三つ並べると分かりますが、六本木駅を中心にした「六本木エリア」と呼ばれる範囲は、行政上の町名としては六本木と赤坂にまたがっています。この記事で条例の話をするときは、必ず町名・丁目で書きます。感覚的な「六本木」と、告示に書かれた「六本木◯丁目」を混ぜないためです。
成り立ち——閉ざされていた土地が、順番に開いた
地名の由来ははっきりしていない
「六本木」という地名の由来については、六本の松の古木があったからという説、木に関係する名字の大名屋敷が六つあったからという説などが語られますが、どれも確定した説明ではありません。 由来を断定する公的な記述は見当たらないので、この記事でも「諸説あり、定まっていない」と書くにとどめます。
陸軍の土地だった時代
はっきりしているのは、近代のこの一帯が軍用地だったことです。港区が公開しているデジタル版『港区史』(通史編 現代)には、赤坂プレスセンターについて次のように書かれています。
元は「麻布三連隊」(陸軍第一師団歩兵第三連隊)の駐屯地で、米軍による接収の後、現在の国立新美術館を含む一帯が昭和三三年(一九五八)に返還されたが、この地区は返還されずに今日に至っている。
いま国立新美術館が建っている土地は、陸軍の駐屯地であり、戦後は米軍が接収していた土地です。 そして返還は1958年(昭和33年)。国立新美術館が開館したのはそれから約半世紀後の2007年1月21日です。
もう一か所、東京ミッドタウンの敷地にも同じ構図があります。東京ミッドタウンの公式サイトの「歴史と開発」は、この土地を江戸時代の萩藩毛利家下屋敷、明治期の陸軍駐屯地、戦後の米軍将校宿舎、返還後の防衛庁檜町庁舎と説明し、「400年あまりの間、一般には閉ざされた土地」だったとしています。防衛庁が市ヶ谷へ移転したのが2000年、東京ミッドタウンのグランドオープンが2007年3月です。
返還されていない区画が、いまも残っている
港区のサイトによれば、区内には米軍施設が2か所あります。ひとつが六本木のヘリポートを含む赤坂プレスセンター、もうひとつがニューサンノー米軍センターです。港区はヘリポート基地の早期撤去を求めて、国・東京都・米国に対する要請行動を続けており、そのことをサイト上で公表しています。
つまり六本木は、「返還された土地の上に街ができ、返還されていない区画がその真ん中に残っている」場所です。 戦後の街の成り立ちを語るときに、この地区ほど土地の返還年が地図に直接効いている繁華街は多くありません。
六本木ヒルズ以前の六本木六丁目
もうひとつ、公式資料で確認できる重要な事実があります。森ビルが公開している六本木ヒルズの背景説明によれば、開発前の六本木六丁目地区は、テレビ朝日の敷地約3ヘクタールを除くと「木造を中心とした低層住宅地」で、「幅員3m前後の狭い道路で、消防車は入れず、救急車もやっと通り抜ける防災上の課題を抱えた地域」でした。住宅地は窪地状の地形で、テレビ朝日の地盤面との高低差は最大15メートルあったとされています。
この地区が1986年11月に東京都から再開発誘導地区に指定され、2000年4月に着工、2003年4月に竣工しました。開業日は2003年4月25日です。区域面積は、六本木ヒルズゲートタワーを除いて約11ヘクタール。
六本木の「夜の街」というイメージと、開発前のこの土地の実像はかなり違います。 交差点周辺の繁華な区画と、坂を下った低層住宅地が、狭い範囲に隣り合っていた。そして再開発は、その住宅地側から始まりました。
昼の顔——数字で見る六本木
港区が公表している数字
港区が「数字で見る港区」として公表している値のうち、六本木の昼を説明するのに使えるものを挙げます。
- 大使館:81か国(令和6年9月1日現在)。全国第1位とされています
- 鉄道:33駅・17路線(令和6年11月1日現在)
- 民間放送テレビ局:5局の本社所在地(令和6年11月1日現在)
大使館の多さは麻布・赤坂・六本木一帯の性格を決めていますし、テレビ局の本社が集まる区であることも、六本木の昼の顔に直結しています。六本木ヒルズの開発区域にテレビ朝日の敷地が含まれていたことは前述のとおりです。
経済センサスで見る「丁目ごとの重さ」
もう少し細かく見ます。港区が公表している令和3年経済センサス‐活動調査の町丁目別集計から、六本木の各丁目の事業所数と従業者数を書き出します。
| 町丁目 | 事業所数 | 従業者数 |
|---|---|---|
| 六本木一丁目 | 319 | 14,642 |
| 六本木二丁目 | 92 | 1,259 |
| 六本木三丁目 | 525 | 14,350 |
| 六本木四丁目 | 291 | 3,955 |
| 六本木五丁目 | 291 | 4,012 |
| 六本木六丁目 | 639 | 24,956 |
| 六本木七丁目 | 600 | 7,180 |
単純に合計すると、六本木一〜七丁目で事業所2,757、従業者70,354人になります。同じ調査で港区全体は事業所41,220、従業者1,134,499人ですから、事業所数で約6.7%、従業者数で約6.2%が六本木に集まっている計算です。
注目したいのは丁目ごとの偏り方です。 六丁目は事業所639に対して従業者24,956人。一丁目は事業所319に対して14,642人。この二つは、事業所あたりの従業者数が突出しています。超高層オフィスがある丁目です。一方、三丁目は事業所525に対して従業者14,350人、七丁目は事業所600に対して7,180人で、事業所の数そのものは多い。小さな事業所がたくさん入っている丁目と、大きなオフィスが少数入っている丁目が、隣り合っています。
なお、この表は産業を問わない全事業所の数字です。飲食店だけを抜き出した丁目別の公表値は見当たりませんでした。 「六本木に飲食店が何軒ある」という数字を出典付きで書くことはできないので、この記事では書きません。
2003年と2007年に、街の重心が動いた
年表として並べると分かりやすくなります。
- 2003年4月25日 六本木ヒルズ開業(六本木六丁目)
- 2007年1月21日 国立新美術館開館(六本木七丁目)
- 2007年3月 東京ミッドタウン グランドオープン(赤坂九丁目)
わずか4年のあいだに、交差点の南西・西・北に、それぞれ大規模な施設ができました。 国立新美術館は公式サイトによれば国内最大級となる約14,000平方メートルの展示スペースを持ち、黒川紀章・日本設計共同体の設計で2006年に竣工しています。
この三つが揃ったことで、六本木の昼は「オフィスと大使館の街」から「オフィスと大使館と美術館の街」に変わりました。夜の飲食が街の唯一の顔ではなくなった、と言い換えてもいいと思います。
夜の顔——制度の側から見る
ここからが、この街を理解するうえで一番実用的な部分です。「六本木は遅くまで開いている」という印象には、条例上の根拠があります。
まず、原則は午前0時まで
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第13条第1項の本文は、こう定めています。
風俗営業者は、深夜(午前零時から午前六時までの時間をいう。以下同じ。)においては、その営業を営んではならない。
キャバクラやホストクラブのような接待飲食等営業も、この「風俗営業」に含まれます。つまり原則は午前0時で終わりです。
ただし同項にはただし書があり、都道府県の条例に特別の定めがある場合には、条例で定める地域内に限り、午前0時以後、条例で定める時まで営業できるとされています。第2号が対象にしているのが、「午前零時以後において風俗営業を営むことが許容される特別な事情のある地域として政令で定める基準に従い当該条例で定める地域」です。
東京都の条例は「営業延長許容地域」を置いている
東京都の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(昭和59年東京都条例第128号)第4条の2第2項は、この地域を「営業延長許容地域」と呼び、「商業地域のうち規則で定める地域」と定めています。
そして第4条の3第2号を受けた東京都公安委員会規則(同施行条例の施行に関する規則)第6条第2項は、こう書いています。
条例第4条の3第2号の規則で定める時は、午前1時とする。
条文をつなぐと、「商業地域のうち公安委員会が告示した地域では、風俗営業は午前1時まで営業できる」となります。
六本木は一丁目から七丁目まで、すべて告示されている
では六本木はどうか。警視庁が公表している「風俗営業の営業延長許容地域の告示地域(商業地域に限る。)」の一覧を見ると、港区の欄に次の町名が並んでいます(抜粋)。
赤坂一丁目、同二丁目、同三丁目、同四丁目、同五丁目、同六丁目、同七丁目、麻布十番一丁目、同二丁目、(中略)西麻布一丁目、同二丁目、同三丁目、同四丁目、(中略)六本木一丁目、同二丁目、同三丁目、同四丁目、同五丁目、同六丁目、同七丁目
六本木は一丁目から七丁目まで、すべて告示地域に入っています。 これが、六本木の夜を制度の側から支えている一行です。
ただし、告示されていても例外がある
ここを飛ばすと誤解します。同じ規則の第5条には、ただし書があります。
ただし、条例第3条第1項第1号に規定する住居集合地域(以下「住居集合地域」という。)からの距離が20メートル以下の区域(幹線道路(道路法第3条第2号に規定する一般国道及び同条第3号に規定する都道府県道をいう。以下同じ。)の各側端から外側50メートル以下の区域を除く。)を除く。
つまり、同じ「六本木◯丁目」の中でも、住居が集まる用途地域から20メートル以内の場所は、原則として営業延長許容地域から外れます(ただし国道・都道の側端から50メートル以内なら除外されない)。さらに条例第5条の表は、住居集合地域における「その他の風俗営業」について、午後11時から翌日の午前10時までを営業できない時間としています。
六本木という町名にいるかどうかではなく、その建物が立っている用途地域と、住居集合地域からの距離で決まる。 通りを一本入っただけで結論が変わりうる、ということです。
なお、年末年始には別の枠があります。規則第3条は「年末年始にあつては12月10日から翌年の1月7日までの日」を特別な事情のある日とし、規則第4条は、年末年始についてはこの延長を都内全域に認めています。12月10日から1月7日は、六本木に限らない話になります。
深夜の飲食を分ける、三つ目と四つ目の枠
風俗営業だけが夜ではありません。同じ東京都の条例に、別の枠が二つあります。
ひとつは特定遊興飲食店営業です。条例第13条は「特定遊興飲食店営業は、東京都内全域において、午前5時から午前6時までの時間においては、これを営んではならない」と定めています。風俗営業とは終わる時刻の考え方がまったく違います。 ただし、どこに営業所を置けるかは条例第12条と規則第7条により「商業地域のうち規則で定める地域」=公安委員会が告示する地域に限られます。六本木のどの区域が告示されているかは告示本文で確認する必要があるため、この記事では断定しません。
もうひとつは深夜における酒類提供飲食店営業です。条例第15条は「住居集合地域においては、法第33条第1項に規定する酒類提供飲食店営業を午前0時から午前6時までの時間において営んではならない」と定めています。裏返すと、商業地域であればこの禁止はかからないということです。六本木の中心部が商業地域であることは、営業延長許容地域の告示が「商業地域に限る」と明記していることからも読み取れます。
風俗営業は午前1時、特定遊興飲食店営業は午前5時、深夜酒類提供飲食店営業は用途地域次第。 同じ通りに面していても、店が取っている許可・届出の種類で閉店時刻が違う。これが六本木の夜が一斉に終わらない理由です。時間制料金の数え方そのものは営業時間のルールの記事で扱っています。
店舗型性風俗特殊営業については
同じ条例の第10条は、店舗型性風俗特殊営業などについて営業できない地域を定めています。営業の種別によっては、都内でごく限られた町丁目(条文には新宿区・台東区・豊島区の特定の丁目と番地が挙げられています)以外の地域では営めない、という組み立てになっており、六本木はそこに挙げられていません。 また第11条は、これらの営業を東京都内全域で午前0時から午前6時まで禁止しています。この記事では場所と時間の枠組みだけを事実として書き、営業の内容には立ち入りません。
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訪れる人・働く人が知っておくこと
港区の客引き条例は「何人も」と書いている
港区には「港区客引き行為等の防止に関する条例」があります。港区のサイトによれば平成29年(2017年)4月1日施行で、条例第7条は次のように定めています。
何人も、公共の場所において客引き行為等をしてはならない。
「何人も」です。 業種を限定していませんし、店の従業員かどうかも問いません。対象になる「公共の場所」は道路・公園・広場・駅など、不特定の人が利用する場所です。条例は客引きだけでなく、そのために待つ行為や、スカウト行為も対象に含めています。
手続としては、指導(第10条)→勧告(第11条)→命令(第12条)と段階が進み、命令に違反した場合は第14条により5万円以下の過料、第15条により氏名等の公表があり得ます。港区は飲食店営業許可の新規・更新にあわせて誓約書の提出を求め、遵守する店にステッカーを交付する運用も行っており、繁華街に安全パトロール隊を出しているとしています。
警視庁は、六本木の丁目を名指しで指定している
港区の条例とは別に、東京都の条例に基づく区域指定が二つあります。どちらも六本木の丁目が明記されています。
ひとつ目は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(迷惑防止条例)第7条第3項に基づく、「客引き等の相手方となるべき者を待つ行為」を規制する区域です。東京都公安委員会告示第181号(平成24年6月1日)により、港区では次の区域が指定されています。
赤坂二丁目、同三丁目、同四丁目、同五丁目、同六丁目、新橋一丁目、同二丁目、同三丁目、同四丁目、六本木三丁目、同四丁目、同五丁目、同六丁目、同七丁目
規制されるのは、警視庁の説明によれば、性風俗店等に係るわいせつな行為等の客引きや、そうした店等に係るスカウトなどの目的で「公衆の目に触れるような方法で相手方を待つ行為」です。声をかける前の「待つ」段階が対象になっている点が、この条例の特徴です。
ふたつ目は、「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」第2条の9に基づく、「性関連禁止営業の発生を防止する必要性が高いと認められる区域」の指定です。東京都公安委員会告示第75号により、港区では次のとおり指定されています。
新橋一丁目、同二丁目、同三丁目、同四丁目、六本木三丁目、同四丁目、同五丁目、同六丁目(1番、2番及び4番から8番まで)、同七丁目(1番から22番まで)
丁目だけでなく番地まで書かれています。 この区域では、ビルの所有者等に対して、貸室を性関連禁止営業に使わないことを誓約させる、契約を解除できる特約を定める、年2回以上定期的に確認するといった努力義務が課され、措置が取られない場合には公安委員会による勧告・公表・命令があり得ます。規制の相手が、店ではなく建物を貸す側になっているのがこの仕組みの要点です。
地元がつくったルール——六本木安全安心憲章
条例のほかに、地元発の取り組みがあります。港区のサイトによれば、平成25年(2013年)7月23日、六本木地区安全安心まちづくり推進会議が「六本木安全安心憲章」を採択・制定しました。六本木のまちですべての人が守るべき、治安維持と環境美化に関するルールという位置づけです。
憲章には「犯罪を防ごう」「美しいまちにしよう」「タバコを吸うときは決められたルールを守ろう」「安全で安心できる道にしよう」「近隣に迷惑をかけない営業をしよう」といった項目が並び、営業に関する項目では「脱法的なナイトクラブ(無許可)など、悪質な営業は認めません」と明記されています。
この憲章には賛同事業所・推奨事業所の認証制度があり、認証を受けた事業所は憲章のポスターやステッカーを掲出します。港区が公開している認証事業所のページには、月に数回の清掃・違法看板の撤去や、夜間の客引き防止キャンペーンへの参加といった活動内容が記載されています。
実際の活動も記録されています。令和6年度第3回の六本木安全安心プロジェクトは令和6年6月20日午前10時から約1時間、三河台公園を出発して六本木交差点周辺と外苑東通り沿いで行われ、町会・自治会、商店街、事業者、関係行政機関あわせて総勢50名が参加し、憲章の周知、清掃、落書き消去、ハンドマイクによる広報を実施したとされています。推奨事業所7社、賛同事業所10社、町会・自治会・商店会等4団体、そして麻布警察署などが並んでいるという構成です。
条例で禁止し、警察が区域を指定し、地元が憲章を作って自ら回る。三層になっているのが六本木の特徴です。
移動について
六本木駅は、東京メトロ日比谷線(駅番号H04、隣は広尾駅と神谷町駅)と、都営地下鉄大江戸線が乗り入れています。港区全体では33駅・17路線(令和6年11月1日現在)。
ただし、終電の時刻はここでは書きません。 路線・方向・平日と土休日で異なり、ダイヤ改正でも変わるためです。各社の時刻表で当日の時刻を確認してください。押さえておきたいのは構造のほうで、六本木は風俗営業が午前1時まで営業できる区域である以上、店の閉店時刻と鉄道の終電時刻がずれる時間帯が生じ得ます。 帰る手段を先に決めておくかどうかで、その日の負担がかなり変わります。
料金で困ったとき
会計や請求で納得がいかないときの考え方と相談先は、高額請求の記事にまとめてあります。ここでは条例上の点だけ挙げると、東京都の条例第7条第1項第3号は風俗営業者の遵守事項として「法第17条の規定により表示する料金以外の料金を客に請求しないこと」を定めていますし、特定遊興飲食店営業についても条例第14条第3号から第5号が、入場料金・遊興料金・飲食料金・サービス料金の表示方法と、表示した以外の料金を請求しないことを定めています。表示されていたかどうかは、あとから確認できる事実です。
働く人から見た六本木
働く場所として六本木を見ると、いくつか固有の条件が出てきます。あくまで公表資料から読み取れる範囲の話です。
第一に、通勤と退勤の時間帯が制度でずらされます。 前述のとおり、同じ通りでも風俗営業なら午前1時、特定遊興飲食店営業なら午前5時までが枠です。自分の店がどの許可・届出で営業しているかによって、生活のリズムがまるごと変わります。
第二に、街区ごとに客層の構成が違います。 経済センサスの数字が示すとおり、六本木一丁目と六丁目は従業者数が突出しています。オフィスに勤める人が多い区画と、事業所の数が多い区画では、時間帯ごとの人の流れが同じにはなりません。
第三に、客引きに関する規制が重い街です。 港区の条例は「何人も」と書いており、雇われている側も対象です。指導・勧告・命令という段階を踏むとはいえ、命令違反には過料と公表が付きます。「店に言われたから」は、条例の名宛人からは外れないという設計になっています。
第四に、地元組織との距離が近いこと。 六本木安全安心憲章の賛同・推奨事業所の一覧が港区のサイトで公開されているように、店や建物の側が名前を出して参加する枠組みがあります。街のルールが匿名の空気ではなく、公表された文書と名簿の形になっているのは、働く側にとっても判断材料になります。
よくある質問
Q1. 六本木では何時までお店が開いていますか。 一律には決まっていません。風営法第13条第1項の原則は午前0時までですが、東京都の条例第4条の2第2項と規則第6条第2項により、営業延長許容地域では午前1時まで延長できます。六本木一〜七丁目は警視庁が公表する告示地域の一覧に入っています。ただし対象は商業地域に限られ、住居集合地域から20メートル以内の区域は原則として外れます。また特定遊興飲食店営業は条例第13条により午前5時から午前6時までが禁止時間で、枠がまったく異なります。店が取っている許可・届出の種類で結論が変わります。
Q2. 六本木の「夜の街」の範囲はどこまでですか。 行政上の定義はありません。町名としての六本木は一丁目から七丁目まであり、警視庁の客引き待機規制区域は六本木三丁目から七丁目、性関連禁止営業防止区域は六本木三丁目から七丁目(六丁目・七丁目は番地まで指定)というように、規制ごとに範囲が違います。「六本木エリア」と呼ばれる範囲には赤坂九丁目(東京ミッドタウン)も含まれるため、感覚的な範囲と条例上の範囲は一致しません。
Q3. 六本木に飲食店は何軒ありますか。 飲食店だけを抜き出した丁目別の公表値は見当たりませんでした。産業を問わない全事業所であれば、令和3年経済センサス‐活動調査の港区の町丁目別集計で、六本木一〜七丁目の合計は事業所2,757、従業者70,354人です(港区全体は事業所41,220、従業者1,134,499人)。飲食店の軒数として出典のある数字を示すことはできません。
Q4. 六本木で客引きに声をかけられたら、それは条例違反ですか。 港区客引き行為等の防止に関する条例第7条は「何人も、公共の場所において客引き行為等をしてはならない」と定めています。道路や駅などの公共の場所での客引きは、この条例の対象です。加えて、六本木三〜七丁目は東京都の迷惑防止条例第7条第3項に基づく「相手方となるべき者を待つ行為」の規制区域に指定されています。ただし個別の行為が違反に当たるかどうかは事実関係によりますので、判断は行政・警察の側に委ねられます。困ったときはその場で応じず、離れてから相談してください。
Q5. 六本木はなぜ外国の人が多いのですか。 断定できる単一の理由はありませんが、公的資料から確認できる条件は挙げられます。港区には大使館が81か国(令和6年9月1日現在、全国第1位)あり、区内には米軍施設が2か所(うち赤坂プレスセンターは六本木のヘリポートを含む)残っています。港区が公開する『港区史』は、この一帯が旧陸軍駐屯地から米軍接収を経て段階的に返還された土地であることを記しています。歴史的な経緯と、いまも続く外国公館・施設の集積の両方が背景にある、という程度までが資料で言えることです。
Q6. 六本木ヒルズができる前、あの場所は何でしたか。 森ビルが公開している再開発の背景説明によれば、六本木六丁目地区はテレビ朝日の敷地約3ヘクタールを除いて木造を中心とした低層住宅地で、幅員3メートル前後の狭い道路のため消防車が入れず、救急車もやっと通り抜けるという防災上の課題を抱えていました。地形は窪地状で、テレビ朝日の地盤面との高低差は最大15メートルあったとされています。1986年11月に再開発誘導地区に指定され、2000年4月着工、2003年4月竣工、開業は2003年4月25日です。
Q7. 東京ミッドタウンは六本木にあるのですか。 六本木駅に接していますが、町名は赤坂九丁目です。東京ミッドタウンマネジメント株式会社の会社概要に記載された所在地は港区赤坂9-7-2です。敷地の来歴は公式サイトによれば、江戸時代の萩藩毛利家下屋敷、明治期の陸軍駐屯地、戦後の米軍将校宿舎、返還後の防衛庁檜町庁舎で、「400年あまりの間、一般には閉ざされた土地」だったとされています。防衛庁の市ヶ谷移転が2000年、グランドオープンが2007年3月です。
Q8. 年末年始は営業時間が変わりますか。 東京都公安委員会規則第3条は、年末年始について「12月10日から翌年の1月7日までの日」を特別な事情のある日と定め、規則第4条は年末年始の特別日営業延長許容地域を都内全域としています。この期間は六本木に限らず都内全域が対象になる、という枠組みです。具体的な時刻や適用の可否は条文と告示で確認してください。
まとめ
- 町名としての六本木は一丁目から七丁目まで。国立新美術館は六本木七丁目、六本木ヒルズは六本木六丁目だが、東京ミッドタウンの町名は赤坂九丁目。感覚的な「六本木」と条例上の「六本木◯丁目」は一致しない
- この土地は江戸期の武家地→明治以降の陸軍駐屯地→戦後の米軍接収→段階的な返還という順番をたどった。『港区史』は、国立新美術館を含む一帯が昭和33年(1958年)に返還された一方、赤坂プレスセンターの区画は返還されずに今日に至ると記している
- 東京ミッドタウンの敷地は公式サイトによれば「400年あまりの間、一般には閉ざされた土地」。防衛庁の移転が2000年、開業が2007年3月
- 六本木ヒルズの開発前、六本木六丁目地区はテレビ朝日の敷地約3ヘクタールを除いて木造中心の低層住宅地で、幅員3メートル前後の道路に消防車が入れない状態だった(森ビルの資料)。1986年11月に再開発誘導地区指定、2003年4月25日開業
- 令和3年経済センサスでは六本木一〜七丁目で事業所2,757・従業者70,354人。六丁目(639事業所・24,956人)と一丁目(319事業所・14,642人)に従業者が集中する一方、三丁目・七丁目は事業所数が多い。飲食店だけの丁目別公表値は見当たらない
- 風営法第13条第1項の原則は午前0時まで。東京都条例第4条の2第2項の営業延長許容地域では規則第6条第2項により午前1時まで。警視庁の告示地域一覧には六本木一丁目から七丁目までが並ぶ。ただし対象は商業地域に限られ、住居集合地域から20メートル以内は原則として外れる
- 特定遊興飲食店営業は条例第13条により午前5時から午前6時までが禁止時間。深夜酒類提供飲食店営業は条例第15条により住居集合地域でのみ午前0時から午前6時が禁止。同じ通りでも許可・届出の種類で閉店時刻が変わる
- 港区客引き行為等の防止に関する条例第7条は「何人も」と定め、命令違反には5万円以下の過料と公表がある。加えて六本木三〜七丁目は迷惑防止条例第7条第3項に基づく客引き待機規制区域、六本木三〜七丁目(六・七丁目は番地指定)は性関連禁止営業防止区域に指定されている
- 2013年7月23日制定の「六本木安全安心憲章」があり、賛同・推奨事業所の認証と、区・警察・町会・事業者が合同で行う六本木安全安心プロジェクトが続いている
条例・告示は改正されることがあります。ここに書いたのは一般的な情報であり、個別の事情によって結論は変わります。実際の判断が必要なときは、最新の条文・告示と、港区や麻布警察署の案内を確認してください。
歴史も条例も、結局は「その場所でどう過ごすか」を決めるための材料です。街に出るかどうかとは別に、いま少し誰かと話したいだけ、という日もあると思います。LOVETOK NOWは「今、話せます」と待機している人だけが一覧に並び、マッチングを待たずにその場でチャットを始められるサービスです(20歳以上・年齢確認あり)。港区まわりの話は港区の出会いガイドにまとめています。
参考情報
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律|e-Gov法令検索
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例|東京都例規集
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(PDF)|警視庁
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例の施行に関する規則(PDF)|警視庁
- 風俗営業の営業延長許容地域の告示地域(商業地域に限る。)(PDF)|警視庁
- 客引き等の相手方となるべき者を待つ行為を規制する区域の指定について|警視庁
- 「性関連禁止営業の発生を防止する必要性が高いと認められる区域」について|警視庁
- 港区客引き行為等の防止に関する条例|港区例規集
- 港区客引き行為等の防止に関する条例|港区
- 六本木安全安心憲章~六本木安全安心プロジェクト~|港区
- 令和6年度第3回六本木安全安心プロジェクトを開催しました|港区
- 六本木安全安心憲章推奨事業所(認証番号0014)|港区
- 数字で見る港区|港区
- 令和3年経済センサス‐活動調査 港区 町丁目別事業所数及び従業者数|港区
- 事業所数・従業者数|港区
- 区内にある米軍基地等の要請行動|港区
- 港区史 通史編 現代(上)|デジタル版 港区のあゆみ
- 美術館のご紹介|国立新美術館
- 歴史と開発|東京ミッドタウン
- 会社概要|東京ミッドタウンマネジメント株式会社
- 六本木ヒルズ|プロジェクト|森ビル
- 六本木ヒルズ開業から20年|森ビル ニュースリリース
- 六本木駅/H04|東京メトロ

